ボクサーエンジン
1966年に3リットルエンジン規定が導入されてからフェラーリは60度V型12気筒エンジンを使用していたが、
4シーズンに渡りタイトルから見放されていた。この間に登場したフォード・コスワース
・DFVエンジンに対抗すべく、
マウロ・フォルギエリら技術者は新たに180度V型12気筒エンジンを開発した。
ボクサーエンジンと通称されているが、このエンジンの向かい合う2つの気筒が1つの
クランクピンを共有し
ピストンが同時に同じ方向に動くという構造はV型エンジンのバンク角を180度にしたものと見ることができ、
このエンジンの表現として「ボクサーエンジン」「水平対向12気筒」はあまり正確ではなく、正確に表現しようとするなら
180度V型12気筒ということになる。
12気筒エンジンではクランクピンの間に1個ずつ軸受け(ベアリング)を置く7ベアリングが一般的だが、
摩擦抵抗を減らすためベアリングをクランクピン2個毎に減らし、中間のベアリングを廃止した4ベアリング
(中央2つがプレーン、両端がローラー)とした。テストでは振動の問題が発生したため、クランクシャフトとフライホイールの間に
ラバーダンパーを追加した。
312に搭載されていた60度V12エンジンよりもバンク角を広げたことで重心が低下し、車両の運動性能が向上した。
また横幅をコンパクトに抑え、若干の重量減も果たした。ボクサーユニットは横置き
トランスミッションを採用した
312Tシリーズにも搭載され、1970年代後半に4度のコンストラクターズタイトルと3度のドライバーズタイトルを獲得する名基となった。
F1以外ではスポーツプロトタイプの312PB (1971年-1973年) にも、耐久レース用に回転数と出力を落としたバージョンが搭載された。
量販スポーツカーでも365GT4BB(1973年)からF512M(1994年)までボクサー路線が継承された。
シャシー
ボディは平たくなったものの、フロントにラジエーターを置く葉巻型である。シャシーは鋼管フレームにアルミパネルをリベット留めする、
モノコック後端上部から水平に2本の支持アームを伸ばし、ボクサーエンジンを吊り下げる格好にしているのが特徴だった。
ロールバー上部からエンジンに向けて斜めにステーを伸ばし、そのステーにリアウィングを装備していた。