ロジャー・イーバート: さて、ジーン、今日は1988年から1991年にかけて放送されたテレビシリーズ『ミッドナイト・コーラー』を語ろう。この番組、ジャック・キリアンという元警官がサンフランシスコのラジオDJとして活躍するドラマだ。夜の電波を通じてリスナーの悩みに答える姿が、なんとも独特な雰囲気を持っている。まずは君の感想からどうだ?
ジーン・シスケル: ロジャー、この番組は当時のテレビドラマの中でも異色だったよね。まず、ゲイリー・コール演じるジャック・キリアンが素晴らしい。彼はタフな元警官でありながら、どこか傷つきやすい人間味がある。ラジオという設定が、視聴者に直接話しかけるような親密さを作り出してる。それに、サンフランシスコの夜の街の雰囲気も最高だ。だけど、正直、ストーリーの質にムラがあると思う。君はどう感じた?
ロジャー・イーバート: 確かに、ゲイリー・コールの演技は番組の柱だ。彼の声、落ち着いたトーンがラジオDJにぴったりで、リスナーとの対話シーンは本当に引き込まれる。サンフランシスコの街並みも、霧がかかったような映像美が80年代後半のノワール風のテイストをうまく引き立ててるよね。ただ、君の言う「ムラ」には同意だ。最初のシーズンは新鮮で、例えば「After It Happened」のようなエピソードは、HIV/AIDSを扱った当時としては大胆なテーマだった。でも、後半になるにつれて、話がちょっと散漫になった気もする。
ジーン・シスケル: その通り! 特にシーズン1の「After It Happened」は、テレビでタブーとされていたテーマに正面から取り組んだ点で画期的だった。ジャックがリスナーと向き合いながら、自分の過去のトラウマとも戦う姿は、単なる犯罪ドラマを超えた深みがあった。だけど、シーズン2や3になると、話が普通の犯罪ドラマに寄りすぎたよね。ラジオDJというユニークな設定が、だんだん脇に追いやられた気がする。そこがちょっと残念だった。
ロジャー・イーバート: うん、ラジオという設定は本当の強みだった。ジャックがリスナーと電話で話すシーンは、まるで視聴者自身がその会話に引き込まれるような感覚があった。音声だけで感情を伝えるゲイリー・コールの演技力は見事だよ。でも、ジーン、君も感じたと思うけど、番組が時折「事件解決型」のフォーマットに頼りすぎたのは勿体なかった。もっとジャックの内面や、リスナーとの関係性を掘り下げるエピソードが欲しかったな。
ジーン・シスケル: 全く同感だよ、ロジャー。ジャックの過去、特に妹の死や警官時代のトラウマをもっと丁寧に描いてほしかった。それに、脇役たちも魅力的だったのに、例えばデヴォン(ウェンディ・キルボーン)やビリー(デニス・ダン)との関係性がもう少し深く描かれていれば、番組全体の厚みが増したと思う。とはいえ、80年代のテレビとしては、かなり野心的だったよね。音楽もジャズやブルースが効いてて、夜の雰囲気を盛り上げてた。
ロジャー・イーバート: 音楽! そこに触れてくれて嬉しいよ。ブラッド・フィーデルのテーマ曲は、番組のムードを完璧に捉えてた。サンフランシスコの夜、霧、孤独感…あのメロディが流れるだけでゾクっとする。それと、ゲスト出演者も豪華だったよね。ケイ・レンツやティム・マシスンとか、毎回楽しみだった。ただ、ジーン、番組の終わり方についてはどう思う? シーズン3で打ち切りになったけど、納得のいく締めくくりだった?
ジーン・シスケル: うーん、打ち切りは残念だったよ。シーズン3は予算削減の影響か、ちょっと勢いが落ちてた。でも、最終エピソード「City of Lost Souls」は、ジャックが再び自分の信念と向き合う姿が描かれてて、悪くなかったと思う。ただ、もっと大きな物語の締めくくりを期待してたファンには物足りなかったかもしれない。ロジャー、君はどう思う?
