筧本生（1951年福岡県生まれ）は、東京造形大学卒業後に渡仏し、長年パリに暮らしながらもエトランゼとして市井の人々を描き続ける洋画家。ふくよかな人物像は彫刻的であり、一見ボテロを思わせつつも独自の個性を放つ。ル・サロン展（1975～78年）やサロン・ドートンヌ（1982年）に出品し、1980年にはユーゴスラビア・デッサン・ビエンナーレに招待出品。安井賞佳作賞（1988年）や昭和会賞優秀賞（1990年）を受賞。蔵丘洞画廊や日動画廊での個展を中心に、アート台北、アートシンガポール、KIAFなどの海外アートフェアでも活動。無所属。信条は「自分が納得するまで筆を置かない」。内なる20世紀のパリを熟成させた作品を描くことを展望とする。

筧本生「カフェ ルイ フィリップの客」油彩 50号 大作 日動画廊取扱作品
本作《カフェ ルイ フィリップの客》は、パリの老舗カフェ「Cafe Louis Philippe」を舞台に、洋画家・筧本生が長年描き続けてきた“市井のパリ”を温かい眼差しで捉えた大作です。淡いミントグリーンの外壁や、柔らかい光を受けるオーニングが、20世紀のパリを思わせる静かな空気を醸し出し、画面全体に穏やかな時間の流れが感じられます。店先には、ふくよかな体躯が特徴的な男女、ワインを運ぶ給仕が描かれ、さらに屋根の上の猫や、椅子にちょこんと座る小さな犬など、パリの街で出会う日常のユーモアがさりげなく添えられています。人物はいずれも実在のモデルではなく、筧本がパリで見つめ続けてきた“庶民の象徴”として造形された存在です。丸みを帯びた彫刻的な造形と、どこか愛嬌のある表情には、作家独自の温かい感性が宿っています。

筧本生（1951年福岡県生まれ）は東京造形大学卒業後に渡仏し、長年パリに暮らしながら、ル・サロン展やサロン・ドートンヌへの出品、ユーゴスラビア・デッサン・ビエンナーレ招待、安井賞佳作賞、昭和会賞優秀賞など、国内外で高い評価を得てきました。異邦人としてパリを見つめる視点と、そこに寄せる親しみが彼の作品には共存しており、「自分が納得するまで筆を置かない」という信条が、丹念な筆致となって画面に表れています。50号という大きなキャンバスいっぱいに広がる本作には、まるで舞台の一幕を切り取ったかのような物語性があります。柔らかな光と落ち着いた色調が、作家が胸の内に育んできた“内なる20世紀のパリ”を思わせ、静かな郷愁と豊かな人間味が漂っています。筧本生の成熟した世界観をよく示す、魅力あふれる一枚です。