・60年にロニー・ホーキンスのバック・バンドとして活動を始めた“ザ・バンド”が、76年11月25日、彼らが初公演を開いた場所、サンフランシスコのウィンターランドで解散コンサートを行った。これはそのドキュメンタリー・フィルムなのだが、監督が曲者スコセッシ(「ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間」や「エルビス・オン・ツアー」のカッターだった)だけあって、完全な彼のコントロールの下で、V・ジグモンド、L・コヴァックス、M・チャップマン以下、当代一流のカメラマンを配して、一つの映像作品として独立した内容を持っている(何しろ300ページもの詳細な台本通りに運ばれたライヴなのだ。もちろん事前の入念なリハーサル付きで!)。実際は6時間に及んだ公演内容のハイライトを紡いで、スコセッシ自身による、これまた挑発的なインタヴューがその間隙を埋め、ちょっと窮屈なくらいよく練られた一篇。B・ディランを初め、N・ヤング、J・ミッチェル、M・ウォーターズ……アメリカン・ロックファンには垂涎のメンバーがいずれも素晴らしい演奏を披露する。哀愁たっぷりの“ラスト・ワルツ”のテーマも胸に切々と沁み、激動の60年代への挽歌と呼ばれる由縁である。But,R&R Can Never Die.