絶版希少図録本 写真集 星ビルコレクション アンティークビスクドール 作品集 写真解説本
瀬戸内海汽船星ビル 発行
写真・仁田一也
1999年初版
フルカラー
28.2 x 22.4 x 1.3 cm
※絶版
広島にかつてあった、世界有数のビスクドール収集を誇る、星ビルコレクションの中から、
幻の人形といわれる「A.チュイエ」、H/アッシュと言われてきたA.アロポーを含め、
ジュモー、ブリュ/ブリュー、ゴーチェ、スタイナーなど、
黄金期に主にヨーロッパで作られた華麗な人形たち114作品を初公開した展覧会の、図録本・写真集。
製作所のマーク・刻印も多数収録。
フルカラーの写真図版は各メーカーと作風ごとに整理分類、メーカー紹介ページは、メーカーのマーク刻印や素体、関節部分写真、製作者の変遷、メーカーの特徴を収録。ジュモー40点以上、ブリュ10余点、F.ゴーチェ8点、スタイナー13点、シュミット5点ほか、フランス人形中心。
巻末の作品リストでは、詳細な解説、制作年代、制作国、サイズ、コンポジションのジョイント数、刻印も掲載。
写真撮影は、30年以上もアンティークドールを収集し続けてきた世界有数のコレクター、
仁田一也氏自らの手により、それぞれの人形たちの魅力を最大限に引き出したもの。
作家年表、論考テキスト「人形の黄金期 19世紀のビスクドール」など、内容充実の、愛好家必携の大変貴重な資料本。
星ビルアンティークドールサロンは惜しまれる中閉店、今となっては入手困難な絶版貴重本です。
【序文より】
このたび、ひろしま美術館において、星ビルのアンティーク(ビスク)ドールコレクションを、初公開することになりました。こうした試みは、国内で初めてのことかと思います。(略)今回の展示を通じて、約100年前に製作されたビスクドールの、美術工芸的な魅力だけでなく、当時の社会、文化的背景との関わりあいなど、新しい発見をしていただければ幸いです。このたび星ビルコレクションに、新しいスポットライトをあてる機会に改めて写真集としてまとめてみました。
【星ビルコレクションによせて 寄稿文より】
マリー・タルノアスカ伯爵夫人
アンティークドール。昔の子供たちが遊んだこの貴重な芸術品のすばらしさを今、じっくりと味わい、大切に保存して、次の世代に伝えたい。
こんな願いを叶えようとしているのが、仁田一也氏と氏の経営する瀬戸内海汽船です。
これまで30年以上もアンティークドールを収集し続けてきた仁田氏は、世界でも有数のコレクターです。
氏が作り上げた「星ビルコレクション」は、時を越えて、人形たちを21世紀へと伝える貴重なコレクションです。今回、ひろしま美術館で初公開となるこれらのアンティークドールは、1850年から1935年の間に作られたもので、世界的な素晴らしい人形が揃っています。
仁田氏は世界のトップクラスのコレクターたちとコンタクトをとっているため、希少で、美しく面白いものを、集めることができるのです。仁田氏は、写真家としても著名で、自らのコレクションをカメラに収めた写真が、本やカレンダーを飾ってぃます。それらの写真は彼の特異な才能をよく表しています。彼の眼は、単にかわいい、きれいな、といった表面的なものにとどまらず、アンティークドールの造形美をしっかりと捕らえているのです。
仁田氏が収集したアンティークドールはみな、見つけるのがたいへん難しいものばかりです。
彼のように優れたコレクターであればこそ、見た瞬間に良いものかどうかが直感的にわかるのでしょう。
ぜひこの人形をみなさん自身の目でご覧になって、その素晴らしさを味わって下さい。
【解説より一部紹介】
●ジュモー Jumeau
ビスクドール作家の代表格はなんといってもジュモーです。衣裳制作から出発したジュモーは、1870年代にビスク作りを始めます。他社への供給、様々な彫刻家の登用、万国博覧会を通じての広告宣伝活動、百貨店などの新たな販売ルートの発掘など人形ビジネスに対して並々ならぬ経営手腕を発揮しフランス人形の名を不動なものにしました。
ジュモー”アーモンドアイ”
初期の作品。眼がアーモンドの実に似ているところから「アーモンドアイ」と呼ばれています。
ジュモー”ロングフェイス”
アンリ4世の子供の頃を想定して作られたもので、トリスト(フランス語)やロングフェイス(英語)と言われ、憂いをふくんだ表情から付けられた愛称てす。
ジュモー”フォノグラフ”
エジソンの発明した蝋管式蓄音機を内蔵し、しゃべり出す人形です。
ジュモー”オートマータ”オートマタ
オルゴールの曲にあわせて、少女が蝶を採る動作を行います。動力はゼンマイです。
●ブリュ Bru
ブリュは高品質で、かつ新しい人形づくりに挑戦した人で
泣き、笑いの二つの顔を持つダブルフェイスの人形から
