昭和48年(1973)に、芸艸堂から出版された奈良本辰也・伊藤ていじ・原田伴彦
・北小路腱編の『城下町の旅』(初版・定価1500円)である。
帯には「城下町の文華と意義の再発見。斎藤道三・織田信長が活躍した戦国の末期
に形成された城下町の形態と城下町を中心にはぐくまれた学問芸術、そして、その中
に住む人々のうるおいを思い、近代が惜しげもなく破壊したものへの愛着とその城下町
本来の意義を探り出そうとする」と、綴られている。
【本書執筆陣】
●奈良本辰也(1913~2001)
戦前の京都帝国大学卒の歴史学者である。立命館大学教授、部落問題研究所
所長、京都イングリッシュセンター学院長などを歴任した。特に郷里でもある長州
藩に関係した幕末史への 造詣が深い。
●伊藤ていじ(1922~2010)
日本の建築史家、工学博士、建築評論家。作家。日本の民家研究を行った人物。
ワシントン大学客員教授、工学院大、学長及び理事長、文化財保護審議会委員、
文化財建造物保存技術協会理事長などを歴任した。
●原田伴彦(1917~1983)
原田伴彦は、日本史学者、大阪市立大学名誉教授である。
●北小路腱(1937~)
国文学者、古文書学者。本名は渡部栄である。福島県会津若松市生まれ、戦前
の東京文理科大学国文科卒、能勢朝次に師事し「源氏物語」研究を志した。父の
遺品の中から、従一位麗子本源氏物語を発見しこれを論文にしたという。
武人の居城を取り巻く形で,戦国以降に発達した町を城下町という。戦国までは
は、乱世を乗り切るたぬに、要害堅固な山城が少なくなかった。ところが、天下泰平
の世には、藩庁を兼ねた城を中心に、領内産業や文化を集約した町づくりが主流と
なった。通常〝城下〟と総称され、天下六十余州の三百諸侯が、それぞれの持ち味
を出した町づくりが行われた。
本書は、よくある歴史探訪や紀行文集ではない。歴史は一つの軸となっているが、
執筆者独自の専門の視点で追想されている。例えば、民の生活が息づく民家研究に
長けた建築家の視点、「源氏物語」に精通した国文学者ならでは文化芸術の視点な
どさまざまだ。どれも城を取り巻く人物誌としてすぐれている。
【目次】
・巻頭付録・四折地図「日本の城下町」
・巻頭モノクロ写真(全8頁)
・はしがき 奈良本辰也
●「 豊 後 竹 田 」 奈良本辰也
●「 萩 」 奈良本辰也
●「 高 知 」 伊藤ていじ
●「 篠 山 」 伊藤ていじ
●「 金 沢 」 原田伴彦
●「 松 本 」 原田伴彦
●「 米 沢 」 北小路腱
●「 会 津 若 松 」 北小路腱
本の状態は、函に保護されていたので、本体は保存状態のよい
帯付の古書「上」レベルである。ただし、函は背ヤケや経年の感が
見られる。あまりに神経質な方は御遠慮して下さい。送料はレター
パックプラス520円です。。