ブラジルが世界に誇る鬼才エグベルト・ジスモンチが手塩にかけて育てた息子で、ギタリストのアレシャンドレ・ジスモンチ。幼少の頃より、当然の如く質の高い音楽に触れ、父の背中を見つつ早くからミュージシャンとして才覚を表す。特にギター・サウンドに傾倒し、ショーロ/インスト/ボサ・ノヴァ/MPBほかブラジル音楽全般はもちろん、ジャズ、クラシック、フラメンコなど多くのジャンルから奏法/フレージングを学び、プロとして活躍を開始。インスト系作品のサポートから、父ジスモンチとの共演、そして自らのパフォーマンスで、欧米諸国にも演奏活動の領域を広げる、まさに父譲りの逸材として世界から注目されている。そんな息子がリーダーとなってリリースするデビュー・アルバムが本作。アレシャンドレは、自身の表現力を高く発揮することのできるガット・ギターに終始し、ダブルベース、そしてパーカッションというトリオ編成で、その技量が最も問われるシンプルな編成で挑むブラジリアン・ジャズだ。タイトルは「日曜日のバイアォン」。父エグベルトが、これまで北東部サウンドを豊かにアレンジした名演を多く残したことに準えたテーマで、ルイス・ゴンザーガの「ASA BRANCA」、ドリヴァル・カイーミ作「O BEM DO MAR」「SAUDADE DA BAHIA」、シヴーカの「FEIRA DE MANGAIO」といったフォルクロリックな楽曲、そして作曲センスにも優れたオリジナルまでを、ストイックな弦さばきで表現する。世界各地のギター・サウンドを吸収しオリジナリティを発揮している中にも、音像の端々に父の若かりし姿を想起させる。ギター王国ブラジルを背負って立つカリスマ性がにじみ出た、入魂のインストゥルメンタルだ。