内容は言わずもがな。
ラインナップは第六期名手揃い。
Ritchie Blackmore(G)、Joe Lynn Turner(Vo、ex-Fandango、Rainbow、Rising Force他)、Roger Glover(B/Key)、
故Jon Lord(Key/Strings Arrangements)、Ian Paice(Ds)となります。
プロデュースは毎度御馴染み名手Roger Glover。
1990年初期~中期米国フロリダ州アルタモンテ”Greg Rike Productions”(録音)/同コネチカット州”Sountec Studios”(追加録音)/
同ニューヨーク”Powerstation Studios ”(ミキシング/追加録音)での制作となります。
前作”House of Blue Light”がセールス不振。
契約履行とファンの渇望からライヴ盤”Nobody's Perfect”制作となりますが、これを以て契約は完了。
音楽性主導の責任を取らされる形で名手Ian Gillanは解雇となります。
後任人事に勤しむ事となりますが...............................................
かのSurvivorの二代目名ヴォーカリスト名手故Jimi Jamison(ex-Tiger、Cobra)を迎えるものの、ビジネス問題であっけなく離脱。
名手Kal Swan(ex-Tytan、Lion、Bad Moon Rising)を試すも、安定度があれど声域の狭さがあり断念。
名手故Brian Howe(ex-White Sprit、Ted Nugent、Bad Company等)/John Farnam(Little River Band(!))/
名手Jimmy Barnes(かの”Journey”関連。前者共にオーストラリアに居を構えていた故Jon Lordの推薦という感)等々を試すものの納得出来ず。
Joe Lynn Turner系統ヴォーカリストとも言えるTerry Brock(Strangeways)を試すもののこちらも上手く行かず。
ならばと、Deep Purple関連の安定した実績の本家たるJoe Lynn Turnerを迎える事となります。
「才能には限界があるが..................」とのRitchie Blackmoreの発言がございましたが、オーディションは合格/正式加入。
新規契約を”BMG”と結び、制作に乗り出す事となります.....................................
Roger Glover/Joe Lynn Turnerの殴り合いの喧嘩、
Ritchie Blackmoreによる無理な要望でIan Paiceの演奏が上手く行かず部分的にドラムマシンに置き換えられる、
等々のトラブルを挟みつつ完成に至る.........................という面倒な経緯がございます.....................................
さて今作。
Ritchie Blackmore主導による制作の感。
されどDeep Purpleの作品という事。建前上故Jon Lordがリーダーで合議制重視という事もあり、その上で構築された音楽性でございます。
前述のRitchie BlackmoreによるJoe Lynn Turner評「才能に限界があるが.........」でございますが、「新鮮味は無いが質は期待出来る」という解釈の感。
Joe Lynn Turner特有の「メロディ重視でアクの強い音楽性を自らのポピュラー性で中和する」という才能を生かしたもの。
大傑作”Perfect Strangers”の重厚感にJoe Lynn Turner特有のメロディアス/ポピュラー感を強く加え、
リズム面含め演奏/アンサンブルの複雑さを排除したシンフォニック色強いという感のある音楽性でございます。
Deep Purple特有の演奏/アンサンブルの巧みさは後退。
単体演奏面でのソロパートでは窺えるものの、アンサンブルの巧みさは”Fire in the Basement”以外は..............................という感。
楽曲重視というもの。正直、メロディアス/ポピュラー感重視でシンフォニック色強い聴き易い楽曲が揃うという感。
(前作創作セッション時にLord/Glover/Paiceによるオルガン・トリオの巧みな演奏が行われたものの、Ritchie Blackmoreは興味を示さず。
演奏にて介入し強制終了させたとの話から、既に当時は先に楽曲創作有りき、それに演奏個性を加えるという感...........)
プロデューサー/作曲者としてのRoger GloverはDeep Purple/Rainbowの差別化に苦心が窺われるもの。
Roger Glover/Joe Lynn Turnerでの殴り合いの喧嘩はこれが発端という感。
案外Joe Lynn Turnerは頑固という感。
Deep PurpleであろうとRainbowであろうとYngwie J.Malmsteenであろうと自分は自分という主義を通す方。
おまけにRitchie Blackmoreの庇護の下、そこが対立を招いたという感がございます。
(ツアー中ラジオにてMotley Crueの楽曲を拝聴。アイデアが使えるとノートに認めていた事がRoger Gloverに目撃されており、呆れていた模様....
