発行 黄檗山萬福寺 全日本煎茶道連盟
昭和57年3月1日初版
編集 林雪光
約 29.5×21cm
128ページ
ソフトカバー
カラー図版5点 単色図版166点
※絶版
【主な目次】
黄檗美術について
黄檗の書について
煎茶道と黄檗文化
原色図版
単色図版
隠元所用品
木庵所用品
黄檗法系略譜
黄檗山萬福寺歴代住持
ほか
隠元禅師をはじめとする、黄檗の三筆、黄檗宗の歴代高僧と関連する書家・中国僧・画家の墨蹟・書・禅画・水墨画・屏風など、年代順に102名、166点の図版を収録。
論考テキスト、書、画像、印章、画題、画賛、黄檗物等の解説、
全作品の解説、釈文、見どころ、各作者の解説を記載。
黄檗法系略譜(系図)・黄檗山万福寺歴代住持もあわせて収録。
煎茶道には欠かせない掛軸ほか、コレクター、真贋鑑定、愛好家必携の大変有用な資料本です。
【序文より】
序に代えて
黄檗第五十七代 村瀬玄妙 (黄檗宗管長・全日本煎茶道連盟会長)
中国明来の高僧隠元禅師が、日本からの再三の招きに応じ、承応三年(1654)来朝された。
江戸時代初期、ともすれば沈滞気味の感のあった日本の仏教界に、新風を吹き込む一大事であり、特に禅風の高揚には多大の影響を及ぼしたものであった。
禅師は、当初三年の日本滞在を予定し、帰国の意志は固かったが、龍溪禅師をはじめ、多くの人々の熱心さに打たれ、京都宇治の地に新たに寺を建立し、日本滞留を決意された。寛文元年、西方丈が建ち、祝国開堂された禅師は、寺名を禅師が日本渡来まで住されていた中国福建省福州郊外にある黄檗山万福寺と同名とされて、その建築様式・伽藍配置をも模して造営されるところとなった。
隠元禅師は、単身渡来されたのではなく、多くの門弟・文化人をも伴って渡来され、その後も続々と渡来者があった。為に、明末臨済禅の正伝を流布し、その高揚に大きな力を発揮したばかりでなく、新文化の移入にも少ながらぬ影響を及ぼした。
開創された黄檗山万福寺は、多くの中国僧を中心に禅の高揚に活躍すると同時に、文化活動の一大中心ともなった。隠元禅師とともに来朝し、あるいはその後に来朝した中国僧や文化人が大いに力となり、活躍したことはいうまでもなく、また、大きな活躍を成し得たのは、隠元禅師の渡来が単身ではなく、多くの人々を伴い、また、引続いての渡来者のあったことに依るものでもある。
鎖国下にあって、黄檗僧の中国との往来は許され、その後も日中交流が続くとともに、中国文化の移入にも大いに貢献し、その文化は、「黄檗文化」とも呼ばれ、日中文化交流史上特筆されるべきものであると思う。
江戸時代初期、中国明代の文人趣味にはじまる煎茶の風習が日本に伝えられ、日本の文人だもの間に広まり、やがて一般に普及したのであるが、中国文化・中国趣味として、黄檗文化とも浅がらぬ関係にある。
中国様式の書は黄蘗の書として世に珍重され、黄檗僧がその余技として物された画は、日本の南画に大きく影響した。また、篆刻の趣味も黄檗文化の一つである。その他様々なところに足跡を残している。
