森田曠平（1916年京都生まれ～1994年没）は、日本美術院同人として活躍した日本画家で、歴史画や女性像に独自の画境を示したことで知られます。小林柯白や安田靫彦に師事し、戦後は多摩美術大学で助教授を務めました。院展では「波止場」「磯」「大原女」「流人島にて」などで奨励賞を重ね、「洛北仲秋」「桜川」で日本美術院賞（大観賞）、「京へ」で内閣総理大臣賞、「花鎮め」で文部大臣賞を受賞するなど輝かしい実績を誇ります。歴史的題材や南蛮風俗、女性像を題材に、写実と幻想を融合させた気品ある作風が特徴です。

森田曠平「紅梅少女」日本画 6号 金箔 金泥 共シール
日本画家、森田曠平（1916-1994）の「紅梅少女」は、師である安田靫彦の系譜を汲み、写実性と幻想的な装飾美を融合させた独自の画境を示す、彼の代表的な女性像の一つです。日本美術院同人として歴史画や美人画を通じて日本の伝統美を追求した森田の筆致は、画面を覆う金箔（または金泥）の背景によって格調高い輝きを放ち、黒い着物と華麗な花文様が施された頭巾を纏った少女の姿を際立たせています。

タイトルが示すように、少女が静かに手にする紅梅の枝は、早春の厳しい季節を耐え忍び、ひっそりと開花する清純な美しさと、成長途上の少女の強い生命力と気品を象徴しています。黒と紅、金が織りなす色彩の対比は鮮烈であり、繊細な手の動きや遠くを見つめる静謐な眼差しは、少女の持つ内面の強さと優美さを表現しています。本作品は、森田曠平が追求した格調の高さと洗練された美意識が凝縮された、観る者に深い余韻を残す傑作と言えるでしょう。