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以前より関心のある分野の資料を収集しておりましたが、生活環境の変化のため、大切にしておりました商品を出品しております。
最後までご覧いただき、ご検討いただけますと幸いです。
概要:
大正14年(1925年)に新潟県長岡市で発行された茶道宗偏流の伝書です。
長岡市の禅僧で宗偏流家元総監であった関嶺宗が中心となって編纂したもので、かつては熱心な門弟にのみに閲覧を許されていた家元に代々伝わる秘伝書を活字にして纏めて八世家元の外学宗有のが校閲し、流儀の発展を願って刊行されました。
当時としても非売品で長岡市内を中心に門弟のごく一部に頒布されましたが、その後の1945年8月1日におきた長岡空襲で版元の北越新報社は全焼し、江戸時代から代々宗偏流を修めてきた数々の名家も被災したため、その際に本書の多くが失われています。
刊行から100年近く経過しており、また二度と公開されることはないであろう門外不出の聞書きの内容を含んでおりますので、現在となっては非常に貴重な資料です。
内容:
「一巻 便蒙抄」「二巻 便蒙図式」「三巻 要録」「四巻 便蒙聞書」「五巻 盆点 天目 台子式」「六巻 具図絵」の全六巻構成です。
「一巻 便蒙抄」:88ページ
「茶道便蒙抄」の文章部分が収録されています。
「茶道便蒙抄」は流祖宗偏が利休百回忌の元禄3年(1690年)に刊行した最初の茶書で、先に出版されていた細川流や織部流に対して千宗旦の流れを汲む初の千家流の茶書として知られています。
冒頭に大徳寺二一四世の祥山和尚の序があり、本編は第一「亭主方」、第二「客方」、第三「風炉 盆立 台天目 堂庫」、第四「菓子 跡見 棚 自在」、第五「置合図」に分かれています。本巻は第四までを収録し、第五「置合図」は加筆されたものが次巻へ収録されています。
本書の最大の特徴は、元伯宗旦直門で四天王の筆頭に数えられた程の茶人であった宗偏によって、利休芻後100年の時期の千家流の茶道が余すところなく記録されていることです。特に点前に関して、現在では同じ利休や宗旦に起源をもつ三千家であれども作法が異なりますが、本書によって300年前の千家分流後の最初期の手前を窺い知ることができます。
宗偏が師である宗旦の茶をそのまま伝えているかには議論の余地があり、同じく宗旦四天王に数えられる杉木普斎が本書に異論を注釈した「普斎書入便蒙抄」も伝えられています。
本書に記されている点前と四方斎宗匠時代の宗偏流の点前を比較してみると、大きなところでは拝見盆を用いる程度しか違いがありません。流祖の点前が本書の成立によって連綿と受け継がれています。
原本は行書体で書かれているため、活字になっている本商品は格段に読み易くなっています。
「第二 便蒙図式」:114ページ
「茶道便蒙抄」に加筆された「茶道便蒙抄聞書」の図版部分が収録されています。
本書のみで独立した内容となっており、「茶道便蒙抄」の図版部分が大幅に加筆されていて、特に袋棚の図が八種、炭の図が二十種追加収録されています。
袋棚の図は初座や後座、書院における袋棚の飾り方の図で、花入や文箱、香盆等の飾り方が記載されています。また、炭の図は「流祖炭置図録」とも呼ばれるもので、流祖が廻り炭の際に置いた炭の形が書き写されており、現在の定式化された炭点前とは異なる当時の創意に満ちた発想を窺い知ることが出来ます。
点前の図版も様々なものが収録されており、四畳半以上から向切り、隅炉、逆勝手まで、多様な席の図が掲載されています。
「三巻 要録」:132ページ
「茶道要録(附利休伝)」が収録されています。
「茶道要録」は流祖宗偏が元禄4年(1691年)に刊行した2番目の茶書で、先に出版した「茶道便蒙抄」の要素が1冊に凝縮されており、他方で本書独自の茶の歴史や禅の要素も盛り込まれています。
