FRANCK
QUINTETTE EN FA MINEUR
QUATUOR LOEWENGUTH
JACQUELINE EYMAR, piano
LEKEU
SONATE POUR VIOLON
EN SOL MAJEUR
ARTHUR GRUMIAUZ, violin
RICCARDO CASTAGNONE, piano
NIPPON PHONOGRAM
FCM-41(M)
当LP初出は1973年5月で、盤鬼は芸術新潮LP新譜抄で次のように評された。
「仕上げは、多少迫力と突き込みを欠くが、方正澄明で緻密だ。とくに清楚な点に好感が持てる。弦楽部は、少し芯は弱いが、内燃的で鮮潔流麗だ。・・・カペーらに及ぶべくもないが純フランス的な佳演といえよう。片面には、グリュミォーの定評あるルクーの「ヴァイオリン・ソナタ」が新カットで入っている。少なくとも、廉価盤としては、魅力的な一枚」
実際、この二つの名曲の決定的名演を新カッティングでカップリングするなど余りに贅沢なLPであり、加えて廉価盤でもあった。新カッティングで、ルクーの作品も再生音が実に鮮明でステレオ再録音盤と比べても全く遜色はない。また各々の作品が片面に全楽章収録されているのは最高の美点で、この盤以外に存在しない。
尚、佛フィリップスのオリジナルLPには、同じくフランクの《前奏曲、コラールとヒューグ》が併収されており、盤鬼の名著『名曲この一枚』」(1964年刊)でピアノ五重奏の演奏について次のやうに誌されている。
「・・・演奏は、多少緊迫感には欠けるが、純フランス風で繊麗温和だ。ローヴァンギュットの出来がこの奏団としてはかつてないほどに良く、入念真摯で若々しいが、概して弱く平凡なピアノを大過なくカヴァーしている。終曲が最も良い。SPには、シャンピとカペー奏団による比類なく格調高い感動的な名演があった。(中略)次位は、フランスHMVからSPの最後期に出たデカーヴとブイヨン奏団であろう。(後略)』ちなみに上述のデカーヴとヴィヨン奏團による録音は本邦でかつて日キング・レコードでごく少数プレスされ私家盤(レーベル面にNOT FOR SALEと記載)として出ていた。
グリュミォーはルクーのヴァイオリン・ソナタを都合三度録れているが、このモノラル録音の方に軍配を挙げる向きが圧倒的に多い。ルクーの熱狂的ファンであることを自認する音楽評論家の言を引用させて頂こう。
「ほんというと旧盤のほうに心を惹かれますね。新盤ももしろんそれだけきけば素晴らしいですけれど、比べてみると旧盤の方がよりいっそう・・・好みの問題かもしれませんが。(濱田滋郎)」
「想像力のゆたかさ、若々しい覇気、高い志のみなぎりという点で、初回のモノーラルの方がだんぜん優れている。」(喜多尾道冬)
「白髪のカスタニョーネのピアノと入れた、モノーラル盤の方が絶対的に優れている。ここでのグリュミォーは情熱的で、まるで一編のドラマのように劇的に音楽を盛り上げて余すところがない。・・・おそらくこれは、空前絶後の演奏といえるだろう。」(出谷啓)
「聴き手の立場からすると旧盤にいっそうの魅力を感じる。」(渡辺和彦)
当LPの盤面は両面とも実に美麗で殆ど使用感は見られないが、ルクーの第一楽章の前半に微細な斜めに走る瑕による微かなティック音が聴かれるも殆ど気になるレヴェルではない。ジャケットも半世紀の時を経て全く傷みも汚れも見られない美麗な状態である。