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F1682【侘び寂びの極み】大粒クリソベリルキャッツアイ10.33ct 天然上質D0.95ct 最高級Pt900無垢R S16号 重量9.95g 縦幅18.0mm
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--- ### **一筋の光、時の涯て** **序章:寂寞の遺品** 佐倉美緒は、祖母が遺した桐の箪笥の、一番下の引き出しの奥に、それを見つけた。黒いベルベットの古びた小箱。開ける前から、ずしりとした重みが、ただのアクセサリーではないことを告げていた。蓋を持ち上げると、息を呑むほどの静謐な輝きが、埃っぽい部屋の空気を浄化するようだった。 プラチナの台座に鎮座するのは、大粒の、深い森の湖を思わせる石。一見すると、地味な暗緑色だ。だが、窓から差し込む午後の光がその表面を撫でた瞬間、石の奥から、まるで猫の瞳孔が開くように、鋭く、それでいて柔らかな一本の光の筋がすうっと浮かび上がった。クリソベリルキャッツアイ。その両脇と周囲を、放射状に配置されたバゲットカットのダイヤモンドと、小さな星々のようなラウンドブリリアントカットのダイヤモンドが、厳かに、しかし華やかに取り囲んでいる。まるで、夜空に浮かぶ謎めいた惑星と、それを取り巻く銀河のようだ。 美緒は都内の美術館で働く学芸員だ。古美術、特に桃山時代の茶道具を専門とし、その時代の「侘び寂び」という美意識に心惹かれてきた。だが、理想と現実は違う。日々の業務は企画書と予算調整に追われ、人間関係の軋轢に心をすり減らす毎日。かつてあれほど情熱を注いだ美の世界が、今はガラスケースの向こう側にある、手の届かないものに感じられた。心が、乾いてひび割れていくような感覚。 祖母は、質素で、いつも穏やかに微笑んでいる人だった。こんな豪奢な指輪を持っているなんて、想像もつかなかった。鑑定書には「天然クリソベリルキャッツアイ 10.33ct」「天然ダイヤモンド 0.95ct」「Pt900」と記されている。その数字の大きさに、美緒はめまいを覚えた。祖母は一体、誰からこれを? 何を想って、これを箪笥の奥にしまい込んでいたのだろう。 答えの出ない問いを胸に、美緒はそっと指輪を薬指にはめてみた。ひんやりとしたプラチナの感触が肌に馴染む。サイズは、あつらえたようにぴったりだった。指輪の重みが、まるで自分の存在の重さのように感じられる。ふと、石の中の光の筋が、ゆらりと揺らめいた気がした。それは、美緒の心の奥底を、静かに見据えているようだった。 「侘び寂びの、極み…」 誰に言うともなく、言葉がこぼれた。華やかでありながら、その中心には深い静寂と翳りを宿している。矛盾した要素が、完璧な調和のうちに共存している。これこそ、利休が追い求めた美の世界ではないか。 数日後、美緒は担当する企画展の準備のため、閉館後の美術館の茶室にいた。再現された待庵風の、二畳の小さな空間。障子から差し込む月明かりが、畳の上に淡い影を落としている。作業を終え、一人になった美緒は、静寂の中で自分の指に光る指輪を眺めていた。祖母のこと、自分のこと、未来のこと。様々な想いが胸を去来する。 どうして、こんなに心が渇いてしまったのだろう。あれほど好きだったはずの仕事が、今は重荷でしかない。人を信じることが、怖い。美緒は、指輪の石に語りかけるように、そっと指で表面をなぞった。 その瞬間だった。 石の中の一条の光が、閃光のように強く輝いた。びりびり、と空気が震えるような感覚。視界がぐにゃりと歪み、畳の匂い、古木の香りが、むせ返るほど濃密になる。強い眩暈に襲われ、美緒は思わず目を固く閉じた。立っていられず、その場に崩れ落ちる。