奥龍之介（1923年 - 1986年）は、東京生まれの画家で、1945年に東京美術学校の油画科を中退しました、彼の画家としてのキャリアは、1953年に日展で初めて入選することから本格的に始まり、同年に光陽会の運営委員となり光陽会賞を受賞しました、奥龍之介は、1967年に第10回安井賞候補新人展、1972年に第15回安井賞展に出品しました、彼は特に写実主義を追求し、風景や人物に対する緻密で正確な描写力と、ある種のロマンティシズムを組み合わせた作品で知られています、音楽好きも反映され、しばしば楽器を持つ少女などを題材にした作品を描いています、1986年に63歳で亡くなるまで、日本画壇において重要な役割を果たしました

奥龍之介「蕾」油彩 8号 1981年作 一枚の絵取扱作品 共シール 晩年作
本作《蕾》は、東京生まれの写実画家・奥龍之介（1923-1986）の晩年にあたる1981年に描かれた油彩作品です。画面中央には、淡い光を受けてやさしく輝く一人の少女が描かれ、その表情は整っていて非常に麗しく、穏やかな気品を湛えています。少女の髪には小さな花が編み込まれ、手には薔薇の蕾を大切に持ち、まるで自然と一体化しているかのような幻想的な佇まいを見せています。

背景にはやわらかな緑が広がり、周囲を囲むように咲く淡い薔薇の花々とともに、画面全体に静謐な詩情が漂います。奥龍之介が生涯を通じて追求した写実とロマンティシズムの融合が、この一枚において静かに、しかし確かな説得力をもって表現されています。少女の目線は遠くを見つめ、そこには希望、内省、あるいは新たな生命の気配が宿っているかのようです。薔薇の蕾という題材もまた、成長と純粋さの象徴として選ばれたものでしょう。逝去のわずか5年前に描かれたこの作品は、奥が長年培ってきた卓越した描写力と深い精神性が結実した、まさに画業の到達点ともいえる一作です。