冒頭に西山樵夫(隠居後の水戸光圀)の序があり、続いて流儀の三茶聖である利休、宗旦、宗偏の肖像があります。本編では上の「主法」で茶事から諸道具の扱い、唐物、台天目、及台子の点前が解説されています。下の「賓法」では茶の効能や逸話、茶の字の由来や禅的要素などが前半に解説され、後半は茶事の流れに合わせて露地入りから席入り、炭点前、懐石、菓子、中立、後座入り、喫茶から所望までの客作法が詳細に語られており、特に拝見に関して諸道具の見所が具体的に記述されています。
附冊として「利休伝」が加えられており、利休の孫の宗旦門下である宗偏によってまとめられた利休の伝記で、利休自刃から百年後と他の資料と比べても最初期の利休の伝記となっています。後半に「利休形諸道具之代付」が追加されていて、利休形の道具の価格が記述されており、現代の貨幣価値に換算することで当時の道具の相場を知ることができる貴重な資料です。
「第四 便蒙聞書」:230ページ
「茶道便蒙抄聞書」の文章部分が収録されています。
「茶道便蒙抄聞書」は流祖の周学宗偏が著した「茶道便蒙抄」に時習軒三代神谷松見が不審庵二世留学宗引、三世江学宗圓、時習軒初代岡村宗伯の教えを加筆したもので、神谷松見が親を早くに亡くした不審庵四世漸学宗也を指導した際に自身の斎号である陸安斎と共に本書が送られたことから、別名「陸安集」とも呼ばれています。それ以降は流儀第一の秘伝書とされていています。
本巻には加筆部分のみが収録されていますが、膨大な加筆によって分量は本編である便蒙抄の倍以上になっています。
香の扱いや軸飾の紐の扱い、風炉の灰山の作り方や長板の点前等の図版も掲載されており、一巻の便蒙抄にある流祖の簡要な記述と併読することで、流祖以降に発展した流儀の伝法を学ぶことができます。
「第五 盆点 天目 台子式」:106ページ
「陸安集」の奥伝部分が収録されています。
神谷松見が流祖宗偏の記した「茶道要録」と「茶道便蒙抄」にある盆点、台天目、及台子の記述に加筆して、両冊に分散されていた内容を「陸安集」の内の1冊にまとめたものです。点前の各章の前半に文章、後半に図版が記載されていて、1冊で秘伝奥伝とされている各点前を文章と図の双方から理解することができます。
また、唐物点と茶通箱は現在では伝物とされている流儀が多いですが、当時は伝物に含まれておらず、本書には記載されていません。台子についても当時は流儀で用いる台子は及台子のみとされていたので、真台子や竹台子に関する記述はありません。
「六巻 具図絵」:116ページ
「利休茶道具図絵」が収録されています。
「利休茶道具図絵」は流祖宗偏が元禄14年(1701年)に刊行した最後の茶書で、茶道に関する諸道具の当時の千家流の寸法が記録されています。
冒頭に歌人の山口素堂の序があり、乾坤の2巻に渡って道具の寸法と図版が収録されています。
題名に「茶道具図絵」とありますが、茶室や露地、手桶といった水屋道具の寸法が多く収録されていて、現在で一般的に言う「茶道具」の寸法はあまり収録されていません。
しかし、真の手桶、旅箪笥、袋棚(志野棚)、及台子、円香台(丸卓)のような流儀で良く用いられる指物は図入りで解説されており、小刀、巾着、塵取のような珍しい道具も図版入りで解説されています。
状態:
100年近く前の書籍ですので擦れや傷、焼けや汚れ等の経年の劣化があり、特に全巻の最後のページに毛筆での記名と、「一巻」の最後のページに何かをがした跡が、見返しにその色移りがあります。また、「六巻」の角裂に傷みがあります。
個人情報の記名以外は画像でお示ししますので、詳細をご確認ください。本文に書き込みはなく、誌面の状態は良好です。
中古品ですので、状態をご確認いただきました上でのご入札をお願い申し上げます。
本商品は終生手放さない予定でしたが、生活環境の変化により茶の湯を離れたこと、また今後復帰する予定もなく、手元に置きましても本書の価値を活かし切れないことを勘案しまして、オークションに出品して必要とされる方にお譲りする事と致しました。縁あって当方の手元に参りましたので、またご活用いただける方へお譲りできましたら幸いです。
おすすめの商品ですので、ご検討をお願い申し上げます。
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