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サンスイの銘機中の銘機「AU-α907i MOS LIMITED」です。
当方、元オーディオメーカーのホームオーディオのサービスマンをやっていました。これまで様々なアンプ類を手掛けてきました。サンスイの魅力に魅了され、本機を手に入れた次第でした。自分で末長く使うためにメンテナンス作業を行いましたが、家庭の諸事情により残念ながら手放すことになりました。
<作業内容>
①入力セレクター、RecOutセレクター、パワーアンプモード切り替えスイッチ、TONEやMUTEなどのプッシュスイッチ、MM/MC切り替えスイッチなど、接点劣化を起こすスイッチは全て取り外し、分解による表面研磨、洗浄、接点保護を実施。ダメージを与える接点復活剤のような簡単に済ます処理は一切行っておりません。
接点保護は、サンハヤトの接点グリースを塗布。
②基板全てを外し、半田割れ箇所の点検および再半田を実施しております。電流が多く通るトランジスタの足などは半田が割れやすく、実際に半田が割れていました。追い半田ではなく、劣化した古い半田は吸い取り、今後半田割れが起こりにくいよう足を曲げ基板にがっちり固定できるようにし再半田を実施しております。
また、パワーアンプブロックの基板はMOS-FETを一度外さないといけません。素子としてオープンになり、裸のままだと静電破壊を起こします。サービスマニュアルに指定のある通り、メーカー指定の室温と湿度を作り、外されたMOS-FETは指定通りアルミホイールで静電保護した上で、基板のオーバーホール作業に入っております。この手の静電破壊は、即不良ではなく、経過時間と共にじわじわと起こる可能性が高く、使っているうちにパワーMOSが故障なんてことが起こらないようにメーカー指定通り作業をしております。
③音声基板の電解コンデンサのESR(簡単に言えば交流抵抗)と静電容量を専用テスターにて確認しております。巷では闇雲に全ての電解コンデンサを交換する場合があるようですが、アンプのサンスイの技師が部品選定したものを全て交換してしまっては、せっかくのサンスイサウンドが台無しです。オリジナル遵守が私のモットーで、部品メーカー推奨の20%誤差が認められる場合のみ交換していますが、さすがサンスイのリミテッドモデルだけあって、コンデンサも当時の性能を維持しておりましたので、あえて交換はしておりません。
④パワーアンプブロックの中型コンデンサに貼付されたボンドが、周りの部品へ腐食を発生させていました。全て取り外し腐食箇所の部品の交換または修繕を行なっております。ボンドもできるだけ基板に傷つけないように完全除去しております。
⑤出力リレーは、スイッチングによるスラッジが接点に付き、経年と共に接点抵抗が増してきます。SPターミナルを外し、リレー2個の分解による、接点研磨、洗浄、接点保護をしております。作業前は数百kΩ以上ありましたが、作業後はゼロΩを確認。またONKYOアンプで行なっているリレーのカバーとの接合部に封印のテープを貼り、酸化防止処理をしております。
SPターミナルは、こちらもオリジナル遵守のためバナナ端子などへの改造は行なっていません。本機のSP端子は、ネジによる圧着ですが、その接点も微粒子コンパウンドで表面の錆や汚れを落としており接点状況は良いと思います。
RCA端子も経年による白サビが出ておりましたので、部品取り外し専用治具で金属面の研磨による美化をしております。AU-α907i MOS LIMITEDは金メッキも厚く、金メッキが薄くなるような状況ではありません。洗浄後に金属面の保護コーティングをしております。
ホーンジャックも接点表面の研磨、洗浄を行なっております。
コンセントの刃の部分も研磨クリーニングを実施。
⑥AU-α907i MOS LIMITEDは非常に良いボリュームを使用しており、5連ボリュームです。経年でのガリがありましたので、完全分解してガリの原因を除去、洗浄しております。ボリューム単体でジェネレーターにて基準信号を入れ、測定器で左右差の確認(ギャングエラー)と共にガリが発生してないことを確認。
他のTONE系のボリュームやバランスボリュームもガリ除去洗浄を行なっております。(センタークリックは、若干感触が弱めです。品があるしなやかさがあると言えばその通りですが)
なお、バイアス調整などに使っているトリマーは、劣化がありませんでしたので、あえて交換しておりません。
⑦内部の徹底的な清掃をしております。またこの年代になると、銅メッキシャーシの腐食など散見されますが、目立つ錆は一切ありません。
水溶きパネルで有名なフロントパネルですが、こちらも分解し極極超微粒子コンパウンドで長年の手垢やくすみを落とし、専用のワックスコーティング材で美化しております。サンスイロゴも錆て輝きがありませんでしたので、美化作業をし当時のロゴの輝きが戻っていると思います。
⑧サイドウッドは左側の下の角に、突板が剥がれた箇所がありましたので、同色の木目シートをカットし貼り付け、その後油性ニス(2色調合)し段差含め補修しております。オーディオラックに入れてパッと見ると分からないと思います。ちょい傷が数箇所あり全体的には少し使用感はあります。ただ正面から見れば、LIMITEDモデルの風貌は綺麗な状態を維持できています。
銅製フットですが、底面が金属の地肌になっており(サンスイはフット部のクッション材が特にない)オーディオラックなどに傷をつけてしまう可能性もありますので、素材を吟味してフェルト材の抜き型で作成しております。この重量級のアンプをラックにインストールする場合、クッション付きになりますのでずらしながら奥に入れることが簡単にできます。
⑨サービスマニュアル指定のバイアスやオフセットなど、再調整を実施しております。非常に安定しております。
周波数特性も20Hz〜20kHzまでフラットに出ております。
歪み率については、インテグレーテッドモードではL-ch:0.0017%/R-ch:0.0015%、パワーアンプモードではL-ch:0.0012%/R-ch:0.001%となっております。(いずれも8Ω時。計測はNational製オーディオアナライザVP-7720Aを使用)
⑩写真にもある通り、細かい傷は数箇所あります。できる限りレタッチして見えないように工夫しております。
ラックに入れて使用していました。動作、出音とも全く問題ありません。5年10年使えるメンテナンスができたと考えております。
音について個人の感想ですが、音の深さが非常にあり空間が広く、その中でも音一つ一つが際立って綺麗な音が出るなと思いました。JBLの38cmユニットLE-15A/ALTEC806Aも軽々と美音で鳴らしてくれました。
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中古品なので基本NCNRではありますが作業には自信を持っていますので、半年の保証をおつけします。何かあれば無償修理で対応させていただきます。
タバコ臭、ペット臭はございません。
1000台限定のLIMITEDモデル、この際にいかがでしょうか?