希少図録本 古密教 日本密教の胎動
Ko-Mikkyo:The Incipient Stages of Japanese Esoteric Buddhism
奈良国立博物館
2005年
約30ｘ21ｘ1.2cm
ソフトカバー
207ページ
図版写真フルカラー
巻末に英文掲載
※絶版
これまで見過ごされがちであった奈良時代の密教に焦点を当て、そこで生み出された優れた美の世界を紐解く。
初めて最澄・空海以前の、奈良時代における国宝・重要文化財を含む古密教法具、古密教仏像、仏画、古経、陀羅尼等をとりあげた展覧会の図録本。
古密教に焦点を当てた、これほど大規模な展覧会はほとんど開催されておらず、
図入りの書籍は類書も数少なく、論考テキスト、出品作品の詳細な解説も内容充実の大変貴重な資料です。
【序文より】
平安時代のはじめ、唐より帰国した空海によって日本に密教が伝えられたことはよく知られています。しかし、すでに奈良時代にも数多くの密教経典が伝えられており、種々の密教修法が行われていました。奈良仏教の著名な僧には、良弁や道鏡のように密教を信奉した人物が数多く、密教はかなり浸透していたことがうかがえます。唐に渡る前の若き空海も密教経典を読み、また山林修行や虚空蔵求聞持法などの密教的な修行を実践しています。もし、空海が奈良時代の密教を知らずにいたとしたら、密教を志すこともなく、きっと平安時代以降の仏教は今日私たちの知るものとは違う姿になっていたことでしょう。
古密教では十一面観音や千手観音などの多臂多面の観音像や、後の明王の萌芽を感じさせる忿怒相の菩薩像、また悔過法要の本尊として薬師如来像や吉祥天像が造られました。空海以降の密教と違い、古密教にはまだ曼茶羅や明王像はありません。しかし、奈良時代の洗練された古典美に呪術性が加わった造形は、霊験さえ感じさせるような迫力に満ちています。また、古密教の修法では古式三鈷杵や鐃と呼ばれる法具が用いられましたが、その簡潔で研ぎ澄まされた形は、空海以降の密教法具とは違う魅力を持っています。古密教には独自の芸術文化が存在していました。
本年は最澄の帰朝、空海の灌頂より数えて一ニ〇〇年目に当たります。近年、それを記念した密教の名宝展がしばしば開催されておりますが、古密教を取りあげた企画はいまだにありません。奈良国立博物館は奈良に在る博物館として、奈良の密教のすばらしさを伝えるべく特別展『古密教－日本密教の胎動－』を開催することといたしました。この展覧会を通して古密教が生み出した芸術をご鑑賞いただき、知られざる古密教の豊かな世界を再発見していただけるものと存じます。
【目次より】
図版
古密教伝来
変化観音 救いのかたち
陀羅尼の教主
古密教の経典
悔過 古密教の儀礼
山の修行者
古密教から空海へ
概説・論考
古密教展概説 内藤榮
奈良朝古密教の前史に関する覚書 中国部周期前後の状況を中心に 稲本泰生
奈良時代の悔過会の造像 谷口耕生
作品解説
出品目録
年表
講座等一覧
英文
Foreword
Exhibition Catalogue
【出品目録より 一部紹介】
陳列番号/指定（国宝・重要文化財）作品名/件数/時代/所蔵先/展示期間
Ⅰ．古密教伝来
十一面観音立像１躯中国・唐
（長安３～４年＝７０３～４）奈良国立博物館※全期間展示
十一面観音像頭部１面中国・唐時代（８世紀）岡山・大原美術館
十一面観音立像１躯中国・唐時代（９世紀）中国・河南博物院
十一面観音立像１躯中国・唐時代（７世紀）東京国立博物館
十一面観音立像１躯中国・唐時代（８世紀）山口・神福寺
十一面観音立像１躯中国・唐または奈良時代
（８世紀）奈良・与楽寺（広瀬）
Ⅱ．変化観音－救いのかたち
十一面観音立像１躯飛鳥時代（７世紀）東京国立博物館
十一面観音立像１躯奈良時代（８世紀）福井・多田寺
十一面観音立像１躯奈良時代（８世紀）奈良・薬師寺
