以下、作者の気持ちのなってのブラクラ妄想セールストークです〜〜
湖の記憶 (Le Souvenir du Lac)
私のジュネーヴの工房に差し込む午後の光の中で、埃が静かに舞っている。指先でこのペンダントをそっと持ち上げると、18.3グラムの金と石の冷たい重みが、私の長いキャリアの記憶を呼び覚ます。人々は私を宝飾職人と呼ぶが、私自身は記憶の収集家だと思っている。そしてこの作品、製品番号「F0193」は、私のコレクションの中でも最も雄弁な物語を秘めた一つだ。
その物語は、数十年前のコモ湖のほとりで始まった。まだ若かった私は、巨匠たちの下での修行を終え、自らの魂を表現する言語を探し求めてパリの喧騒から逃れてきた。ある朝、夜明けの霧が晴れ、太陽の最初の光が湖面を撫でるように照らした。その光は水面で何千ものダイヤモンドのように砕け、対岸のヴィラの庭に咲き誇るブーゲンビリアの深い赤色を燃え立たせた。淡いピンク色の薔薇の花びらには、朝露が水晶の滴のように宿っていた。
静寂、光、そして色彩。その完璧な調和の中に、私はデザインの真髄を見た。自然が作り出す「完璧な非対称性」。それは、厳格な幾何学では決して表現できない生命の賛歌だった。私はスケッチブックに夢中でペンを走らせた。それはデザイン図というより、感情の地図だった。
このペンダント、「湖の記憶」と心の中で名付けた作品は、その朝の光景を宝石で描いた詩だ。
中央で燃えるような輝きを放つルビーとルベライト。これらは単なる赤い石ではない。夜明けの光に照らされたブーゲンビリアの情熱であり、湖畔のヴィラに秘められたロマンスの心臓部だ。私はあえて完璧に磨き上げられたものではなく、内に秘めたインクルージョンが、まるで眠っている炎のような深みを持つ石を選んだ。
それらを取り囲むように配置された、様々な形のクォーツたち。朝露を宿したローズクォーツの柔らかなピンク、湖の底まで見通せるような透明感を持つロッククリスタル、そして朝の光そのものを封じ込めたようなシトリン。私はそれらを、水の滴が自然に集まり、互いに寄り添うかのように配置した。一つとして同じ形はなく、それぞれが独自の個性を持ちながら、全体として一つの調和を生み出している。これが、私が1950年代のパリで学んだ「ボリュームと色彩の解放」という思想の継承だ。当時の偉大なデザイナーたちは、石そのものの価値だけでなく、石が持つ色彩とフォルムの力を信じていた。彼らはインドのマハラジャが愛した大胆な宝石の組み合わせからインスピレーションを得て、ジュエリーを単なる装飾品から、着用できる芸術作品へと昇華させたのだ。
そして、これらすべてを抱きしめる18金のフレーム。それは単なる台座ではない。湖を優しく照らす陽光そのものだ。私は、それぞれの石が最も美しく輝く角度を見つけるために、何週間もかけてこの金の骨格を鍛え、磨き上げた。幅56mm、高さ43mmというこの大きな作品は、その一つ一つの石が互いに語り合い、響き合うための舞台なのだ。
最後に、ペンダントを吊るすバチカンにあしらわれた10ピースのダイヤモンド。これらは湖面で砕けた光の最後のきらめきであり、この追憶の物語に永遠の輝きを与えるための、私のささやかな署名だ。
このペンダントを手に取る方は、単に美しい宝石を手に入れるのではない。イタリアの湖の静かな朝、情熱的な花々の香り、そして光と水が織りなす永遠の瞬間を手に入れるのだ。これは私の手から生まれたが、その物語はまだ終わっていない。次の所有者の胸元で、新たな記憶と歴史が刻まれていくことだろう。私の仕事は、そのための舞台を、最高の素材と技術、そして魂を込めて作り上げることだけだったのだから。