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50年程度前に作られたこのアンプ。感心しますね。
この大きさのケースにプリとパワーアンプを効率よく収めています。配線引き回しも多いのですが、歪も、残留ノイズも少なく優秀なアンプです。
残念ながら出力管の50CA10は設計に無理があって、4本使用のこのアンプで、そろって10年間故障なしで動いた個体は少なかったように思います。
取扱いも難しく、一般ユーザーがウッドケースからアンプを引っ張り出し、テスターでバイアス調整をするのもなかなか難しかったのではな
いかと想像します。ましてや使用中に1本の50CA10が昇天してしまったら、アマチュアには手の施しようがなく、そのまま物入に入れられたまま50年というケースも多かったのではないかと思います。
現在それらのアンプがどんどん中古・ジャンクでオークションに登場しています。本当に売れたのでしょうね。
今回は、市場でも中古しか入手できないオリジナルの50CA10から、一般的に入手可能な優秀な出力管に変更し、将来的にも継続して使用できるように、手を加えました。
【オリジナルからの変更点】
・電源トランスの新規製作
・出力トランスを断線の多かったOY-15-5 からOY-15-3.5KHPへ変更。挿入損失が少なく小音量時でも、明瞭に聴こえます。
・出力管のみ米国GE社の6L6GCへ変更
・調整のむずかしいバイアスを固定バイアスから、メンテナンスフリーのセルフバイアスへ変更、一部抵抗の変更
・プリアンプ部及びパワーアンプ部のカップリングコンデンサをフィルムコンへ変更(松下製箔フィルム、ニチコンPP)
・SP端子をバナナプラグ仕様に変更
・ACインレットを3端子仕様に変更
・ACコード付属
【メンテナンスについて】
・サイン波、方形波を入力し、正常動作していることを確認しました。SP端子でのノイズも左右ともに1.0mV以下です。
・セルフバイアスに変更し、メンテナンスフリーにしたからと言って、全く監視しない訳にはいきません。バイアス電圧確認用の端子をシャーシ上面、出力管の裏に設けました。網状のボンネットを取れば端子に届きます。ここの電圧が26V前後であれば正常に動作していることになります。この電圧が20Vを切ると、エミッションが減退しているので、出力管を交換すればよいことになります。
【LX380とのとの対比】
サステナブルモデルをよくみると、同じ38シリーズのLX380に似ています。同じ6L6GC(ロシア製?)を使用しています。
両者の違いはLX380はプリント基板に回路が実装されている点です。以前から回路の断面積と流れる信号電流のことを考えていました。
同じ信号でも断面積が大きいほど、余裕が出て音の出方も違ってきます。このことを指摘されているアマチュアのかたもいます。
たとえばプリントパターンで比較的幅が広いと思われる3ミリ幅の回路分部を考えますと、その段面積は銅箔の厚みを35μとすれば、0.1mm2となります。一方38FDなどのリード配線方式ではパーツのリード線の直径をΦ0.8mmとすれば断面積は0.5mm2となり、5倍もの差になります。
これを人間に例えると乗車率40%の列車に乗るのと、200%の寿司詰め状態で揺られていくのと、どちらが体力的消耗が大きいかということになります。
コストダウンのため現代のメーカー製アンプは殆どがプリント基板を採用しています。私自身、自作アンプはリード線と端子を使った配線方式をとっています。ただ、それほど音の違いは無いし、わからないという方も入らっしゃるでしょう。それはそれで結構だと思います。
サステナブルアンプは、電源トランスのレギュレーションの制約もあり出力はUL接続で18W+18W (1KHz 歪3.0%)になります。
接点部のメンテナンスによりノイズ、ガリはありません。前面パネル、ツマミ類はある程度洗浄しました。近代的ハイファイアンプに蘇りました。
但し50年選手ですのでウッドケースのダメージや背面パネル、内部のケースにはところどころサビ、キズ等があります。
以降、不具合が発生した場合には、運送費、パーツ代をご負担いただければ、当方で対応いたします。但し手を加えて回路を変更した場合はこの限りではありません。
ご興味のおありの方は、この機会に入手をご検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。
(2025年 3月 2日 1時 13分 追加)出音について説明しておきます。
米国General Electric社の6L6GCの採用と、OY15-3.6KHP(低挿入損失仕様)の採用。
更にはプリアンプ部に70年代の国内メーカー品に多く使用された、松下電器製の箔フィルムコンデンサ(元気がよく情報量が多い)に変更しているため、トータルで品位とレベルの高い、美しい音で鳴ります。
オリジナルの38FDはもちろん、LX380(プリント基板実装。ロシアもしくは東欧製の、ハカマの部分に段差がある6L6GCを使用)にも負けない音質で鳴ります。
50CA10がなくなれば、SQ38FDも使命を終えてしまいます。
サステナブルアンプの音を、出力管の供給不安も関係なく、将来にわたりずっとお愉しみください。