1945年長野県生まれ、第二次世界大戦後の激変する社会に反応し、現代的な欧米絵画の影響を受け、「窓」（1969年）に代表される初期作品を描く、1970年代には人物の内面や感情を描いた「衆生」連作が高い評価を得て、現在の「無明mumyo」に至るまで人間存在の探究をライフワークとして《人物画》の大作に挑み続けている、また1980年代からは樹木花、1990年代からは雄大な山にも取り組み、日本各地の樹齢を重ねた古木の桜や世界の名山を訪ねる旅を重ね、桜や山の《肖像画》として屏風絵の制作発表を続けて、今日、桜を描く画家として最も著名、そして華麗な花々と愛らしい玩具を組み合わせて描く《静物画》は、画家自身が最も楽しみながら紡ぎだす夢の世界といえる

中島千波「紅梅」日本画 12号 大作 1996年作 金泥 本金絹 共シール
中島千波による本作品は、本金絹を支持体に用いた日本画であり、伝統的な技法と現代的な感性が融合した華やかな作品です。本金絹の持つ柔らかな光沢が画面全体を包み込み、紅梅の鮮やかな赤を際立たせています。 枝には苔むした質感が細やかに描かれ、力強くしなやかに伸びる様子が、生命の息吹を感じさせます。満開の花々は繊細な筆致で描かれ、赤と白の織りなすグラデーションが華やかさと優美さを表現しています。背景の金色の輝きと相まって、作品全体がまるで光に包まれたかのような幻想的な雰囲気を醸し出しています。

紅梅は、日本の伝統文化において春の訪れを告げる象徴として古くから愛され、詩歌や絵画の題材としても多く取り上げられてきました。寒さの中でいち早く花開く紅梅は、厳しい冬を乗り越えた生命の強さと、これから訪れる新たな季節への希望を象徴しています。本作では、そうした紅梅の魅力が、中島千波の洗練された描写によって、より一層際立っています。

中島千波は「桜を描く画家」として知られていますが、この《紅梅》では、彼が持つ花の描写に対する深い洞察と、伝統と革新のバランス感覚が存分に発揮されています。本金絹の背景が光を受けて異なる表情を見せるこの作品は、時間や観る角度によっても印象が変わり、その奥深い美しさを存分に楽しむことができる一枚です。