意識が、遠のいていく。まるで、深い井戸の底へ、ゆっくりと沈んでいくかのように。 **第一部:天正の邂逅** 次に目を開けた時、そこにコンクリートの壁も、蛍光灯の光もなかった。 土壁の匂い。いぶされたような、独特の香り。障子の向こうから聞こえるのは、車の騒音ではなく、馬のいななきと、人々のざわめき。身にまとっているはずのパンツスーツは、いつの間にか、小袖のような簡素な着物に変わっていた。 混乱の極みにあった美緒の前に、一人の男が静かに座っていた。年の頃は四十代半ばだろうか。日に焼けてはいるが、その顔には深い思慮と、どこか常人離れした鋭さが宿っている。無駄のない、洗練された所作で、彼は目の前の風炉から柄杓で湯を汲み、茶碗へと注いだ。 「…ここは?」 かろうじて絞り出した声は、自分のものではないように掠れていた。 男は顔を上げ、美緒を真っ直ぐに見た。その眼差しは、すべてを見透かすような、静かで深い光を湛えていた。 「ここは、わしの茶室じゃ。気を失っておられた故、ひとまずここへ。お名前は?」 「み、お…佐倉、美緒と申します」 「みお殿、か。異国の響きじゃな」 男はそう言うと、手にした茶筅を澱みない動きで振り始めた。しゃっしゃっ、という心地よい音が、静寂な空間に響き渡る。美緒は、その一連の所作から目が離せなかった。まるで、一つの完璧な舞を見ているようだ。その男の佇まい、雰囲気。美術館の資料で、何度も、何度も見た肖像画が脳裏をよぎる。まさか。 「失礼ですが、あなた様は…」 「わしか。人は、わしのことを宗易(そうえき)と呼ぶ」 宗易。千利休が、まだ名を改める前の呼び名。心臓が、大きく跳ねた。ここは、天正年間の、京都。自分は、あの千利休の前にいる。信じられない現実を前に、美緒は言葉を失った。 利休は、練り上げられた濃茶を、すっと美緒の前に差し出した。黒く、つややかな楽茶碗。その不均一な形、作為のない歪みに、美緒は吸い込まれそうになった。 「まずは、一服。心を落ち着かせなされ」 促されるまま、美緒は茶碗を手に取った。ずしりとした土の重みと、温もり。恐る恐る口をつけると、深く、複雑な苦味と、その奥にある甘みが、乾ききった心にじんわりと染み渡っていく。涙が、こぼれそうになった。それは、ただの飲み物ではなかった。一杯の茶に込められた、亭主の心そのものだった。 飲み干した美緒が顔を上げると、利休の視線が、彼女の左手の薬指に注がれていることに気づいた。 「その指輪…」 利休の声には、かすかな驚きと、強い興味の色が混じっていた。 「見事な石じゃな。夜の闇を裂く、一筋の光明の如し。されど、その輝きは、ギラギラとした欲の光ではない。静かで、深い。まるで、迷える人の心を見透かす、真実の眼(まなこ)のようじゃ」 彼は、美緒の指輪に、一目でその本質を見抜いていた。美緒が「侘び寂びの極み」と感じた、あの感覚。この時代の、しかも利休本人が、同じように感じている。時を超えて、美の価値観が共鳴した奇跡に、美緒は打ち震えた。 「この石には、物語がある。そうであろう?」 「…はい。祖母の、形見です」 利休は深く頷いた。 「持ち主の想いを吸い、石は輝きを増す。その輝きは、次の持ち主の道を照らす。そなたが、わけもわからずこの時代に迷い込んだのも、その石が導いたのかもしれぬな」 利休は、美緒を自身の屋敷にしばらく置くことを決めた。記憶を失い、身寄りのない娘ということにして。彼の庇護のもと、美緒の奇妙なタイムスリップ生活が始まった。 利休の屋敷には、様々な人々が出入りしていた。中でも、美緒の心に強く印象を残したのは、三人の人物だった。 一人は、利休の娘、お吟。美緒とさほど年の変わらない、聡明で美しい娘だった。