
「王宮の染織」特集の最後は、貴重な金更紗です。こちらもまた、今後、市場に出てくることは無い布でしょう。
これは昔、インドネシア ジャワ島中部 スラカルタ(ソロ)で入手した金更紗で、大きさは約239㎝×102㎝、20世紀前半の古布です。表側と裏側の両面から手描きされたジャワ更紗の表側のみに印金されています。先日出品したパトラの帯と一緒に入手しました。
この文様は、王侯に伝わるパトラ(7枚目画像参照)を模倣したもので、7枚目画像下の説明にありますように、パトラ写しの金更紗は、王家の代表的な儀礼用衣装で、この文様の金更紗は、まさに王宮に暮らす人に着用された布でした。情報が発達していない時代に、貴重なパトラ文様を忠実に写すことができたのは、ごく限られた王家お抱えの職人だけであったことでしょう。
一見単純な文様に見えますが、以下のような高い技術で製作されています。
まず、本物パトラやインド更紗のようなこの深い赤色は、何度も繰り返し染められたもので、現在ではもう出すことができません。
次に、びっしりと描き込まれたパトラ文様ですが、バティックは白い部分をロウで覆う技法で作られますので、チャンチンによる手描きで、赤地にこのような白い部分を残すには、かなり手間がかかります。5枚目画像のように横から見ると、赤色にも濃淡があるように、まるでストライプになっているように見えるので、不思議です。
最後に、この金更紗の素晴らしい所は、目に付く傷みや補修が無く、ほぼ完璧な状態である点です。他の品もそうですが王宮の染織は、傷みの激しいものがなく、その状態の良さから、実際の布の年代に比べて、若く見えるものが多いようです。しかし、どれをとっても現在では一般には出回っていない布で、時間をかけた良い仕事がなされています。また、先日のアラスアラサンのように傷みがあっても、目立たぬように上手に補修されており、使用人により大切に管理されてきたのだと思います。できればこの状態で持っていただきたいのですが、大きさがあり、生地にも力がありますので、他の用途にお使いいただけます。あと、経年による印金の剥離箇所が見られますので、古布であることを了解の上、ご入札をお願いいたします。
王宮の染織もこれでおしまいです。どれも良い時代に入手し保管していた布ですので、今ではもう出会えないでしょう。各布の希少さや評価に比べて抑えて出品していますので、大変リーズナブルかと思います。バティックのお好きな方に引き継いでいただけるよう願っています。
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