
自宅保管の品です。中身は大変美品ですが古いものですので、表紙や帯など若干の経年変化はございます。ご理解頂ける方にご検討をお願い申し上げます。
谷 充代
高倉健の図書係 名優をつくった12冊
高倉健、没後10年
「山本周五郎の本、手に入らないか」。高倉健は常に本を求める俳優だった。撮影現場や仕事のあい間、取材のかたわら健さんが求める本を探して調達する「図書係」がいた。時代小説の人情、白洲正子の気風、三浦綾子の「死ぬ」という仕事―― 名優の演技と生き方を築き上げた、数々の書籍。30年間本を探し続けた編集者が、健さんとの書籍を介した交流を明かす。
【目次】
第一章 擦り切れた背表紙
健さんの「図書係」
山本周五郎『樅ノ木は残った』『ちゃん』
檀一雄『火宅の人』
山口瞳『なんじゃもんじゃ』
第二章 死ぬという最後の仕事
三浦綾子 最後のインタビュー
三浦綾子『塩狩峠』
三浦綾子『母』
第三章 人生の持ち時間
五木寛之『青春の門 第一部筑豊篇』
森繁久彌『あの日あの夜 森繁交遊録』
池波正太郎『男のリズム』
第四章 旅の流儀
白洲正子『夕顔』
伊賀、京都、熊野を歩く
白洲正子『かくれ里』
第五章 本名でいられた場所
健さんからの手紙
健さん片想いの会
「お母様との暮らし、悔いのないように」
第六章 託されたカセットテープ
長尾三郎『生き仏になった落ちこぼれ 酒井雄哉大阿闍梨の二千日回峰行』
柔らかな光を放って
高倉健の源泉
レビューより
三浦綾子さんの章に感涙
高倉健さんが三浦文学にどんなにか心を寄せていたであろう。綾子さんの逝去の報を知り、健さんは、「綾子さんが亡くなったね」と旭川美瑛の丘に立つ著者に話しかける下り。感涙しました。
1980年代半ばから2000年代まで高倉健をめぐって様々な取材活動をする。また、三浦綾子、白洲正子の取材もして、この本にその内容も書かれている。
30年間「山本周五郎の本、手に入らないか」と言われて、「健さんの図書係」を務めた谷充代の目線からその高倉健の生き様を描く。高倉健には「生き様」という言葉が似合う。
日本の男性俳優としては、聳り立つ俳優だ。日本人に生まれてよかったと高倉健であるが、日本の男はこうあるべきだという手本でもあった。厳しさの中の優しさ、寡黙さに秘めた熱情、どこまでも誠実で真摯、その上謙虚である。男の人間像を凝縮した男だった。
高倉健は「読んだ活字が芝居に出る」という。高倉健は本にこだわる俳優だった。
高倉健が愛読した本は、以下の本だった。私が読んでない本が多かった。読んだ本は『青春の門』『男のリズム』だけだ。三浦綾子の『母』は、小林多喜二の母親の物語と知って、早速買い求めた。
山本周五郎『樅ノ木は残った』『ちゃん』
檀一雄『火宅の人』
山口瞳『なんじゃもんじゃ』
三浦綾子『塩狩峠』『母』
五木寛之『青春の門 第一部筑豊篇』
森繁久彌『あの日あの夜 森繁交遊録』
池波正太郎『男のリズム』
白洲正子『夕顔』『かくれ里』
長尾三郎『生き仏になった落ちこぼれ 酒井雄哉大阿闍梨の二千日回峰行』
この本の中には、高倉健の気に入った言葉が多く並べられている。
「火を放たれたら手で揉み消そう、 石を投げられたらで受けよう、 斬られたら傷の手当てをするだけ、どんな場合にもかれらの挑戦に応じてはならない、 ある限りの力で耐え忍び、耐えぬくのだ。」山本周五郎『樅ノ木は残った』
「身についた能の、高い低いはしようがねえ、 けれども、低かろうと、高かろうと、 精いっぱい力いっぱい、 ごまかしのない、いつわりのない仕事をする、 おらあ、それだけを守り本尊にしてやって来た」山本周五郎『ちゃん』
「島のあるところ雲あり。人のいる所呑み屋あり。男のいるところ女あり。女のいるところ涙あり」山口瞳『なんじゃもんじゃ』
「わだしは小説を書くことが、あんなにおっかないことだとは、思ってもみなかった。まさか小説を書いて殺されるなんて」(小林多喜二の母)三浦綾子『母』
高倉健は三浦綾子のことを聞いて
「人間って弱いからな。なかなか立ち直れない時があるよ。綾子さんの本の中にもいろいろな人間が出てきて、喘ぎながら乗り越えていく。それが俺に希望を与えてくれるんだよ」