彼女は、父である利休の茶の湯を誰よりも深く理解していたが、同時に、その求道的な生き方の影で、女性としての幸せや自由な生き方を心のどこかで渇望しているように見えた。未来から来たという美緒の(常識はずれな)言動や、自由な精神に、お吟は戸惑いながらも強く惹かれていった。 もう一人は、利休の一番弟子ともいえる武将、古田織部。彼は、利休の静謐な「侘び」の茶を尊敬しつつも、もっと大胆で、奔放で、常識を打ち破るような「破れ」の美を求めていた。織部は、美緒の指輪のデザインに衝撃を受けた。中心の丸いカボションカットの石を、直線的なバゲットカットのダイヤモンドが放射状に取り囲む意匠。静と動、柔と剛。相反するものが一つの調和を生み出している。 「面白い! まことに面白い意匠じゃ! この歪(ひず)み、この破調こそが、新しい美を生むのじゃ!」 織部は興奮してそう叫び、美緒の指輪を食い入るように見つめた。その瞳は、新しい創造への野心に燃えていた。 そして、細川忠興。利休七哲の一人に数えられる、知的で怜悧な大名。しかしその内には、妻であるガラシャへの激しい愛と嫉妬、そして時代の流れに翻弄される苦悩を抱えていた。彼は、利休の茶室にだけ、心の安らぎを求めてやってくる。彼は美緒の指輪を見ると、ふと、遠い目をした。 「その石の光は、まるで闇夜に瞬く星のようだ。届かぬと知っていても、手を伸ばしたくなる…」 その言葉は、彼の妻ガラシャに向けられているようにも聞こえた。 入り組んだ人間関係。茶の湯の道を巡る、それぞれの思惑と哲学。そして、織田信長亡き後の天下を掌握しつつある、羽柴秀吉という巨大な権力の影。美緒は、自分がとてつもない時代の、その中心に迷い込んでしまったことを、改めて実感するのだった。 **第二部:一服に宿る心** 利休の屋敷での日々は、美緒にとって驚きと発見の連続だった。彼女が本や資料でしか知らなかった「侘び茶」の世界が、生きた哲学として、日々の暮らしの隅々にまで息づいていた。 ある朝、美緒が目を覚ますと、利休が庭で黙々と作務に励んでいた。彼は、ただ黙々と落ち葉を掃き、苔を整えている。しかし、その動きの一つ一つに無駄がなく、まるで神聖な儀式のように見えた。 「美緒殿。茶の湯は、茶を点てることだけがすべてではない」 美緒の視線に気づいた利休が、静かに言った。 「客人を迎えるため、幾日も前から庭を清め、茶室をしつらえ、花を生ける。どの道具を取り合わせるか、どの茶を供するか、心を砕く。そのすべてが、茶の湯なのじゃ。一期一会。今日、この時の出会いは、生涯に一度きり。そのために、わしは持てる心のすべてを尽くす」 美緒は、現代で自分が失いかけていたものを、その言葉の中に見出した気がした。効率や成果ばかりを追い求め、一つ一つの仕事、一人一人の出会いを、どれだけ大切にしていただろうか。利休の生き方は、美緒の乾いた心に、静かな問いを投げかけていた。 その日の午後、利休は美緒を茶室に招いた。客は美緒一人。二畳の狭い空間は、濃密な静寂に満たされている。床の間には、一輪の白い椿が、まるで自ら光を放つように生けられていた。 「今日は、そなたのためだけに茶を点てよう」 利休は、ゆっくりと点前を始めた。釜の湯がしゅうしゅうと鳴る音だけが、室内に響く。それは「松風」と呼ばれる、茶人たちが最も愛した音。美緒は、その音に耳を澄ませながら、利休の流れるような所作に見入っていた。 やがて差し出された一服。その日の茶は、以前のものとはまた違う、柔らかく、清々しい味わいがした。 「いかがかな」 「…とても、美味しいです。なんだか、心が洗われるようです」 利休は、満足そうに微笑んだ。 「そなたの指にある石。その光は、いつも同じではないな。そなたの心が晴れている時は強く、澄んだ光を放ち、心に曇りがある時は、どこか翳りを帯びて見える」 美緒は、はっとして自分の指輪を見た。