
「現代経済学史の射程 パラダイムとウェルビーイング」
長尾伸一 / ミネルヴァ書房
定価: ¥ 4,180
経済学の新たな参照軸を求めて理論の発展を非共役的な重なりとして多義的に理解し、経済とはいいかなる営みかを問い直す。高まる不確実性に脅かされ、成長の限界が問われるなかで、主流派経済学にも再考が求められている。本書では、競合する円の非共役的な重なりとして経済理論の発展史を捉え直すとともに、それらを貫流する「活動」への関心にも焦点をあてる。
そのようにして、古典的パラダイムと近代的パラダイムについての理解を深め、モラルサイエンスとしての経済学の新たな枠組みを模索する。
※ 主に外面(表紙やカバー、裁断面)に対してですが、うっすら汚れやコスレ、軽いぶつけ傷、カバーふちの軽い潰れやヨレなど、ごく常識レベルの使用感があります。ページ内はいたって良好、書き込みもありません。
■目次
序 章 経済学史の方法をめぐって――修正クーンモデルの提唱(松嶋敦茂・梅澤直樹)
1 なぜ経済学史の方法を問うのか
2 科学における経験的なものと先験的ないし価値的なもの
3 修正クーンモデルの提唱
第1章 現代経済学のあり方を求めて――アリストテレス、スミス、リカード、ワルラス、パレート(松嶋敦茂・梅澤直樹)
1 本章のめざすもの
2 「古典」的パラダイムと「近代」的パラダイム
3 活動をめぐって
4 時間ないし不確実性をめぐって
5 倫理学と経済学とのあいだ
第2章 経済学革新にとって学説史はいかなる意義をもつか(塩沢由典)
1 経済の危機と経済学の危機
2 危機の構造
3 現代の天動説
4 需要供給の法則とは
5 2つの競合する流れ
6 リカードの生産費価値説
7 スラッファ原理と有効需要
8 古典派経済学に巣くうキメラ
9 経済学革新の核心
第3章 経済学の生成(長尾伸一)
1 Economyと市場経済
2 経済学の誕生とパンフレット作者、自然科学者
3 political economyとモラル・サイエンス――アダム・スミス
4 古典的パラダイムと近代的パラダイム――リカード、マルクス、限界学派
第4章 アダム・ファーガスンの商業観――アート・国力・道徳(福田名津子)
1 「ふたりのアダム」問題
2 ファーガスンの商業・経済論――1760年代
3 『国富論』に対するファーガスンの反応
4 「文明・商業社会の批判者」
5 商業的アートの道徳的側面――1780年代以降
6 ファーガスン像の再構築とその射程
第5章 リカードウの貨幣経済論とその史的意義(岡田元浩)
1 リカードウとその貨幣経済論
2 古典派経済学と「ケインズ革命」
3 貨幣数量説とリカードウ
4 リカードウ貨幣経済論の背景
5 通貨問題をめぐるリカードウの見解
6 リカードウの動態的数量説
7 リカードウ動態的数量説と現実解釈
8 貨幣経済論史におけるリカードウの意義
第6章 J・S・ミルにおける経済と倫理(川名雄一郎)
1 道徳科学のなかの/としての経済学
2 商業化と商業精神の腐敗
3 経済学の定義
4 アソシエーション
5 経済学と功利主義
第7章 稀少性と「科学的社会主義」 ――ワルラスのマルクス批判(御崎加代子)
1 ワルラスとマルクス――知られざる対立
2 『社会経済学研究』第5章「所有の理論」(1896)
3 マルクス批判の出発点となるワルラスの階級観
4 ワルラスがマルクスに呈した2つの疑問
5 ワルラスの主張する搾取の原因――土地私有と独占利潤
6 公正と効率の両立をめざして
第8章 近代的パラダイムと選択の合理性――ジェヴォンズ、マーシャル、ウィックスティード、ロビンズ(田中啓太)
1 近代的パラダイムとジェヴォンズ
2 マーシャルの経済学と利己心
3 選択理論としての経済学へ
4 ウィックスティードと選択行為
5 ロビンズの経済学と選択の合理性
第9章 モラルサイエンスにおける不確実性と合理性――ケインズ『確率論』と経済学(齋藤隆子)
1 ケインズの包括的研究
2 ケインズの論理確率に示された哲学の特徴
3 『確率論』における不確実性下の合理性
4 経済学における不確実性下の合理性
第10章 合理的選択と社会性(ソーシャリティ) ――K.J.アローの社会的選択論(西本和見)
1 合理的選択の時代の社会的選択論
2 アロー型社会的厚生関数と価値判断
3 可能な社会的選択のかたち
4 前提された「社会性(ソーシャリティ)」
5 スミス的個人への回帰
第11章 「古典」的パラダイムにおける価格理論の意義とその分析射程――スラッファ価格理論の展開(平野嘉孝)
1 剰余の発生と分配のルール
2 単調性に関する先入観(monotonic prejudice)
3 枯渇性資源
4 物的実質費用vs労働価値、および資本主義の未来
5 ケインズの長期投資家、もしくは資本主義の延命策
第12章 モラルサイエンスとしての経済学における「活動」の観念――センの源流をたずねて(吉川英治)
1 モラルサイエンスとしての経済学
2 センの「潜在能力」アプローチ
3 源流としてのアリストテレス――「活動」の観念
4 マーシャルにおける「活動」の観念
5 「活動」観念にかかわる追加的論点
第13章 フェアな世界内政か、システムの観察か――アドルノ、ハーバーマス、ルーマン(表弘一郎)
1 グローバル資本主義と想像力のありか
2 討議倫理と民主主義の可能性――ハーバーマス
3 全体社会の自己記述――ルーマン
4 外部なき交換社会と想像力――アドルノ
5 「別様の観察、『別様のもの』へ」
第14章 現代社会の課題と異端の経済学――マルクスとポランニー(梅澤直樹)
1 マルクスとポランニーを結ぶもの
2 マルクスと現代社会の課題
3 ポランニーの時間論と現代社会の課題
4 異端の経済学の活かし方
第15章 経済学の本質とその未来――松嶋パラダイム論を手掛かりに(長尾伸一)
1 近代科学と経済学の類型
2 自然的秩序と自発的秩序――歴史学派・制度学派・政治経済学
3 経済学の彼方へ
あとがき
人名・事項索引
【管理用】
6939V4961
厚2.3