作品収蔵：愛知県美術館

栗原喜依子（1935-2009）は、茨城県出身の洋画家であり、その生涯を通じて独自の画風を追求した女性アーティストです。女子美術大学洋画科を卒業後、1961年には二科展に出品した『リズム』が「朝日ジャーナル」の表紙に採用されるなど、早くから注目を集めました。

栗原喜依子「横たわる裸婦」油彩 20号
本作品「横たわる裸婦」は、繊細な描写と大胆な色彩構成が調和した美しい作品です。女性が純白の布の上に横たわり、背景の深い黒と鮮烈な赤が静謐な美しさを際立たせています。女性の透明感のある肌や穏やかな表情は、栗原が追求した優雅さと内面的な深さを象徴しています。20号という大型サイズで描かれており、圧倒的な存在感と迫力を放ちます。栗原特有の繊細な筆致が、女性の柔らかな曲線や布の質感を見事に表現し、古典絵画技法の影響と現代的な感覚が融合した唯一無二のスタイルを感じさせます。

栗原喜依子は、女子美術大学洋画科を卒業後、二科展やルサロンでの受賞を経て日本とフランスでの絵画研究を重ねました。当初は抽象画に取り組んでいましたが、フランス滞在中に具象画へと転じ、1970年代から女性像を主なモチーフとしました。その背景には、印象派以前の古典的技法を深く学んだ経験があり、この作品にもその影響が色濃く表れています。本作品は、女性の内面に潜む静けさと美しさを見事に表現した、栗原の卓越した技術と芸術観が凝縮された一作です。画伯の麗しい裸婦像の名画です。