驚異的な成功を収めたデビュー作に続く2作目が取りたてて話題にならなかったせいで、ケリス自身もこの3作目もほとんど期待されていなかった。だが、デビュー作『Kaleidoscope』収録の「Caught Out There」で「あんたなんかだいっ嫌い!」というフレーズをラジオに吹き荒れさせたケリスが、大人になった女の子を校庭であざける「Milkshake」を引っ下げて戻ってきた。
音を最小限に絞りこむネプチューンズのプロダクション・ワークはファースト・シングルにはっきり表れているが、本作はそれだけにとどまらない。アンドレ3000(「Millionaire」はアウトキャストのフロントマンがファルセットで歌ういいお手本だ)、ナズ(騒々しい「In Public」)、ラップ・ロックのトラック(「Keep It Down」)から、1980年代初期のR&B(「Protect My Heart」「Glow」)のたまらなく魅力的な現代版まで、本作は将来性を感じさせるトラックをたっぷり聴かせてくれる。以前の作品のいくつかと比べると遊び心がやや薄れているが、つり上がった眉毛と気の利いたユーモアを、セクシーな気分にさせるサウンドの21世紀ヴァージョンの基本型に加えている。