☆・ 一原有徳は、1910年徳島県生まれ、幼少時に小樽に移住してから長く小樽を拠点に活動を続けた版画家で、
国内のみならず海外でも高い評価を受けています。
また、版画家以外に登山家や俳人としても多くの足跡を残しています。
若い頃から美術に関心があった一原有徳ですが、当時は画材を購入する経済的余裕がなかったため制作活動はできず、
職場(小樽地方貯金局)の先輩である須田三代治の影響で札幌や小樽の展覧会を鑑賞するにとどまっていました。
戦後、須田三代治から油絵道具を贈られ油彩を始めた一原有徳は、油彩制作6年目のある日、
パレット代わりに利用していた石版の上に偶然に残った図像に強くひかれ、その転写を試みます。
そこから、石版にインクを平たく一様に塗り、その表面を自在に引っかき削り取っていく方法を追求した結果、
これまで誰も見いだしたことのない冷たいメカニックな質感と暗闇に満ちた世界が現れましたが、このモノタイプが他の
美術家たちの注目を集めるところとなり、50歳の異色版画家としてデビューすることになりました。
遅咲きのデビューに加え、登山中の遭難事故やプレス機に指をはさむ事故などにも見舞われた一原有徳でしたが
その制作意欲は衰えるところを知らず、高齢となってからも独創的な腐食版・紙以外の版画・
オブジェなど新しい表現に次々と挑戦しましたが2010年、100歳の生涯を閉じました。
市立小樽美術館では一原有徳の作品を多数収蔵しており、その常設展示が大きな課題となっていましたが、
2010年度実施の再整備事業において「一原有徳記念ホール」を開設することを決定し、オープンしました。 小樽美術館案内