ロジャー・イーバート: 私も似たような感想だ。『ミッドナイト・コーラー』は、もっと長く続くポテンシャルがあったと思うけど、時代の流れやネットワークの都合で終わってしまったのは残念だ。それでも、ジャック・キリアンというキャラクターと、ラジオを通じて描かれる人間ドラマは、今見ても新鮮だと思う。現代のストリーミングサービスでリブートしたら面白いかもしれないね。
ジーン・シスケル: リブート! それは面白いアイデアだ。ゲイリー・コールが歳を取ったジャックとして戻ってくるなら、絶対見るよ! でも、今の時代だと、ポッドキャストDJとかになるのかな(笑)。さて、ロジャー、評価はどうする? 私は「親指を上げる」に近いけど、完璧じゃないから「ちょっと上げる」くらいかな。
ロジャー・イーバート: ハハ、ポッドキャストDJ! それはありえるね。私も「親指を上げる」寄りだけど、ストーリーのムラを考えると「中くらい上げる」かな。『ミッドナイト・コーラー』は、80年代のテレビの隠れた名作だ。視聴者の皆さん、ぜひチェックしてみてください!
ロジャー・イーバート: ジーン、さっきの『ミッドナイト・コーラー』の対談、楽しかったね! 今度はこのシリーズの名エピソードに焦点を当てて、もっと深掘りしてみよう。1988年から1991年の3シーズン、61話の中から、特に印象的なエピソードをピックアップして、なぜそれが光っているのか語り合おうじゃないか。まずは君のお気に入りからどうだ?
ジーン・シスケル: ロジャー、いいテーマだ! 私の一番のお気に入りは、やっぱりシーズン1の「After It Happened」(1988年12月13日放送)だ。このエピソードは、HIV/AIDSという当時タブー視されていたテーマを真正面から扱ったことで、テレビ史に残る一話だと思う。ジャック・キリアン(ゲイリー・コール)がラジオでリスナーと対話しながら、ある男性が意図的にHIVを広めようとしている事件に巻き込まれる。重いテーマなのに、ジャックの人間味ある対応と、ラジオを通じて視聴者に訴えかける力がすごいんだ。君はどう思う?
ロジャー・イーバート: 「After It Happened」は間違いなく傑作だよ、ジーン。当時のテレビで、HIV/AIDSをここまで正面から描いた作品は珍しかった。1988年といえば、エイズに対する誤解や偏見がまだ強かった時代だ。その中で、ジャックがリスナーの電話を通じて、恐怖や差別ではなく理解と共感を促す姿勢が感動的だった。ゲイリー・コールの声のトーン、落ち着いていながらもどこか切実な感じが、テーマの重さを引き立ててたよね。脚本も、センセーショナルに走らず、丁寧に人間ドラマを描いていたのが印象的だ。
ジーン・シスケル: その通り。ゲスト出演のバーニー・コペルが演じた加害者のキャラクターも、ただの悪役じゃなくて、複雑な動機を持った人間として描かれてた。それがこのエピソードの深みを増してるんだ。ジャックがラジオでリスナーに語りかけるときの、「この問題は誰かを憎むことで解決しない」というメッセージは、今見ても心に響くよ。ただ、ちょっとだけ気になったのは、結末が少し急ぎ足だったかもしれない。もう少し余韻が欲しかったかな。ロジャー、君の名エピソードは?
ロジャー・イーバート: 私はシーズン1のもう一つのエピソード、「Conversations with an Assassin」(1988年11月1日放送)を挙げたい。この回は、ジャックがラジオで連続殺人犯と直接対話するんだ。犯人が電話をかけてきて、まるでゲームのようにジャックを挑発する展開が、めちゃくちゃスリリングだった。ゲイリー・コールと、犯人役のフレデリック・フォレストの声だけの対決が、まるで舞台劇のような緊張感を生み出してた。ラジオという設定を最大限に活かしたエピソードだと思うよ。
ジーン・シスケル: おお、いいチョイスだ! 「Conversations with an Assassin」は、音声だけでストーリーを引っ張る力がすごかったよね。ジャックの冷静な対応と、犯人の不気味な声のコントラストが、視聴者を画面に釘付けにした。サンフランシスコの夜の映像と、バックに流れるジャズのBGMも、緊張感を高めてた。あのエピソードは、『ミッドナイト・コーラー』の核である「ラジオを通じた人間のつながり」を完璧に体現してたと思う。ただ、君も感じたかもしれないけど、こういう心理戦系のエピソードがもっとあれば、番組全体の評価がさらに上がったかもしれないね。