十一面観音立像１躯奈良時代（８世紀）奈良・唐招提寺
十一面観音立像１躯奈良時代（８世紀）和歌山・円満寺
十一面観音立像１躯奈良時代（８世紀後半）～
平安時代初期（９世紀初め）奈良国立博物館
十一面観音立像（法隆寺献納宝物）１面奈良時代（８世紀）東京国立博物館
十一面観音立像１面奈良時代（８世紀）奈良・唐招提寺
十一面観音立像１面奈良時代（８世紀）兵庫・一乗寺
伝衆宝王菩薩立像１躯奈良時代（８世紀）奈良・唐招提寺
伝獅子吼菩薩立像１躯奈良時代（８世紀）奈良・唐招提寺
伝不空羂索観音立像１躯奈良時代（８世紀）奈良・大安寺8/23-9/4
伝馬頭観音立像１躯奈良時代（８世紀）奈良・大安寺
伝楊柳観音立像１躯奈良時代（８世紀）奈良・大安寺7/26-8/21
唐大和上東征伝１帖南北朝時代（１４世紀）東京・大東急記念文庫
西大寺資財流記帳２巻鎌倉時代（１３世紀）奈良・西大寺
Ⅲ．陀羅尼の教主
菩薩半跏像１躯奈良時代末～平安時代初期
（８世紀末～９世紀）京都・宝菩提院願徳寺
虚空蔵菩薩坐像１躯奈良時代（８世紀）奈良・額安寺
虚空蔵菩薩坐像１躯奈良時代（８世紀）福島・能満寺
文殊菩薩坐像１躯奈良時代（８世紀）奈良・薬師寺
虚空蔵菩薩坐像１躯奈良時代（８世紀）個人蔵
虚空蔵菩薩坐像１躯平安時代（９世紀）奈良・北僧坊
虚空蔵菩薩坐像１幅鎌倉時代（１３世紀）東京国立博物館8/16-9/4
虚空蔵菩薩坐像１面鎌倉時代（１３世紀）大阪・藤田美術館7/26-8/15
虚空蔵菩薩坐像１面鎌倉時代（１３世紀）大阪・細見美術館
求聞持根本尊図像１幅鎌倉時代（１３世紀）京都・醍醐寺
如意輪観音坐像断片一括奈良・平安～鎌倉時代
（８・１１～１３世紀）滋賀・石山寺7/26-8/21
蔵王権現立像心木・断片一括奈良時代（８世紀）滋賀・石山寺7/26-8/21
如意輪観音坐像１躯平安時代（１０～１１世紀）滋賀・石山寺
信貴山縁起絵巻 尼公巻１巻平安時代（１２世紀）奈良・朝護孫子寺
諸観音図像１巻平安時代（１２世紀）奈良国立博物館
十巻抄 巻第六１巻鎌倉時代（１２世紀）京都・醍醐寺
虚空蔵求聞持法（石山寺校倉聖教のうち）１帖平安時代（１０～１１世紀）滋賀・石山寺
虚空蔵求聞持法（石山寺校倉聖教のうち）１帖平安時代（１０～１１世紀）滋賀・石山寺
如意輪陀羅尼経（石山寺校倉聖教のうち）１巻平安時代（１２世紀）滋賀・石山寺
Ⅳ．古密教の経典
金剛場陀羅尼経１巻飛鳥時代（丙戌年＝６８６）文化庁
仏頂尊勝陀羅尼経１巻奈良時代（８世紀）和歌山・正智院
仏頂尊勝陀羅尼経（石山寺一切経のうち）１帖飛鳥時代
（天平宝字４年＝７６０）滋賀・石山寺
千手千眼陀羅尼経１巻奈良時代（８世紀）京都国立博物館7/26-8/15
不空羂索神変真言経 巻第一１８巻のうち
巻第一奈良時代（８世紀）和歌山・三宝院
不空羂索神呪心経１巻奈良時代（８世紀）奈良・西大寺8/16-9/4
如意輪陀羅尼経１巻奈良時代（８世紀）大阪・松尾寺
大毘盧遮那成仏神変加持経 巻第一７巻のうち一巻 奈良時代（８世紀）奈良・西大寺
造東大寺司請経牒１巻奈良時代
（天平勝宝７年＝７５５）奈良国立博物館
道慈像１幅室町時代（１５世紀）奈良・額安寺
如意輪観音坐像 一躯 滋賀・石山寺
信貴山縁起絵巻 尼公巻 一巻 奈良・朝護孫子寺
諸観音図像 一巻 奈良国立博物館
十巻抄 巻第六 一巻 京都・醍醐寺
虚空蔵求聞持法（石山寺校倉聖教のうち）一帖 滋賀・石山寺
虚空蔵求聞持法（石山寺校倉聖教のうち）一帖 滋賀・石山寺
如意輪陀羅尼経（石山寺校介聖教のうち）一巻 滋賀・石山寺
Ⅳ古密教の経典
一金剛場陀羅尼経 一巻 文化庁
仏頂尊勝陀羅尼経 一巻 和歌山・正智院
仏頂尊勝陀羅尼経（石山寺一切経のうち）一帖 滋賀・石山寺
千手千眼陀羅尼経 一巻 京都国立博物館
不空羂索神変真言経 巻第一 一八巻のうち一巻和歌山・三宝院
