
岡本太郎 MY ART, MY YOUTH TARO OKAMOTO芸術と青春 爆発せよ!岡本太郎 生誕100年光文社知恵の森文庫TARO
(2026年 2月 14日 10時 56分 追加)はじめに/岡本敏子・
色気と噴気
1 青春回想
Ⅱ 父母を憶う
はたち前後
独り旅
おおパリ・
巴里祭
青春の森
妖獣
パリの五月に・
可愛い猫
パリジェンヌ・ポーレット…
ソルボンヌの学生生活
落雀の暑さ
生活の信条
銃と私
母、かの子の想い出
ヨーロッパのかの子
白い手
私の好きな母の歌
かの子文学の鍵
新風流
父の死
Ⅲ女のモラル・
性のモラル
処女無用論
日本の女性は世界最高か?
服装直言…………
モードを作る女
帽子について
非道徳のすすめ
春画と落がき
独身と道徳について
女性に興ざめするとき
解説/みうらじゅん
色気と喰気
復してくれる。 朝食はどこでも一般に簡単だが、しかし最もデリケートだと思う。健康な一日を開く新鮮な喜びであるし、二日酔のときなど、気の利いた朝は頼りない胃袋に力を回
それにしても、私は随分いろいろな朝食を経験した。私が暮した土地土地でのヴァリエーションも豊かである。フランス、イギリス、オランダ、スイス、イタリア等、 ほとんど同様の料理を食べている国々でも、朝食のようすだけは全く買っていた。 パリに着いて初めて、クロデッサンという年月影のパンに、キャフェ・オー・レー ( ミルク入りのコーヒー)の簡単なフレンス式の朝食をとったとき、それが素晴らし
ところがオランダに施行して驚いたのは、朝食の豪華なことであった。ベーコン、ハム、各種のジャム、パタ、果物、それに名物の赤カブのようなオランダチーズなど、食卓にずらりと並んで実に仕観である。とても喰いきれそうもないと思いなが
6、前構平らげてしまった。
スイスの朝食。ほぼ同様だが、なおこの上に蜂蜜が豊かに添えられている。この極福な違に方が。どういう理由によるのか知らない。だが、いずれにしても、日本に帰って以来、一番なつかしまれるのは、不思議に、あの単純なフランスの朝食である。 そこに織り込まれた様々の思い出の故であろう。
芸術家にとって、パリは夜の世界だ。夜の雰囲気を愛する彼らの多くは、一晩中り、かつ乗る。遊び疲れて、朝、寝に帰る前、温いキャフェ・オー・レーにクロアッサンを浸しながら喰べるのである。ノクタンピュル(夜明し人種)には、フランス式
朝食はもってこいというわけだ。
私も随分、就寝前の朝食を愛したものだ。しかし、その中には、全く味気なく情なかった夜明けの思い出も弱っている。
カジノで、バカラ(賭博の一種)に夢中になっていた時分のことである。宵のうち、 ひどくついていた。べら棒に儲けて有頂天になっていただけ、敗けだすと躍起になる。 けたりすったり、結局すってんてんになり。かなり義理の悪い金まで根こそぎきらわれてしまった。気がついた時にはすでにじらじらとした朝の光が窓からさし込んで
いる。さすがに気を抜かれて外に出た。
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陽光を浴びたすがすがしい街路樹を、疲れた眼にぼんやり映しながら歩いていた。