〇1988(昭和63)年にニコン創業70周年を迎えた日本工学工業株式会社は、社名を株式会社ニコンに変更し、「新生ニコン」の初号機として【F-801】が登場しました。
〇【【Nikon】というブランドは、カメラのみならず、各分野において世界的に浸透と信頼があったため、国際企業に相応しい社名として変更された経緯があります。
〇社名変更後初の新製品ということもあり、新生ニコンが目指す「自動化・多機能化・高品質化」を大きく追及した製品となっています。
〇発売当初のメーカー希望小売価格は104,000円でした。(消費税3%は1989年より開始)
【操作系の変更】
〇それまでのニコンオートフォーカス一眼レフには、シャッターダイヤルや絞りダイヤルでの切り替えで、マニュアルフォーカス一眼レフカメラユーザーからの買い替えを配慮した保守的な操作系の機種のみでした。
〇オートフォーカス一眼レフMINOLTAα7000登場から3年をむかえ、各カメラメーカーの操作性は「ボタン」「レバー」での切り替え&「LCD表示」での確認が主流のなか、ニコンもF-801で高機能一眼レフに相応しい操作性を採用します。
〇軍艦部の左肩に「MODE」「ISO」「DRIVE」「ME/R(多重露光・巻き戻しボタン)」が一覧できる【四つ葉ボタン】を配置。
なお、MODE切り替えと言えば、「P」「S」「A」「M」の4種類のみと思い込んでしまいますが、F-801は3種類のPモードを備えています。
〇通常のプログラム優先「P」 高速シャッター寄りに設定される高速プログラム露出「PH」、 焦点距離135mm以上で撮影時に手ブレを抑える範囲で高速側のシャッター速度に設定するデュアルプログラム露出「PD」の高機能を実現。
〇なお、高速プログラム露出「PH」については、135mm未満のレンズを装着時は通常のプログラム露出と変わりません。またもう一つの操作系の特長として、簡単・迅速を両立させた「コマンドダイヤル」を軍幹部の右側後方に配置。
〇自然と親指で操作が可能で、ファインダーを覗いたままでも、シャッター速度の変更ができるようになりました。
〇現在のデジタル一眼レフ・ミラーレスカメラでは当然の「コマンドダイヤル」ですが、昭和63年当時は競合製品にはありませんでした。
【世界初 最速1/8000秒対応のシャッター機構を搭載】
〇ニコン製オールドフィルムカメラの人気商品で有名な【FM2】【FE2】で実現していた1/4000秒対応のシャッターの開発経験を活かし、アルミ合金によるさらなるシャッター幕の軽量化、シャッターブレーキ等の改良により、最速1/8000秒を世界で初めて実現。
〇シャッター幕の製造には、コパル(現在:ニデックプレシジョン株式会社)が関わっています。
〇以後のニコン製のフラッグシップ・ハイアマチュア層向け一眼レフカメラでは、最速1/8000秒の時代がしばらく続きます。
〇また、測光モードとして、逆光時でも適正露出が自動的に得られるように、「5分割マルチパターン測光」も搭載しているので、「1/8000秒」と「5分割マルチパターン測光」のおかげで開放絞りでも、屋外逆光時のポートレート撮影を簡単に狙えます。
【ローソクの明かりでも合焦する高性能オートフォーカス】
同条件でも、【F-801】は現在でも実用レベルの高い精度で合焦します
〇これは、F-801のため新規開発されたAFセンサー及び、ミラーボックス下部にあるCCDラインセンサーの感度改良のおかげです。
〇明るい場所でモデルのなだらかに変化する頬に対しても合焦するので、「ニコンは高速でピント合わせに弱点はあるが、プロフェッショナル層が求める厳しい場面でも確実に合焦していく」と当時を知る写真家に言われていました。
〇まさに、オールドフィルムカメラで、ピント合わせに自信のない初心者に皆さまにもオススメできるポイントです。
【ストレスを感じさせないハイアイポイントファインダー】
【F-801】のファインダーは、アイポイント約19mm(ファインダー内情報を含めて全視野がケラれることなく目視できる距離)を実現。
〇つまり、眼鏡使用時でも容易にファインダーを覗くことが可能。 アイポイント17mmを有する高級デジタル一眼レフ【D850】と比較すると見え易さがわかります。
〇また、マイクロプリズム式(ニコンでは、J型と呼ぶ)のスクリーンマットへ交換することで、Ai Nikkorレンズ及び Nikkor AUTO(Ai改造済)といったMFレンズで精密なピント合わせを要求される場合でもストレスなく撮影に集中できます。
【オートフォーカスが駆動するレンズは「AIAF Nikkorレンズ」】
〇F-801のAF方式は、カメラボディ内のモーター・回転軸でレンズのピントリングを回転させる仕様のため、【AF-S】【AF-P】は対象外です。もちろん、MFでのAI Nikkorレンズは基本的に使用できます。
〇さて本商品の状態ですが、外装は画像からお分かりいただけるように、非常に良好なコンディションを保っています。
〇ファインダー、ミラーの状態もカビクモリなく良好です。
〇バッテリーホルダー、ボディ側接点にも痛み、腐食はなく良好な状態です。
〇シャッター幕もきれいな状態です。
〇電源のオンオフ、各種モード切替、ニコン製スピードライトとの連動(SB-80DXにて実施)、合焦、絞り等の各機能の点検済です。
〇AF駆動ギアの音がやや大きいですが、年式を考慮すれば妥当と思われます。
〇なお、画像にて装着されているレンズは参考です。今回出品物には含まれません。
〇付属品:純正ボディキャップ BF-1A