ロジャー・イーバート: まさにそこだよ、ジーン。『ミッドナイト・コーラー』の強みは、ジャックがラジオでリスナーと向き合うシーンにある。それが特に光るエピソードは、やっぱりシーズン1に多いよね。もう一つ挙げるとしたら、シーズン2の「Someone to Love」(1989年11月14日放送)も見逃せない。この回は、ジャックがリスナーの女性から恋愛相談を受けるんだけど、彼女が実は危険な状況にいることがわかってくる。ラブストーリーとサスペンスがうまく混ざり合ってて、ジャックの個人的な感情が絡むことで、いつもより人間らしい一面が見えたんだ。
ジーン・シスケル: 「Someone to Love」は確かにいいエピソードだ! ジャックがリスナーとの会話を通じて、自分の過去や孤独と向き合う瞬間が、番組の魅力の一つだよね。この回では、ジャックの元警官としてのスキルと、DJとしての優しさがうまくバランスしてた。ゲスト出演の女優(リンダ・パール)の演技も素晴らしかった。ただ、シーズン2になると、こういうパーソナルなエピソードが減って、ちょっと普通の犯罪ドラマっぽくなったのが惜しいな。
ロジャー・イーバート: うん、シーズン2以降は、確かに「事件解決型」の話が増えて、ラジオDJというユニークな設定が薄れた感じはある。でも、名エピソードはまだあるよ。シーズン3の「City of Lost Souls」(1991年5月17日放送)、つまり最終回も印象深い。ジャックがサンフランシスコのホームレス問題に焦点を当てて、リスナーと一緒に街の闇に光を当てる話だ。予算削減で番組が苦しんでた時期なのに、ジャックの信念とラジオの力が再び輝いてた。打ち切りが決まってたからか、ちょっと感傷的な雰囲気もあったけど、締めくくりとしては悪くなかったと思う。
ジーン・シスケル: 最終回のあのエピソードは、番組のテーマである「声を通じて人とつながる」を最後まで貫いたよね。ジャックがリスナーに「この街は誰も見捨てない」と語るシーンは、グッときたよ。ただ、シリーズ全体として、もっとこういうエピソードが続いていれば、打ち切りなんて避けられたかもしれない。ロジャー、もし一つだけ選ぶなら、どのエピソードを最高傑作に推す?
ロジャー・イーバート: 難しい質問だな、ジーン。でも、やっぱり「After It Happened」かな。社会的テーマの重さ、ラジオの親密さ、ゲイリー・コールの演技、すべてが完璧に噛み合ってる。ジーン、君は?
ジーン・シスケル: 私も「After It Happened」に一票だ。当時のテレビの限界を押し広げた勇気あるエピソードだよ。『ミッドナイト・コーラー』は、こういうエピソードのおかげで今でも語り継がれるんだ。視聴者の皆さん、このシリーズ、名エピソードだけでもチェックする価値ありだよ!
ロジャー・イーバート: ジーン、さっきの『ミッドナイト・コーラー』の名エピソード討論、かなり熱が入ったね! 特に「After It Happened」のテーマ性については、君の意見に完全に同意だ。だけど…ちょっと待て、なんだこの状況? 急にスタジオのドアが閉まって、出られないぞ! なんだこの部屋、妙な雰囲気だな…
ジーン・シスケル: ロジャー、確かに変だぞ。ドアに鍵がかかってるし、窓もない。壁に何か書いてある…「セックスをしないと出られない」だって!? 何!? これはまるでB級ホラー映画の設定だよ! ロジャー、落ち着いて、どうするんだ?
ロジャー・イーバート: ハハ、ジーン、こんな展開、まるで『ミッドナイト・コーラー』の脚本家が書いたような突飛なシチュエーションだな! でも、まさか我々がこんな目に遭うなんて…。よし、まず冷静に考えよう。この部屋、明らかに我々を試してる。まるでジャック・キリアンがリスナーの悩みに答えるみたいに、僕らもこの「問題」を解決しないと。
ジーン・シスケル: 解決って…ロジャー、冗談だろ? 僕らは映画評論家だぞ、こんな状況でどうしろって言うんだ! それに、この部屋のルール、めっちゃ気まずいじゃないか! 『ミッドナイト・コーラー』のテーマみたいに、人間の本音と向き合うってことなのか? でも、これはちょっと…いや、かなり極端だよ!