確かに、ここに来てから、石の表情が豊かになった気がする。 「石も、人も、同じことよ。完全なものなど、この世にはない。欠け、歪み、移ろいゆく。じゃが、その不完全さの中にこそ、真の美が宿る。そなたがいた未来とやらは、いかなる世か知らぬが、もし人々が完全なるものを求め、心をすり減らしているのなら、それはまことの豊かさとは言えぬだろう」 利休の言葉は、美緒の胸の奥深くに突き刺さった。完璧なプレゼン、完璧な人間関係、完璧な自分。そうしたものばかりを追い求めて、自分自身を、そして周りの人々を、どれだけ追い詰めてきただろう。 「この茶碗も、そうじゃ」と利休は、手にした黒楽茶碗を美緒に見せた。「一つとして同じ形のものはない。この歪み、この釉薬のむら。これがあるからこそ、この茶碗は、この世にただ一つの存在となる。侘びとは、不足の美。寂びとは、古びて枯れたものの中にある、奥深い趣。それらを受け入れ、慈しむ心こそが、茶の湯の心なのじゃ」 美緒は、涙が止まらなくなった。渇ききっていた心に、利休の言葉と、彼が点てた一服の茶が、温かい雫のように染み渡っていく。自分は、不完全なままでいいのだ。欠点だらけの自分を、そのまま受け入れていいのだ。そう思うと、長年背負ってきた重い荷物を、ようやく下ろせた気がした。 そんな美緒の変化を、周りの人々も敏感に感じ取っていた。 お吟は、以前よりも柔らかい表情になった美緒に、そっと打ち明けた。 「父は、茶の湯の鬼です。その道のためなら、家族すらも顧みない。私は、そんな父を尊敬し、同時に、恐ろしくもありました。でも、美緒様を見ていると、わかるのです。父が追い求めているのは、ただ厳しいだけの世界ではないのだと…」 美緒は、お吟の手を握った。 「お吟さん。あなたの優しさは、きっと、利休様の心を支えています。形は違えど、あなたもまた、茶の湯の心を持っているのだと思います」 二人の間には、時を超えた友情が芽生えていた。 一方、古田織部は、美緒の指輪のデザインから得た着想を元に、新しい茶碗の創作に没頭していた。わざと器を歪ませ、緑の釉薬を大胆に流しかける。それは、利休の静謐な世界とは対極にある、動的で、生命力に満ちた美だった。 「美緒殿! 見てくれ! この『へうげもの』を! これぞ、わしが求めていた美じゃ! 静と動、和と破。そなたの指輪が、わしに道を教えてくれたわ!」 織部の目は、狂気にも似た創造の喜びに輝いていた。彼は、利休の弟子でありながら、利休とは異なる美の峰を目指し、新たな一歩を踏み出したのだ。 しかし、平穏な日々は長くは続かなかった。天下人となった秀吉は、その権力を誇示するかのように、黄金の茶室を作るなど、利休の侘び茶とは相容れない、派手で豪華な文化を好んだ。利休と秀吉。かつては蜜月だった二人の関係に、少しずつ、しかし確実に、不協和音が生じ始めていた。 ある日、聚楽第で開かれた大茶会に、利休は美緒を伴って出席した。そこは、権力と富の匂いが渦巻く場所だった。居並ぶ大名たちの間で、美緒の存在とその指輪は、ひときわ異彩を放っていた。 その指輪に、目をつけた男がいた。秀吉の側近の一人、石田三成である。彼は、理知的で計算高い男だったが、美しいものへの執着も人一倍強かった。 「そちらの娘御の指輪、実に稀有な品ですな。一度、拝見させていただきたい」 三成の目は、笑っていなかった。それは、要求というよりは、命令に近い響きだった。美緒が戸惑っていると、利休が静かに間に割って入った。 「三成殿。その石は、ただの飾り物ではござりませぬ。持ち主の心と、固く結びついております故」 「ほう。利休殿がそれほどまでに言われるとは。ならば、なおのこと、この目で確かめたい。さあ、指輪をこちらへ」 三成は、有無を言わせぬ態度で手を差し出した。周囲の大名たちも、固唾を飲んで成り行きを見守っている。