初期黄檗僧の社会事業にも見るべきものがある。鉄牛は、千葉県椿沼の干拓、富士川の治水工事に活躍、了翁は、公開図書館の先駆となった観学寮を江戸不忍池畔に建て、また、鉄眼は、一切経の版木六万枚を完成している。鉄眼版一切経に使用された文字は明朝体であり、その普及に大きな足跡を残した。
多彩な黄檗文化の一端として、黄檗の書画に対する評価は、書道・南画の世界をはじめ、煎茶道の興隆とともに益々高まっている。
隠元禅師の後を受けて、黄檗山二代の席を継いだ木庵禅師の三百年忌を昭和五十八年春厳修するに先だち、その記念として、万福寺所蔵の書画等を中心に「黄蘗文化展」が企画された。黄檗文化と煎茶道への認識向上を目的とする企画であるが、その内容は、必ず大方の満足を得られるであろうと思われる。
同展の開催に併せて、その出展物を中心に「黄檗美術」として本書が世に出ることは、誠に喜ばしい限りである。展覧開催に努力された関係各位、本書出版に当られた各位に深甚の謝意を表する。
昭和五十七年正月 於甘露堂
【目次より】
序に代えて 黄檗第五十七代 村瀬玄妙
黄檗美術について 林雪光
黄檗の書について 青山杉雨
煎茶道と黄檗文化 森本信光
原色図版
隠元画像 喜多元規 筆
木庵画像 独湛 筆
布袋・慧蘭・水仙図 木庵 筆
釈迦・文殊・普賢図 逸然 筆
釈迦・文殊・普賢図 狩野守信 筆
単色図版 (主な作品名 一部紹介)
費隠 開示語 他
隠元 三字書 大殿拈香偈 五字書 他
慧門 五言律詩
木庵 写経 五種草木図 寿蔵額 対聯原書
即非 五字書 二字書
慧林
龍溪
独湛 五字書 梅花図
大眉
南源
独照
独吼
独本
独立
道者
未発
黙子 布袋図題
逸然 一列祖図 羅漢図
蘊謙
無心
高泉 五字書 他
トウ玄
鉄牛
彗極
潮音 五字書
悦山 山水図 茶云々書
鉄文
良寂
実伝
慈岳
鉄眼 露云々書
喝禅
鉄崖 鉄鉢図
鉄心 松石図
梅谷 五字書 六蘭図
雪機 布袋図
宝洲
法雲
千呆
柏巖 観音図 五言律詩
桂巖
化林
若一
惟一
別伝 寿字(双幅)
香国
御水尾天皇 画像 仏舎利讃
梅嶺
悦峰
鶴洲
月潭
雪广
大随
了翁
卓峰 寒山拾得図
東瀾
鶴搏
月海
百拙 松竹梅図
大潮
旭如
蘭谷
杲堂
百癡
終南
喝浪
道本
竺庵
悟心
全巖
伯珀
大成
蒲庵
鶴亭
弥峰 雪中竹図
忍僊
大鵬
聞中 蘆雁図
陸治 老松図
林宗漢 梅雀図
張瑞図 七言絶句
王振鵬 五百羅漢図
陳賢 観音図 列祖図
張潜夫
鄭彩 七言律詩
李一和 花鳥図
范道生 弥勒菩薩像 七言律詩 他
狩野守信 (狩野探幽) 達磨・徳山・臨済図 維摩・紅・白梅図
狩野安信 寒山拾得図 観音・文殊・普賢図
狩野益信 羅漢図
河村若芝 羅漢図
楊道真 隠元画像 他
喜多宗雲 隠元倚騎獅像
喜多元規 隠元画像 即非画像
元高 梅谷画像
元瑤 観音図
酒井忠勝 尺牘
勝性印 隠元又録 書状
伊藤若冲 蒲庵画像
柳沢吉保
荻生徂徠
近衛家煕
隠元所用品 法衣・琥珀念珠・払子・香蓋・香炉盤・袖炉・枕頭・硯筥・蝉型硯・発覚月輪硯・印章・四家字帖 他
木庵所用品 袈裟・誌公帽子・払子・念珠・書画禅冊葉 他
董其昌 五言絶句
李一白
沈昭 山水図
文徴明 山水図
黄檗法系略譜(系図)・黄檗山万福寺歴代住持
あとがき 林雪光