Motley Crueに罪は御座いませんが...............................................)
後の新生Rainbow”Stranger in Us All”に繋がる音楽性でございます。
リリース後はツアーに勤しむ事となりますが...................................
残念ながら、当時はスラッシュ・メタル及びオルタナティブ/グランジという反八十年代音楽性の大ブーム。
英米ではセールス不振(それでも健闘という感)。
されど日本、ヨーロッパ/北欧系では(大きくは無いものの)成功を収める事となり、ラインナップは継続となります。
自身主導の音楽性に自信を深めたRitchie Blackmoreは次作に向けて.............................
プロデュースに疲れ始めたRoger Gloverに代わり、次作にてPat Raganプロデューサー起用を主張。
(”Lion”傑作”Dangerous Attraction”にてKey担当。後に”Keel””新生Rainbow””Blackmore's Night”等手掛ける)
承認を受けBlackmore/Turnerを創作中心として、次作制作へ駒を進める事となります。
Roger Gloverの心配から幾度となく介入を受けつつ、新作は完成。
されどマネージメント側から「デビュー25周年記念特別企画案」が持ち込まれる事となります..........................................
擦った揉んだの末名手Ian Gillan復帰が決まり、Joe Lynn Turnerは敢無く解雇。
完成した新作はヴォーカル再録音に合わせ再アレンジそして再ミックスがRoger Gloverにて為される事となります...........................
そして”The Battle Rages On”..............................................
さて、ボーナス楽曲。
シングル・カット楽曲短縮ヴァージョン2曲と本編未収録楽曲1曲でございますが.......................
前者2曲はシングル用ミックスという感。
後者”Slow Down Sister”はラフ・ミックス。
躍動感とスケール感が感じられる楽曲で本編に入れていれば(若干音楽性にズレがあるにせよ).....................という感のあるもの。
但し元ネタはかの第三期Deep Purple名曲”Stormbringer”という感で、若干古臭さが感じられるもの(音質の問題の感有り)。
そこが外された理由の一つという感がございます...........................................
さて、残念な事にかの名優故”Roger Moore”主演映画”Fire, Ice & Dynamite”同タイトル主題歌が未収録。
今作本編とは異なる音楽性ではございますが、躍動感ありJoe Lynn Turnerのメロディアス/ポピュラー感が強く出たもの。
第六期Deep Purple特有という感のある楽曲、呆気なく崩壊したラインナップの貴重な秀曲ではございますが......................
サントラ盤も同レコード会社”BMG”。
是非収録して頂きたかった感がございます..........................................但し故Jon Lord未参加の模様でございますが....................
さて、「ドラムマシン部分使用」の件でございますが.............................
本編自体がそう複雑な演奏では無く、正直使う必要が有ったのだろうか?という感。
(若干複雑と言える名曲”Fire in the Basement”にしても、名手Ian Paiceの真骨頂というものですし................)
プログラム組む前にIan Paiceに演奏させれば呆気なく録音が片付くというものでございます。
疑われるのは”The Cut Runs Deep”。
タイム・キープ時の演奏が奇妙で音が揃い過ぎているという感。
タイム・キープ部でのハイハット/スネアの細かい演奏がそれに悪影響を及ぼし、部分的に差し替える事となったという感。
ハイハット音でリズム確認という感があるRitchie Blackmoreによる要望からきているという感がございますが、
嘗て「自身がソロ演奏している後であれこれと叩かれる事が嫌であった」との回想がございますが、
(多分、名手故Cozy Powellの事なのでしょうが................)
それが絡む感がございます...........................
その後(現在に至る)新生レインボウに至るまで、優秀であれどドラマーには手数を減らしリズムキープを強く強いるという感のあるRitchie Blackmore。
ここにその原点がある感がございます....................................
過去名作のアーカイブ化がジャンル問わず行われるという昨今。
Joe Lynn Turner在籍時Deep Purple二作目となる筈であった、”The Battle Rages On”改作前ヴァージョン。
高い評価を受けていると聞かれるものでございますが、陽の目を見る事があるのでしょうか..............................................
この機会に是非。