逆らえば、秀吉の機嫌を損ねることになりかねない。絶体絶命の状況。美緒の手は、恐怖で震えていた。 その時、利休は、ふっと息を吐くと、穏やかな声で言った。 「三成殿。この石の真価は、所有することにはござりませぬ。この石は、見る者の心を映す鏡。欲深き者が見れば、ただの石にしか見えぬでしょう。じゃが、静かにそこにある光を愛でる心を持つ者にのみ、そのまことの姿を見せてくれるのです」 利休は、美緒の手を優しく取り、三成の目の前にかざした。 「ご覧なされ。この一条の光。これは、誰のものでもない。天が与え給うた、光そのもの。手に入れようとすれば、その輝きは失われましょう。茶の湯も、また同じ。茶碗を手に入れ、茶室を所有したとて、そこに宿る心を理解できねば、何の意味もないのです」 利休の言葉には、不思議な説得力があった。それは、単なる言い逃れではなく、彼の揺るぎない美学と哲学に裏打ちされたものだった。三成は、しばらくの間、指輪のキャッツアイの光と、利休の澄んだ瞳を交互に見つめていたが、やがて、ちっと舌打ちをすると、興味を失ったかのように踵を返した。 嵐は、去った。しかし、美緒は、この一件が、利休と権力者たちとの間の溝を、さらに深めることになるだろうと、直感的に感じていた。そして、歴史の知識が、その予感が正しいことを告げていた。利休の運命が、刻一刻と、悲劇的な結末へと近づいていることを。 **第三部:最後の茶会** 冬が近づくにつれ、京の都には冷たい風が吹き始めた。それは、時代の空気を象徴しているかのようだった。秀吉の権勢はますます強まり、それに伴い、彼の利休に対する要求や干渉は、目に余るものになっていった。利休の作る茶室が質素すぎると言い、彼の選ぶ道具にケチをつけ、ついには、大徳寺山門に置かれた利休の木像が不敬であると、難癖をつけてきた。 美緒は、歴史の流れを変えることのできない無力感に苛まれていた。利休に、未来に起こることを告げるべきか。いや、それをしたところで、この男は己の信念を曲げないだろう。彼の美学は、権力に屈することで生き長らえるような、安っぽいものではない。 利休もまた、自らの運命を悟っているようだった。しかし、その佇まいは、以前にも増して静かで、穏やかだった。まるで、嵐の前の静けさのように。 ある雪の降る夜、利休は美緒を茶室に招いた。 「今宵は、冷えるな」 風炉には、炭が赤々と熾っている。釜の湯が、悲しげな音を立てていた。 「美緒殿。そなたは、もう、未来へ帰る時が来たようじゃ」 利休の言葉は、静かだったが、有無を言わせぬ響きがあった。 「…嫌です。私は、まだ、あなたのそばにいたい。あなたの茶の湯を、見ていたい」 美緒の声は、涙で震えていた。 「ならぬ」と利休は、きっぱりと言った。「そなたは、未来からの風。この時代に、長居は無用。それに…これ以上、わしの業(ごう)に、そなたを巻き込むわけにはいかぬ」 利休は、ゆっくりと立ち上がると、水屋から一つの茶入れを取り出してきた。楢柴(ならしば)の肩衝(かたつき)。天下の名物と謳われた茶入れだ。 「わしは、多くのものを求め、多くものを手に入れてきた。この楢柴も、そうじゃ。じゃが、今となってみれば、それらがどれほどの価値を持つというのか。真に価値あるものは、形あるものではない。人と人との、心の交わり。一服の茶を共にし、心を通わせた、その一瞬。それだけじゃ」 利休は、最後の点前を始めた。その所作の一つ一つを、美緒は目に焼き付けた。指の動き、呼吸、視線の配り方。すべてが、利休の人生そのものを語っているようだった。 差し出された茶碗は、利休が最も愛したという「大黒(おおぐろ)」と呼ばれる黒楽茶碗だった。漆黒の闇の中に、星屑のような微かな光が浮かんでいる。美緒は、震える手で茶碗を受け取った。 