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竜二　映画に賭けた33歳の生涯　伝説の俳優金子正次　松田優作　川島透ほか多数


癌に冒されても、初めての主演映画『竜二』を作りあげ、封切り直後にそれを見届けたように逝ってしまった伝説の俳優金子正次。烈しく生きた男の生涯に肉迫する峻烈なノンフィクション。


レビューより
スタアになることを、映画スタアになることだけを夢見て生きた金子正次が死んだのは1983年11月6日。33歳と11ヶ月の生涯だった。この本は、役者にならなければたぶん本物のやくざになってしまったかもしれない男の、危ういが熱い生きざまを丹念な取材を通して綴ったルポルタージュである。すぐれた作品であるが、残念なことに、まず『竜二』を観て、そして『竜二』に感動した人間でなければそのすばらしさが伝わってこないであろう内容なのである。


この本に書かれたエピソードで印象深いのは、やはり金子の最期の場面である。病室に駆けつけた松田優作は、金子の手を握ってあげてくれという看護婦の頼みをはねつける。
「駄目だ、手なんて握らない。おい、金子、起きろ。起きるんだ、金子」そして臨終までの4時間、優作は立ちっぱなしで金子を呼び続けるのである。　＜待ってろよ、男になるからよ＞
金子の口癖が、どこからともなく聞こえてきて、僕は虚空を仰ぎみる。しかし虚空には、何も、ない。