『グレイスフル・ドリーム』は、そのような彼女の音楽観が高度に、そしてピュアに美しく
具現化されたアルバムだといえる。スタティックさがより一層強調された音世界は、、曲の進行
とともにひとつのストーリーをなしているかのようで、トータルアルバムとしての完成度は高いといえる。
《グレースフル・インターミッション》という無音の4分18秒の“曲”をアルバム終盤に配しているのも、
このアルバムは通しで聴いてくださいという、より強い彼女の意思の表れなのだろう。
ドラムにアリ・ホニック、ベースにラリー・グレナディアというベテランをしたがえつつも、
そこに表出されているのは、あくまでアキコ・グレイス独自の世界。
もちろん、ベテランならではのサポートが光り、彼らは単に伴奏・リズムマシン以上の責を果た
しているが、あくまで控えめ。アキコ・グレイスのピアノありきのリズムセクションとなっている。
音に耽溺し、埋没する。とりたててどの曲がひときわ群を抜いて素晴らしいというものでもなく、
清流の流れのごときピアノが織りなす音物語に浸るのがもっとも正しい聴き方なのかもしれない。
悪い意味ではなく、リラクゼーション効果のあるBGMとしても最適なアルバムといえる。
ただし、ボーナストラックの《デランシー・ストリート・ブルース'08》のみは例外で、
アルバム中唯一躍動感あるダイナミックな演奏が繰り広げられる。
この曲の前に4分18秒の空白を設けたのも、リスナーの気持ちのモードを切り替えるために必要な
措置だったのかもしれない。
GRACEFUL VISION (Savoy)
- Akiko Grace
1.Evanescence Of Sakura
2.How Deep Is The Ocean
3.Fly Of Seven
4.Soxy
5.Approach To Shine
6.Silver Moon
7.Lacrimosa
8.Innocent Waltz
9.A Nightingale Sang In Berkeley Square
10.Traumerei
11.Graceful Intermission
12.Delancay Street Blues '08