その一服は、今まで味わったどの茶よりも、深く、複雑な味がした。苦味、渋み、甘み、そして、言葉にできないほどの、深い悲しみの味がした。それは、利休の辞世の句、「人生七十 力囲希咄 吾這宝剣 祖仏共殺」にも通じる、凄絶な覚悟の味だった。 「美緒殿」 茶を飲み干した美緒に、利休は静かに語りかけた。 「わしは、秀吉様に殺されるのであろう。じゃが、わしが追い求めた『美』は、誰にも殺すことはできぬ。それは、時を超える」 利休は、美緒の指輪に目をやった。石の中の光が、雪明かりを反射して、儚く揺らめいている。 「そなたが、その証じゃ。この石が、その証じゃ。わしの体は滅びようとも、わしの心は、この石の光と共に、そなたのいた未来へと届くはずじゃ」 美緒は、たまらなくなって指から指輪を外し、利休に差し出した。 「これを、あなたに。お守りにしてください」 しかし、利休は静かに首を振った。 「ならぬ。それは、そなたが持ち帰りなされ。そして、未来で、この石の心がわかる者に出会うた時、わしの話を、わしの茶の心を、伝えてくだされ。人は滅びても、美は生き続ける。それこそが、侘びの心。永遠の命なのじゃ」 それが、利休との最後の約束になった。 茶室を出ると、雪はさらに激しくなっていた。利休の屋敷の門前で、美緒は振り返った。障子に映る利休の影は、一本の揺るぎない松の木のように、凛として見えた。 「さようなら、利休様」 声にならない声で呟いた瞬間、あの時と同じ、強い眩暈が美緒を襲った。石の光が爆ぜ、視界が白く染まる。世界が、反転する。美緒の意識は、再び深い闇の中へと落ちていった。 **終章:令和の光** 気がつくと、美緒は美術館の茶室の畳の上に座っていた。窓の外は、すっかり夜が明けている。頬を伝う、生温かい涙の感触。左手の薬指には、あの指輪が、確かな重みをもって存在していた。 夢だったのだろうか。あまりにも鮮明で、リアルな夢。 しかし、それは夢ではなかった。美緒の中の何かが、根本的に変わってしまっていた。目の前の世界が、以前とはまったく違って見えた。茶室の柱の木目、畳のい草の一本一本、障子を通して差し込む朝の光の粒子。そのすべてが、愛おしく、かけがえのない美しさを放っているように感じられた。 職場に戻った美緒は、周りを驚かせた。以前の彼女は、どこか近寄りがたい、ピリピリとした空気をまとっていたが、今は、穏やかで、自然体な微笑みを絶やさない。仕事の仕方も変わった。些細なことでイライラしなくなり、同僚の小さなミスにも寛容になった。何よりも、彼女自身が、仕事を楽しんでいるように見えた。 「佐倉さん、なんだか最近、雰囲気変わったね。いいことでもあった?」 「ええ、まあ。素敵な旅をしてきたの」 美緒はそう言って、悪戯っぽく笑うのだった。 ある週末、美緒は祖母の遺品をもう一度、丹念に整理し始めた。すると、古いアルバムの中から、一枚の小さな紙片がはらりと落ちた。それは、茶道の免状だった。祖母が、若い頃に茶道を深く学んでいたことを示す証。そして、その裏には、祖母の震えるような筆跡で、こう記されていた。 『この指輪は、ただの石にあらず。静かなる光の中に、時を超ゆる心あり。利休の心を継ぐ者、現れんことを』 美緒は、息を呑んだ。祖母もまた、この指輪を通じて、何かを感じ取っていたのだ。自分が見たあの世界は、決して幻ではなかった。祖母から自分へと、指輪に込められた想いが、確かに受け継がれたのだ。 その数ヶ月後、美緒の美術館で、破損した桃山時代の茶碗の修復プロジェクトが持ち上がった。担当者として紹介されたのが、若き古美術修復家、和泉圭介(いずみ けいすけ)だった。 和泉は、口数の少ない、朴訥とした青年だった。しかし、彼が傷ついた陶器に触れる時の指先は、まるで赤子に触れるかのように優しく、慈愛に満ちていた。彼は、ただ形を元に戻すだけではなかった。