題名爆速経営 新生ヤフーの500日
著者蛯谷敏
出版社日経BP社
定価1500円
高収益だがつまらない会社ーー。そんなヤフーを変えた若き経営陣の改革の軌跡。
201X年までに営業利益2倍。その目標に「高速」を超えた「爆速」で挑む。
■5000人の成熟企業が1年で変貌を遂げた
「お前が社長になったら、ヤフーをどうしたい?」。それは、あまりにも唐突な打診だった。
2012年1月、当時執行役員だった宮坂学はソフトバンク社長の孫正義に呼ばれ、ヤフー社長就任の打診を
受ける。
「今のヤフーは守りに入り過ぎている。若い世代で再び攻めの姿勢を取り戻してほしい」
孫が当時の社長、井上雅博と話し合った末の提案だった。
逡巡した宮坂だったが、最終的には要請を受け入れる。
そして、すぐに改革の仲間集めに走り出した――。
それから1年。新体制として初めて迎えた2013年3月期決算は、6年ぶりの2ケタ増益を記録。サービス開始以来
続く増収増益記録を16に伸ばした。時価総額は約3兆円(10月9日時点)と、宮坂のCEO就任時に比べて約2倍に増加。
ポータルサイト「!JAPAN」の月間総ページビュー(PV)は536億と、国内トップを快走している。
2013年10月には、ショッピング事業で出血覚悟の「無料化」施策をぶち上げ、楽天やアマゾンが先行する電子商取引(EC)
市場に殴りこみをかけた。
スピードを超える「爆速」を掲げて突っ走る平均年齡41歳(発足時)の新経営陣は、ヤフーに完全に攻めの姿勢を
取り戻したと言っていい。
本書は、日経ビジネスの記者が2012年4月から約1年半にわたって取材を続けてきた、
新生ヤフーの改革を追った記録である。
なぜ宮坂がヤフーの改革を任されるようになったのか。
その理由については、ぜひ本書を読み進めていただきたい。
恐らく、ヤフーが直面した問題は企業組織が規模を拡大させていくうえで常に内在し得る構造問題である。
そして、それにどう向き合い、どう回避しようとしているかという過程を辿っていく作業は、
同様の問題に悩む企業に多くの示唆を与えるだろう。
■組織の指導者に向けた、生きたケーススタディ
本書は組織を活性化したいと考えているリーダーに向けた、生きたケーススタディとも言える。
ある日唐突に、「明日から、社長をやってほしい」と指名を受けたら、あなたならどうするだろうか。
この問いがあまりにも非現実的なら、「社長」を「課長」「マネージャー」「リーダー」に置き換えてもいい。
おそらく、宮坂氏が社長指名を受けた状況も、これに近いものだった。
組織を変えるということは、つまるところ、人の向上心をどう引き出すかにある。
熾烈な競争に勝ち抜くためには、綿密な事業戦略や卓抜なサービスはもちろん必要だ。
だが、それらを担い、生み出していくのは社員に他ならない。
であるならば、社員が生き生きと活躍できる環境を用意し、思う存分力を発揮してもらうことが
経営者として一番重要な役割ではないか――。宮坂の言葉は、変革を志向する多くのリーダーに響くはずだ。
■組織を変えるワンフレーズ
本書に登場する、数々の改革のキーワード
「脱皮できない蛇は死ぬ」
「10倍挑戦して、5倍失敗して、2倍成功する」
「大切なのは、誰をバスに乗せるか」
「経営は軍議長くすべからず」
「経営者が自分の判断に迷うのは、目標が明確ではないからだ」
「まず、登るべき山を決める」
「改革とは、組織の中で浮くこと」
「組織は原理原則で動かす」
「見られるからこそ社員は輝く」
「アサインよりもチョイスを増やす」
「イノベーションには会議より会話」
201X年までに営業利益2倍―。その目標に「高速」を超えた「爆速」で挑む。社長打診は突然だった。一瞬ひるんだ宮坂だったが、巨大組織の舵取りの決意を決めた。高収益だがつまらない会社―。そんなヤフーを変えた若き経営陣の改革の軌跡。」
表紙、中身ともに目立った傷のない美品です。