起きているものと寝ているもの、ゴムのボディを付けた人形その後、木製で動きの伴った人形、1879年にはキッドボディのべべタイプのものそしてミルクを飲む人形と、個性豊かな人形を制作しました。
初期のべべは「ベベ ブレベテ」と呼ばれ、マークは無く、次に「ブリュ ジュン」(ジュンとは末っ子)に移り変わります。
この時代がブリュの黄金期で、完成された美しさをたたえています。
●ゴーチェ Gaultier
人形ヘッドメーカーとしては早くから制作していて
しかも多くのメーカーに上質のビスクヘッドを提供していました。
人形制作会社ジェスラン、ジュリアン、プチ&デュモンティエ、ラベリ&デルフィー、チュイエ、ビッチイなどに、ヘッドを提供。フランスビスクドールの草分け的存在です。
やや大人びた表情、大きな眼が特徴です。
●スタイナー Steiner
機械じかけを得意としたスタイナーは、さまざまなしかけ人形を制作しましたが、1880年代にはじまったブルゴアンとの共同制作など、傑作を数多く世に送り出しました。
1880~90年にかけては、フランスの人形業界をジュモーエ房とともに盛り立てていきます。シリーズA~G、フィギュアA~Dまで幅広くべべを制作しています。
スタイナー”シリーズGタイプ”
スタイナーの中で最高峰に位置するのが、このGタイプの人形です。稀少な人形と言えます。
●その他稀重な人形たち
A.アロポー A.Halopeau
Hのマークをフランス語読みで「アッシュ」と呼ばれていたものです。いままで作家は不明で、フランスのスタイナー社作ではないかとも言われていました。
最近の研究により、1880年代にフランスで活躍した人形師アロポーの作品であると言われています。
A.チュイエ A.Thuiller
チュイエは、サイズ2号から15号までの人形を作り、その中のいくつかはゴーチェエ房のヘッドを使用していました。またスタイナーエ房のヘッドを使用していたともいわれてぃます。ビスクの焼きあがり、色付けも美しく仕上げられてぃますが後期の作品には、いくらかむらが見受けられます。
制作期間が短く、作品が少ない事もあり、稀少価値で話題を呼んでいます。
アルベール・マルク Albert Marque
作品は、世界で約20体しか残っていないために非常にめずらしい、彫刻家アルベールマルクの作。美術品として高く評価されています。コスチュームは、パリのマダム・マルガリンラクロアの衣装を着けていることから、ラクロアのために作られたのではないかと言われています。高さは、一部を除いてすべて22インチ(約56cm)で作られてぃます。
テビレ・モトロー Tiburee Mothereau
トレードマークはB.M.で、万国博覧会では銀、銅メダルも取っています。
サイズ6号で44cm、サイズ10号では74cmの高さで、ソケットヘッド、フレンチタイプの大きな眼。コンポジションボディに不釣り合いの短めの足を着けているのが特徴です。
プテイ&デュモンティエ Petit&Dumontier
顏立ちからしてもゴーチェエ房からヘッドの提供をうけ、ボディなどを制作したものと分かります。手はメタルで作られていて、壊れない人形として売り出しました。
ほか
【作品リストより】
ジュモー・アーモンドアイ
ジュモー・ロングフェイス
ジュモー・ポートレイト
ジュモー・マネキン
シモーヌ
ジュモー・EJAタイプ
ピエール・ジュモー
ジュモー・フォノグラフ
ジュモー・オートマータ 蝶を取る少女、ばら ほか
ブリュ 黄金期時代末期の作品
ブリュ
べべ・ブリュ
ブリュ・ジュン
ブリュ・ブレベテ
ブリュ・スマイリング(モナリサ)素体
ブリュ・サークルドット
F.ゴーチェ
F.ゴーチェ・マネキン
スタイナー・シリーズGタイプ
スタイナー・フィギュア・Eタイプ
スタイナー・シリーズ・Fタイプ
スタイナー・フィギュア・Dタイプ
スタイナー・フィギュア・Aタイプ
スタイナー・フィギュア・Bタイプ
スタイナー・フィギュア・Cタイプ
スタイナー・フェニックスタイプ
シュミット
A.アロポー H(アッシュ)
A.チュイエ A.テュイエ
アルベール・マルク
テビレ・モトロー
プティ&デュモンティエ
ケストナー
シモン&ハルビック
ダネル&ジィ
ジョゼフ・L・ジォアニー
作者不詳・JM
アレキサンドレ・ルフェブル
メゾンユレ
パニエ
G.ホイバッハ
S.F.B.J.
H.ハンドベルク
モリムラ(ノリタケ)
カンマー&ラインハルト
シュワッブ・ハーテル
ブルーノ・シュミット
スウェイン
【テキスト】
人形の黄金期 19世紀ヨーロッパのビスクドール
産業としての人形生産
万国博覧会の役割
ジュモー社・ベベドールの生産量の推移
ジュモー・コピーの登場
19世紀のビスクドールの価格
ビスクドールの構造
ドイツの人形生産
1ドル人形・なぜドイツ人形が安かったのか…
人形の病院
フランス人形業界の栄光