その物が経てきた時間、人々の手を渡ってきた歴史、そのすべてに敬意を払い、物の「声」を聞きながら、対話するように修復を進めていく。その姿に、美緒は利休の面影を重ねて見ていた。 打ち合わせを重ねるうち、二人は自然と惹かれ合っていった。互いの仕事に対する姿勢、物を愛し、歴史を尊ぶ心。言葉を交わさずとも、分かり合える部分が多くあった。 ある日、仕事帰りに二人で食事をした。その席で、美緒は思い切って、自分の指輪を和泉に見せた。 「綺麗な指輪だね」 和泉は、最初、そう言った。しかし、彼は指輪を手に取ると、じっとその石の奥を見つめ、やがて、はっとしたように顔を上げた。 「…いや、違うな。ただ綺麗なだけじゃない。この石、なんだか、とても静かで、深い。暗闇の中で、ずっと誰かのことを見守ってきたような…そんな光だ。それに、このデザインも面白い。静かな中心の石を、激しい光が取り巻いている。まるで、静寂と情熱が、一つの魂の中でせめぎ合っているみたいだ」 美緒は、心臓が大きく高鳴るのを感じた。利休の言葉が、脳裏に蘇る。 『いつか、この石の心がわかる者が現れた時、わしの茶の心を伝えてくだされ』 この人だ。この人こそが、利休が言っていた「わかる者」なのだ。 美緒は、和泉に、あの不思議な体験のすべてを話した。タイムスリップしたこと、千利休と出会ったこと、お吟や織部、そして悲しい別れ。普通なら、一笑に付されるような話だ。しかし、和泉は黙って、真剣な眼差しで美緒の話に耳を傾けていた。 すべてを話し終えた時、和泉は、そっと美緒の手を取り、その指輪に自分の指を重ねた。 「信じるよ。君の話も、この指輪が重ねてきた時間も。だって、僕もずっと感じていたから。古い物たちと向き合っていると、時々、聞こえてくるんだ。作った人の想いや、使ってきた人々の息遣いが。君は、その声を、誰よりもはっきりと聞いたんだね」 和泉の温かい言葉に、美緒の目から涙が溢れた。長い間、一人で抱えてきた秘密と、時を超えた約束。それを、ようやく分かち合える相手に出会えた喜びで、胸がいっぱいになった。 一年後、美緒と和泉は、古い京町家を改装した小さな家で、新しい生活を始めていた。美緒の左手薬指には、あのクリソベリルキャッツアイの指輪が、穏やかで、満ち足りた光を放っている。 家の片隅には、小さな茶室がしつらえられた。休日の朝、和泉が修復した古い茶碗で、美緒が茶を点てるのが、二人の習慣になった。しゃっしゃっ、と茶筅を振る音、湯気の匂い、畳の感触。それは、かつて美緒が天正の世で体験した、あの満ち足りた時間へと繋がっていた。 「一期一会、だね」 和泉が、美緒の点てた茶を一口含んで、優しく微笑んだ。 「うん。毎日が、一期一会」 美緒は、頷き返す。指輪の石の中の一条の光が、窓から差し込む光を受けて、きらりと輝いた。それは、まるで遠い昔の恩人が、満足そうに頷いているかのように、美緒には見えた。 人は滅びても、美は生き続ける。 その言葉の意味を、美緒は今、日々の暮らしの中で、愛する人と共に実感していた。侘び寂びの極みとは、豪華な調度や稀有な名物の中にあるのではない。何気ない日常の中に、不完全な自分や相手の中に、移ろいゆく一瞬一瞬の中に、かけがえのない美しさを見出し、慈しむ心そのものなのだ。 時を超えて届けられた一服の茶の心は、今、確かに令和の世に受け継がれ、新しい物語を紡ぎ始めていた。美緒の指で輝くクリソベリルキャッツアイは、その永遠の証人として、これからも静かに二人を、そして未来を、見守り続けるのだろう。その一条の光は、もはや迷える人の心を見透かす眼ではなく、確かな愛と幸福の在り処を示す、道しるべとなっていた。
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