不空羂索神呪心経 一巻 奈良・西大寺
如意輪陀羅尼経 一巻 大阪・松尾寺
大毘盧遮那成仏神変加持経 巻第一 七巻のうち一巻 奈良・西大寺
造東大寺司請経牒 一巻 奈良国立博物館
道慈像 一幅 奈良・額安寺
Ｖ悔過‐古密教の儀礼
伝薬師如来立像 一躯 奈良・唐招提寺
月光菩薩立像（薬師三尊像のうち） 一躯 福鳥・勝常寺
広目天立像（四天王像のうち） 一躯 福島・勝常寺
七仏薬師如来像 七躯 千葉・松虫寺
吉祥天像 一面 奈良・薬師寺
吉祥天立像 一面 余良・唐招提寺
吉祥天立像 一躯 奈良・西大寺
吉祥天立像 一躯 滋賀・蜊江神社
毘沙門天立像 一躯 奈良・法隆寺
吉祥天立像 一躯 奈良・法隆寺
銅鐃（法隆寺献納宝物） 一口 東京国立博物館
法螺 三口 奈良・法隆寺
金光明最勝王経巻第六、巻第八 一〇巻のうち二巻奈良国立財物館
金光明最勝王経巻第七 一〇巻のうち一巻奈良・西大寺
三宝絵 一帖 愛知・名古屋市立博物館
三宝絵 下巻 三帖のうち一帖 東京国立博物館
舟形光背（二月堂光背） 一面 奈良・東大寺
舟形光背（二月堂光背）裏面拓本 一幅 奈良・東大寺
銅三鈷鐃（堂司鈴） 一口 奈良・東大寺
銅鐃 一口 東京国立博物館
銅三鈷鐃（呪師鈴） 一口 奈良・東大寺
銅香水杓 二柄 奈良・東大寺
東大寺要録 巻第四、巻第七 一〇附のうち二冊奈良・東大寺
二月堂縁起絵巻 二巻 奈良・東大寺
銅三鈷杵 一口 奈良国立博物館
銅三鈷鐃 一口 千葉・円福寺
銅三鈷鐃 一口 個人
銅三鈷鐃 一口 東京国立博物館
百万塔及び十万節塔付無垢浄光経陀羅尼 奈良・法隆寺
（百万塔） 一〇〇基
（十万節塔） 一基
仁王経法曼荼羅 一巻 ニューヨーク・パブリック・ライブラリー（スペンサー・コレクション）
釈迦三尊像（仁王会本尊）一幅 奈良・西大寺
呪符木簡（藤原京跡右京九条四坊出土）
Ⅵ山の修行者
日本霊異記 上巻 一巻 奈良・興福寺
日本霊異記 中巻、下巻 二帖 京都・来迎院
役行者倚像 一躯 個人
泰澄及び二行者坐像 三躯 福井・大谷寺
十一面観音立像 一躯 奈良・世尊寺
奈良県大峰山山頂遺跡出土品 奈良・大峰山寺
金製如来坐像 一躯
金製菩薩坐像 一躯
銅瑞花鴛鴦文八稜鏡 三面
銅三鈷杵断片 一個
銅錫杖断片 一個
須恵器杯 一口
須恵器浄瓶 一口
須恵器壺 一口
土師器黒色土器 二口
三彩片 一個
和同開珎 一枚
隆平永宝 一枚
富寿神宝 二枚
金銅三鈷杵（奈良県弥山山頂出土） 一口 奈良国立博物館
丸山西遺跡出土品 奈良・東大寺
軒丸瓦 三個
軒平瓦 六個
天地院跡出土品 奈良・東大寺
葡萄唐草文短頸壺 一口
軒丸瓦 一個
二荒山碑文 一巻 京都・神護寺
－目光男体山山頂出土法具 栃木・日光・荒山神社
銅三鈷杵 一口
銅三鈷鐃 一口
銅三鈷鐃 一口
銅柄香炉 一柄
銅柄香炉 一柄
銅塔鉤形合子（蓋） 一口
銅塔鋺形合子（身） 一口
銅錫杖頭 一柄
銅錫杖頭 一柄
鉄錫杖頭 一柄
鉄錫杖 一柄 栃木・輪王寺
銅錫杖 一柄 奈良・法隆寺
Ⅶ古密教から空海へ
勤操像 一幅 和歌山・普門院
勤操像 一枚 京都・醍醐寺
弘法大師二十五箇条御遊告 一巻 奈良国立博物館
三国仏法伝通縁起 下巻 二冊のうち一冊 奈良・薬師寺
高野大師行状図画 巻第一 うち一巻 兵庫・白鶴美術館
性霊集 巻第七、巻第十 十帖のうち一一帖 京都・醍醐寺
空海請来目録 一巻 滋賀・宝厳寺
真言八柤像 八幅 奈良国立博物館
大日如来坐像 一躯 和歌山・金剛峯寺
両界曼荼羅（伝真言院曼荼羅） 二幅 京都・教王護国寺
両界曼茶羅 二幅 広島・浄土寺
五大尊像 五幅 京都・醍醐寺
金剛界大壇具（両部大壇具のうち） 一括 奈良・室生寺
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