1. 第一巻『九王奪嫡』
   • 核心となるストーリー： 康熙帝の年、後継ぎの座をめぐって皇子たちが繰り広げる熾烈な権力闘争「九王奪嫡」を描く。主人公の四阿哥・胤禛（後の雍正帝）は、当初は有力候補ではなかったが、忍耐力と深謀遠慮、そして側近たちの支えにより、波乱に満ちた争いを制し、帝位を継承する。
   • 見どころ： 宮廷内の権謀術数の数々、息詰まる駆け引きは、「中国版・権力のゲーム」とも称される。
2. 第二巻『彫弓天狼』
   • 核心となるストーリー： 雍正帝が即位後、その権力基盤を固める過程を描く。反対派の残存勢力、驕る功臣、空虚な国庫など、内外の難題に直面する雍正帝は、辣腕をふるって吏治を整え、財政改革を推し進める。
   • 見どころ： 勤勉でありながらも苛烈で、時に冷酷とも映る改革者としての皇帝の苦悩と決断。
3. 第三巻『恨水東逝』
   • 核心となるストーリー： 雍正帝の治世後期からその死までを描く。年羹尭や隆科多といった重臣たちとの関係の変化、後継者・弘歴（後の乾隆帝）への継承準備、そして彼の私的な感情生活にも触れる。

主な特徴と作風

1. 歴史とフィクションの融合： 基本的な史実を尊重しつつ、豊かな文学的想像力で物語を紡ぐ。歴史上の人物たちを血肉の通った等身大の存在として描き出す。
2. スケールの大きさと細部へのこだわり： 宮廷から市井まで、政治から経済まで、清朝社会の広大な絵巻を描く。宮廷儀礼や制度、風俗の描写も細かく、臨場感あふれる世界を構築している。
3. 深みのある人物描写：
   • 雍正帝： 「父を謀り、母を逼り、兄を弑し、弟を屠る」という従来の暴君イメージを覆し、勤勉で有能ながらも手段を選ばず、過酷な運命と孤独に耐える複雑な改革者として描く。この作品は現代の雍正帝像に大きな影響を与えた。
   • 脇役たち： 知略に長けた思道、傲慢な年羹尭、陰険な八阿哥・胤など、個性豊かな脇役たちも印象的。
4. 見事な権謀術数の描写： 政治闘争の駆け引きや策略、人心の読み合いをみごとに描写しており、権謀術数小説の傑作と評される。

影響と関連作品

• テレビドラマ化： 本作を原作としたテレビドラマ『雍正王朝』（1999年放送）は、中国ドラマ史に残る不朽の名作であり、唐国、焦晃などそうそうたる俳優が出演した。ドラマの大ヒットが原作の知名度をさらに高めた。
• 歴史人物像への影響： 小説とドラマは、雍正帝に対する世間の評価を「悪逆非道の暴君」から「勤勉で有能な複雑な皇帝」へと大きく変える役割を果たした。