映画『At Your Doorstep(原題:Cerca de tu casa)』の音楽を収めた2016年のアルバム『DOMUS』の成功により、スペイン版アカデミーとも言われるゴヤ賞で最優秀女優賞に選ばれるなど名実ともにカタルーニャ音楽を代表するアイコンとなったシルビア・ペレス・クルースが、名門カタルーニャ高等音楽院(ESMUC)で共に学び、フレッド・ハーシュやアーロン・ゴールドバーグに師事したことでも知られるスペインの俊英ピアニスト、マルコ・メスキーダと2019年10月にブルーノート東京で行った公演を記録したライブ・アルバムが待望のフィジカル化。このデュオ形態は2017年頃からスタートし、約2年間のツアーを経て、その集大成として東京公演がライブ・レコーディングの場として選ばれたとのことだ。前年の2018年に行われたシルビアの東京公演では、弦楽五重奏をともない演奏されたが、2019年に来日したこのデュオでは五重奏とはまるで違った音世界を我々に聴かせてくれた。繊細さと激しさを兼ね備えた歌、そして静寂とダイナミズムを兼ね備えたピアノ。そんな珠玉のデュオが演奏したのは、シルビアの出世作『Granada』に収録のワルツ「Pequeo Vals Viens」からサンバの名曲「Asa Branca」、アルゼンチンの現代フォルクローレの名作曲家ホルヘ・ファンデルモーレの名曲「Oracin Del Remanso」などスペイン語/ポルトガル語圏の名曲から、レディオヘッドの「No Surprises」、サイモン&ガーファンクルの「Sound of Silence」といった英語圏の名曲。そしてスキャットで歌われたジャズの名曲「Lonely Woman」まで、そのレパートリーは多岐に渡る。タイトルの通り、『間』というものの存在を逆説的に感じさせる名ライブ・アルバムではないだろうか。ライブに行かれた方はもちろん、そうでない方も必聴必携の1枚!