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あさのあつこ★弥勒の月1~4★ 光文社文庫
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★商品説明★ あさのあつこ著 「弥勒の月1~4」 光文社文庫

 「弥勒の月」          2008年 8月 文庫初版
 「夜叉桜」           2009年11月 文庫初版
 「小練柿」           2012年 1月 文庫初版
 「東雲の道」          2014年 8月 文庫初版
      定価    571円~660円+税  312頁~380頁

★著者略歴★  1954年、岡山県生まれ。青山学院大学文学部卒業。小学校講師の後、作家デビュー。「バッテリー」で野間児童文学賞。「バッテリーⅡ」で日本児童文学者協会賞。「バッテリーⅠ~Ⅵ」で小学館児童出版文化賞。

★作品内容★  青春小説”バッテリー”でデビューした著者の初めての時代小説。
 岡っ引きの伊佐治は”仏の”と異名をとるほどの善人。20の時から岡っ引きをしているが、女房と息子と嫁が守る料理屋は、そこそこに流行っていて、あくどい袖の下を取らなくとも務められる。でも最近、岡っ引きの手札を返そうかとも悩むことも多い。先代に仕えて30年、後を継いだ同心の木暮信次郎は、若いがそれなりに手柄を立てている。けれど、どうにも冷たい。怜悧というのだろう。なんか捕物に血が通っていないようにも思える。
 <弥勒の月> 身も凍る時期に川に飛び込んで死んだ女がいた。目撃者たちの話からすると確かに身投げらしいのだが。身元確認にやってきた小間物屋の亭主は、一分のすきもない。信二郎が放つ殺気にも冷たく受け流す。けれど、本当に身投げなのか調べて欲しいという。信次郎は身投げより、その亭主の方に興味を引かれたようだ。確かに自分から川に飛び込んだようだが、その後目撃者たちが殺され、亭主・清之助の周りで不審な事件が相次ぐ。清之助とは何者か。そして身投げの真相は。10年前から続く辻切りの真相や、清之助の過去が明らかになって事件が終焉する。
 <夜叉桜> 作者は1巻で終わりにするつもりもあったようだが、一巻だけでは語りつくせないものがあり続編が書かれた。一月で3人もの女郎がのどを斬られて殺された。その3人目の女郎が持っていたのは遠野屋の売った簪、若い手代の信三が幼馴染のおいとに安く売ってやったものだ。遠野屋のことになると、むきになる同心の信次郎は早速、遠野屋に乗り込む。普段は感情を表に出さない清之助だが、ちらと怒りを見せた。必死に生きようとする若い娘の命を無残に奪う、犯人の狂気に怒りをにじませたのだ。闇の世界から表の商人として生きることを決意した清之助、自分にも世界にも感情に沸き立つことができない信次郎。二人を見守り岡っ引きの伊佐治。第1巻では、事件や過去を書くことが多く、彼らを深く描ききれなかった著者がじっくりと彼らの内面を描いてゆく。過去の闇から手を伸ばされた清之助、知らずにや社とかかわりを持った信次郎。狂気に取り込まれてゆく殺人鬼と、それに取り込まれない二人もまたある種の狂気の世界にいるのかもしれない。伊佐治がいう。”弱くて情けなくて自分にすぐまけそうになって…そんな奴の方がいざとなったら信じられる気がしやす。”
 <小練柿> シリーズ第3弾。シリーズ初の短編集。前巻で引き取った幼子を養女とした清之助。平穏な日々を送ろうとしているが、彼の周りには事件を引き寄せる磁場があるのか。乾いている同心・信次郎と元闇の人間・清之助の物語は続く。「楓葉の客」赤ん坊のおこまを養女として迎えた遠野屋。おこまが熱を出して振り回されていたが、女中頭のおつるの昔の知り合いだといって言い寄る若い男がいた。おつるはおこまに夢中で相手にもしないが、清之助や信次郎はその仕掛けを見破る。「海柘榴の道」前巻で若い跡取りたちが集まって始めた”合わせの会”仲間の一員が事件に関わっていたので取りやめになっていたが、それを復活させたいという。それを目前に、2代目の若主人が殺しの疑いで捕まる。頑固な先代や、いつも口げんかしている幼馴染などの気持ちが伝わる。「宵に咲く花」伊佐治の女房が営む梅屋。嫁のおけいは子供のころ夕顔の花を見て熱を出したことがある。近道しようとして神社を抜けようとして破落戸に絡まれる。清之助に救われるが、伊佐治や信次郎は黙っていない。ごろつきの親の店の主を締め付ける。「小練柿」清之助の姑のおしんは、おりんが亡くなってからまだらボケのようになっていたが、おこまが引き取られてから少し良くなっていた。たまに清之助とおりんが出会った頃のことを思い出す。そんな時おこまが攫われた。皮肉屋で人の不幸など全く気にも留めないような信次郎だが、その探索の腕は本物。
 <東雲の途> 長編。シリーズの一つのクライマックス。前巻で信次郎から、清之助の弱点は、守ろうとするものができたこと。それを利用して再び清之助を闇の世界に引き込もうとするものが現れるのではないかと指摘される。そんな中、町人に扮した武士が斬られた腹の中に、あるものを隠した水死体で見つかった。その者とは瑠璃。また清之助も育ててくれた老女にもらったお守りの中から瑠璃のかけらを見出す。二つの繋がりとは、過去と決別するために清之助は、岡っ引きの伊佐治と共に生まれ故郷の西国を目指す。
 シリーズ物には二つのタイプがある。一つは土台がしっかりしていてその上に築かれてゆくので、派手に事件を盛り上げなくともしっかり読めるもの。もう一つは、シリーズの登場人物が共通することでその上に事件を重ねるもの。後者の場合は、読みやすく、どの一冊からでも一気読みできる。このシリーズは前者にあたる。しっかり作られているので1冊づつでも読めるが、前の巻を読んでいると、もっと奥深い読み方ができるのだ。

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