勢克史（せい・かつし）は1945年に東京都で生まれ、ノーマン・ロックウェルに憧れて1970年代に渡米し、多くのアーティストの作品に触れる。1980年代後半には紙による半立体作品を発表し、1985年には米国ソサイエティ・オブ・イラストレーターから出品依頼を受けるなど国際的な評価も得る。1990年代には全日本空輸、阪急百貨店、住友信託銀行、ペプシコーラ、JTB、日本生命、郵政省など100以上の業種にわたり、2000点を超える商業広告作品を手がけた。近年ではカゴメのトマトジュースのパッケージデザインで高い評価を受けている。1998年には初のシルクスクリーンによる版画作品を発表。作風は、紙を用いた半立体表現やシルクスクリーンによる温かみある図像で知られる。

勢克史「江ノ島ドリーミング」油彩 20号 大作
夕暮れの湘南海岸を舞台に、静かに佇む赤いクラシックカーと一匹の犬を描いた本作《江ノ島ドリーミング》は、勢克史が長年追い求めてきた「温もりある現実と夢の融合」を象徴する作品です。画面には、紫から桃色へと溶け合う空の色彩と、穏やかな波の煌めきが広がり、遠くには江の島と富士山が淡く霞んでいます。手前に描かれたのは、1960年代の名車ホンダS800。その鮮やかな赤いボディは、夕陽に照らされてまるで時を超えて蘇る記憶の断片のように輝きます。

勢克史（1945年東京都生まれ）は、ノーマン・ロックウェルに憧れて渡米し、写実的でありながら温かみのある表現を確立しました。帰国後は広告やデザインの分野で2，000点を超える作品を手がけ、その確かな描写力と色彩感覚で高い評価を得ています。
本作では、油彩ならではの滑らかな質感と光の層を重ねる技法によって、柔らかな空気感と時間の流れが見事に表現されています。「江ノ島ドリーミング」というタイトルが示す通り、本作は現実の風景でありながら、どこか夢の中の情景のような詩情を湛えています。郷愁と希望が交錯するような美しい余韻を残す、勢克史の円熟期を代表する一枚です。