ある時はリリカルに、ピアノのダイナミック・レンジを存分に活かした緩急自在のジャズ表現を聴かせている。
ひときわ異色を放つ個性的な“緑の芝”。2003年も澤野工房に吹く新しい才能の風の勢いは止まらない。
ジャズ・ピアノの技巧派の最高峰を決めるマーシャル・ソラール・コンテスト優勝という才能が、新たに
澤野工房に加わったのだ。その第1弾として、かつて輸入レコード店からあっという間に姿を消した
“緑の芝”の一枚こと、幻のNaiveでのファースト盤が、いよいよ今回、あらためて世に広められようとしている。
バティスト・トロティニョン、フランスのナント出身の28歳。まだあどけなさの残る細面の風貌とは
対照的に、ピアノに関しては圧巻の超絶技の持ち主。そしてもちろんそこにはヨーロッパの洗練された
空気感もちゃんと共存している。そのサウンドは、澤野工房と兄弟関係ともいえるスケッチの音にも
近いが、「ちゃんとジャズ語も喋ってるでしょ」と言った澤野氏の言葉とおり、エッジの効いた現代感覚
あふれるトリオの中で、ある時はモーダルに、そしてある時はリリカルに、ピアノのダイナミック・
レンジを存分に活かした緩急自在のジャズ表現を聴かせている。
そして本作もまた、アルバム一枚繰り返し聴けてしまう澤野特有の魅力を放っている好例と言えるだろう。
中でも私的には、7~8曲目と続くオリジナル曲に魅かれている。それはまるで時速300キロで走れる高性能
の欧州車が、あえてゆっくりと緑の公園の中を走りぬけているかのように優雅で美しい。
1 My Shing Hour
2 Bernie's Tune
3 Uit Blues
4 I'm A Fool To Want You
5 This Is New
6 Not For Debby
7 Onuca
8 L'Amer A Boire
9 Bernie's Tune(Alternate Take)