希少図録本 徳川美術館の名刀 フルカラー写真集 写真解説
公益財団法人徳川黎明会編 発行
2018年
約21x15x0.5cm
64ページ
フルカラー
徳川美術館に所蔵される国宝・重要文化財・重要美術品・名物など
名刀52点の全体の姿・切先・茎の銘部分、拵のフルカラー写真、
作者名、見どころ、由緒伝来などの解説を付して紹介した、小さいながらも内容充実の図録本。
【凡例】より
一、掲載作品は全て徳川美術館の所蔵品である。
一、掲載順は太刀・刀・脇指・短刀の並びの中で、いわゆる五箇伝(山城国・備前国・相模国・大和国・美濃国)を考慮して定めた。
一、各作品の時代・世紀は推定を含む。
一、寸法の単位はセンチメートルである。
一、解説中に表記した人物名は、各解説中の文意にかかわらず、一般的な名称に統一した。
一、写真は基本的に佩表を掲載したが、作行が優れている場合には佩裏を掲載した。
【徳川美術館の刀剣コレクション】より
徳川美術館は、江戸時代に御三家筆頭であった尾張徳川家に伝来した大名道具を収蔵している。刀剣のコレクションも、そのほとんどが尾張徳川家の伝来品で、質・批ともに日本一を誇る。刀剣約五百振、長刀・鎗・小刀も含めるとおよそ千振で構成され、このうち十振が国宝、十九振が取要文化財、二十三振が重要美術品に指定されている。長い歴史の中で高い評価を得てきた名物刀剣も二十三振伝わっており、この中には室町将軍や戦国時代の名将たちの愛刀など、由緒ある刀剣が数多く含まれている。また、徳川美術館では刀剣の研ぎを行っていないため、これらの刀剣は江戸時代の研ぎのまま、重厚な輝きが保たれている。
尾張徳川家の刀剣コレクションの中核をなすのが、家康の遺産として九男義直(尾張徳川家初代)に譲られた「駿府御分物」と呼ばれる品々である。その分与目録「駿府御分物御道具帳」(徳川美術館蔵)には四百六振が記され、一振ずつに刀匠名・刀剣の形態・等級が記され、上級の品には献上者名・評価額・拵の有無や拵の金具の材質・文様までもが詳細に記されている。また「駿府御分物御道具帳」には収録されていない刀剣であっても、「駿府御分物刀剣元帳」(茨城・徳川ミュージアム蔵)に記載が見られることで、家康所持の由締が裏付けられる品もある。現在の徳川美術館刀剣コレクションの内、尾張徳川家に伝えられた家康所持の由緒が残る刀剣は、太刀八振・刀十振・脇指二振・短刀十一振の計三十一振が確認されている。さらに二代光友以降の歴代当主たちも、「駿府御分物」の名刀を継承し所持する一方で、贈答用に数多くの名刀を収集していたことが、徳川美術館に伝わる御譲道具帳や出入帳・改帳などによって明らかとなる。多数の刀剣とともに保管されているこれらの史料が、一振一振の由緒や来歴を現代に伝えている。
こうした質の高いコレクションが生まれた理由は、刀剣が武士の備える戦の道具であったことに加え、古くから贈答品としての役割を担っていたことにある。室町時代には主従関係を証する贈答品の筆頭として、重視されるようになった。室町時代の武家故実が引き継がれた江戸時代においても、刀剣はますます儀礼に欠かせない品となり、諸大名は格式を示すために競って名刀を所有した。すなわち、徳川美術館の刀剣コレクションの質・量の高さは、ひとえに尾張徳川家の格式と権威を表しているといえよう。
【目録】
指定 作品名称 時代 世紀
太刀
重要文化財 太刀 銘 国綱 鎌倉時代
国宝 太刀 銘 国行 鎌倉時代
重要文化財 太刀 銘 国行 鎌倉時代
重要美術品 太刀 銘 国俊名物鳥養国俊 鎌倉時代
国宝 太刀 銘 来孫太郎作(花押)正応五年壬辰八月十三日 鎌倉時代
重要文化財 太刀 銘 来国俊正和二二(四)年十月廿三日口口歳七十五 鎌倉時代
重要文化財 太刀 銘 来国光 鎌倉時代
国宝 太刀 銘 正恒 平安時代
重要文化財 太刀 銘 (菊紋)「菊一文字」 鎌倉時代
重要美術品 太刀 無銘 一文字 鎌倉時代
国宝 太刀 銘 国宗 鎌倉時代
国宝 太刀 銘 光忠 鎌倉時代
重要文化財 太刀 銘 光忠 鎌倉時代
太刀 銘 光忠守家造 鎌倉時代
国宝 太刀 銘 長光 名物 津田遠江長光 鎌倉時代
重要文化財 太刀 銘 備前国長船長光造 鎌倉時代
重要文化財 太刀 銘 備前国長船住守家 名物 兵庫守家 鎌倉時代
重要文化財 太刀 銘 備州長船住兼光 南北朝時代
太刀 銘 左 名物 大左文字 南北朝時代
小 太刀 銘 源左衛門尉信国 応永廿一年二月日 名物 松浦信国 室町時代
刀
重要文化財 刀 無銘 助真 鎌倉時代
重要文化財 刀 無銘 一文字 名物 南泉一文字 鎌倉時代
重要文化財 刀 銘 本作長義天正十八年庚 五月三日二九州日向住国広 銘 打天正十四年七 南北朝時代
月廿一日小田原参府之時従屋形様被下流也 長尾新五郎平朝臣顕長所持
重要文化財 刀 金象嵌 銘 正宗磨上 本阿弥(花押)名物 池田正宗 鎌倉時代
重要文化財 刀 無銘 正宗 鎌倉時代
刀 銘 正宗「鳥居正宗」 南北朝時代
重要文化財 刀 折返銘 備中国住次直 南北朝時代
重要文化財 刀 無銘 郷義弘 名物 五月雨郷
刀 銘 左文字吉見正頼研上之永禄九年八月吉日 名物 吉見左文字
刀 銘 村正
皿要美術品 刀 銘 以南蛮鉄於武州江戸越前康継 慶長十九年八月吉日
重要美術品 刀 銘 相模守政常入道
脇指 脇差
脇指 銘 吉光 名物 鯰尾藤四郎
重要文化財 脇指 無銘 貞宗 名物 物吉貞宗
脇指 銘 虎徹興里作 寛文五年三月吉日
脇指 銘 伊藤肥後守秦光代 重胴二以其歯タウリ 柳生氏利延所持之
短刀
短刀 銘 宗近 名物 海老名小鍛冶
短刀 無銘 吉光 名物 無銘 藤四郎
国宝短刀 銘 吉光 名物 後藤藤四郎
重要美術品短刀 銘 吉光 名物 庖丁藤四郎
重要文化財短刀 銘 正宗 名物 不動正宗
重要文化財短刀 無銘 正宗 名物 一庵正宗
短刀 無銘 正宗 名物 若江十河正宗
国宝短刀 無銘 正宗 名物 庖丁正宗
短刀 銘 相州住正宗 嘉暦三年八月日 名物 大坂長銘正宗
短刀 無銘 貞宗 名物 奈良屋貞宗
短刀 無銘 貞宗 名物 上野貞宗
短刀 無銘 保昌
短刀 無銘 志津 名物 戸川志津
短刀 無銘 則重
長刀
国宝長 刀 無銘
国宝長 刀 銘 下坂出雲守貞重
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