
沼尻鉄道ガソ101ベースキット
画像1枚目は完成イメージ画像となります。
発売初年:1975年
(広告:TMS326号['75年8月号]発売予告初出、329号['75年11月号]初出/330号['75年12月号]製品紹介掲載)
沼尻ガソ101は、わが国のナローゲージモデルの世界ではかねてより人気の高い車種である。
模型製品としてはO・HO・Nの各スケールで延べ6社からリリース(※註)され、その一方でペーパーやプラ板による手軽な自作の題材としてこれを選ぶファンも少なくない。
プロトタイプは1929年雨宮製作所製で、沼尻鉄道としては唯一の自社発注気動車。運転のさいには進行方向に合わせて方向転換が必要ないわゆる『単端式』として多くのファンに認識されるも、じつは製造当初は逆転機を備える両運車だったという異端児。1950年にエンジン換装と伝導系の改造を施されたことで、ようやく真の単端式になったというエピソードをもつ。晩年は予備車扱いで活躍の機会は限られたものの鉄道廃止時まで在籍し、結果的に“最後の現役単端”としても名を知られることになる。
一度聞いたら忘れられない“ガソ”という形式名のインパクト。いかにも作りやすそうな直線的なデザインながら、正面のヒサシや車体のリベットのおかげで適度にメリハリのある外観。さらに1輛だけでも遊べるという入門にうってつけな点などが広く愛されている理由であろうか。
だが、その人気が形づくられて行くうえで、HOナローの黎明期に動力車としては最も安価な価格帯で提供され、キット自体も比較的組みやすかった珊瑚の製品の存在が大いに貢献しているのは間違いないだろう。
珊瑚ではDC12やシボフ・ボハフと同様1/80のエッチング板が先行しているが、HOn2-1/2版の沼尻シリーズにおいてはDC12に次ぐ動力車として発売された。
製品全体のディメンションは、屋根と幕板が薄く、窓も大きいうえやや腰高なことで、実車よりむしろ軽快なイメージに仕上がっている。
上回りはエッチング+プレス抜の外板が扉前方の窓1枚+妻板+扉後方の窓5枚分を一体曲げとしており、これを2個、窓枠の内板と組合わせて車体を形づくる。屋根、妻板庇、端梁がプレス、ヘッドライトとベンチレーターは挽物、ラジエターグリルはエッチング+プレス、ラジエター横の箱(説明書では『工具箱』と誤記されている)がホワイトメタル。
後妻に貼る荷台はエッチング抜きだが、当時としてはひじょうに繊細な抜き上がりであった。
足回りはマブチのキャラメル型モーターをDC12と同様のホルダーで床板に縦置き固定、ウォームを前輪に掛けアイドラー3枚を介して後輪にも連動する。
ギアフレームの構造はあまり他に類を見ないタイプ。U字状にプレスしたフレームが2個あって、各々の外側にはドロップ製の軸受をハンダ付、内側には連動ギアのシャフトを受ける孔が3ヶ所開いており、それでプレーン軸の動輪と連動ギアを挟み込むかたちで保持しつつ床板にネジ留めする。
なお、最初に発売されたキットでは軸受はフレームにハンダ付済であったが、1980年の再生産版ではバラになっていて自分で取り付けねばならなかった。
悪名高き?キャラメルモーター搭載ではあったが、同時期のHOナロー製品-ダックスやDC12、乗工社のPUシリーズほど動力の構造に気難しさがなかったせいか、走りは比較的安定している方だった。
(※註:HOナロー:珊瑚、津川洋行、ワールド工芸、モデルワーゲン/Oナロー:オレンジカンパニー/Nナロー:ペアーハンズ)