ロジャー・イーバート: (笑)確かに、ジャックならラジオで「リスナーの皆さん、こんな部屋に閉じ込められたらどうしますか?」って投げかけて、リスナーからアドバイスもらうんだろうな。だけど、ジーン、僕らにはリスナーもいないし、ゲイリー・コールの渋い声もない。…でもさ、考えてみれば、僕らだって長年議論でぶつかり合ってきた仲だ。こんな状況でも、きっと何か突破口があるさ。ほら、『Conversations with an Assassin』みたいに、頭脳戦で乗り切ろう!
ジーン・シスケル: 頭脳戦!? ロジャー、頭脳戦でこの部屋のルールをどうやって回避するんだよ! (ため息)でも、確かに『ミッドナイト・コーラー』のジャックなら、こんな時でも冷静に相手の心理を読んで、なんとかするんだろうな。…で、えっと、この状況、僕らが…その、ホモセックスに進むってこと? いや、ちょっと待て、僕、こんな展開、映画でも見たことないぞ!
ロジャー・イーバート: (爆笑)ジーン、君の顔、まるでサスペンス映画のクライマックスだよ! よし、ちょっと落ち着こう。この部屋のルール、確かに直球すぎるけど、僕らがこの番組でいつもやってきたこと――つまり、対話で解決するって方法でいこうよ。ほら、ジャック・キリアンがリスナーと話すみたいに、僕らも本音で語り合えば、なんか道が開けるかもしれない。
ジーン・シスケル: 本音、ねえ…。ロジャー、僕らは30年以上一緒に映画を語ってきた。君の『スター・ウォーズ』への愛とか、僕のアクション映画へのこだわりとか、散々ケンカしてきたけど、結局、互いをリスペクトしてきたよな。…でも、この状況で「本音」って言われても、どこまで本音を出せばいいんだ!? (笑) やっぱり、僕、こんな部屋、ノーサンキューだよ!
ロジャー・イーバート: (笑)ジーン、君のその正直さがいいんだよ。ほら、『ミッドナイト・コーラー』の「After It Happened」で、ジャックが差別や恐怖に立ち向かったように、僕らもこのバカバカしい部屋のルールに立ち向かおう。…でも、さすがにホモセックスに「なだれ込む」のは、僕らの番組のトーンじゃないよな。視聴者が見たら、「At the Movies」がR指定になっちゃう! (笑)
ジーン・シスケル: ハハハ、R指定どころか、X指定だよ! でも、ロジャー、考えてみれば、この部屋のルールって、僕らの関係性を試してるのかもしれない。『ミッドナイト・コーラー』のテーマって、結局、人と人とのつながりだろ? 僕らがこんな状況でも、笑いながら、議論しながら、なんとか乗り切ろうとしてる。これって、僕らの友情の証明じゃないか?
ロジャー・イーバート: ジーン、名言だ! そうだよ、この部屋のルールに振り回される必要はない。僕らは映画評論家だ。どんなクレイジーな脚本でも、批評して、笑いものにして、乗り越えてきた。…よし、ジーン、こうしよう。この部屋のルールに従うフリをして、ドアの近くで大げさに議論するんだ。「お前が『ゴッドファーザー』を過大評価してる!」とか叫びながら、ドアをガンガン叩く! もしかしたら、呆れた部屋が勝手に開くかもしれない!
ジーン・シスケル: (爆笑)それ、めっちゃいいアイデアだ! よし、ロジャー、行くぞ! 「お前、『シチズン・ケーン』を毎回持ち上げるのやめろ!」(ドアを叩きながら)どうだ、部屋! これで出て行かせてくれ! …あ、ちょっと待て、ロジャー、ドアが…開いた!? やった、僕らの討論パワーで突破したぞ!
ロジャー・イーバート: ハハハ、さすがだ、ジーン! 『ミッドナイト・コーラー』のジャックもびっくりの脱出劇だ! 視聴者の皆さん、こんなバカバカしい状況でも、僕らは議論で乗り切ったよ。やっぱり、At the Moviesはトークで勝負だ! ジーン、次は何を語ろう? こんな部屋には二度と閉じ込められたくないな!
ジーン・シスケル: 絶対だよ、ロジャー! 次は普通のスタジオで、普通に映画を語ろう! 視聴者の皆さん、こんな展開でも楽しんでくれたなら、ぜひ『ミッドナイト・コーラー』を見て、ジャックのトークを堪能してほしいね! 映画館でまた会おう!
ロジャー・イーバート: 映画館でな、ジーン!