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評論社:複初文庫
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昭和46年初版、335頁
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敗戦とともに,日本の軍隊と帝国臣民の行動様式は消え去ったのだろうか? 本書は敗戦わずか5年後,軍隊経験者との討論や,東西のさまざまな文献を通じ,人間を濫用する機構としての軍隊の,日本社会における役割を追究した先駆的研究である.比較文化研究の立場から明かされる日本軍隊の特質は,現代に何を語りかけるのか.
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■内容紹介
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『日本の軍隊』は昭和25年(1950年)12月に東大協同組合出版部から出版された.敗戦から5年を経たこの頃の日本,食糧事情はようやく回復を見せ,映画「青い山脈」や美空ひばりの「東京キッド」などが流行.ソ連の抑留者引き揚げなど戦争の影がまだ色濃く残るとともに,レッドパージの進行や朝鮮戦争の始まりなど,新たな時代に突入していた.
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このとき著者飯塚浩二は44歳,東大東洋文化研究所の教授であった.当時のジャーナリズムの動向を彼はこう見る.「『サロン』の「戦艦大和」あたりから昔ふうの軍国調の読物への嗜好が露骨にみえはじめ,『きけわだつみのこえ』の出版利益金によって,戦没学生記念像が建てられるという噂を聞くころには,巷に戦争物が氾濫するという情勢をみるにいたった」.
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『きけわだつみのこえ』は前年昭和24年,同じ東大協同組合出版部から刊行されたベストセラーで,日本戦没学生手記編集委員会が全国から集めた手記75点が採録されている.これら手記にも個人の声を抑圧せずにはいなかった日本社会の特性が表れているし,一方ジャーナリズムがいまさら日本軍隊の話でもあるまい,という顔をしつつ,読者の軍隊への郷愁を甘やかす,こうした取り上げ方自体にも「旧来の作法が崩されずにある」ことを飯塚は見て取る.そもそも著者は比較文化論の立場から文明批評の筆をふるってきたが,軍隊において強調され顕現した日本の文化的特徴を,学問的に根源まで追究しよう,そう試みたのが本書であった.
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そのために著者はユニークな方法を採る.敗戦で資料が散逸し湮滅されたこともあるが,軍幹部として養成された若き将校たちの頭に残っている日本軍における行動様式を,共同討議の形で得られる資料によって分析しようとしたのである.本書第一部の5回にわたる記録がそれである.
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「共同研究者」は,戦後,大学に入学し直し,飯塚の教え子となった多米田宏司(陸軍士官学校55期)と小林順一(陸軍士官学校56期).それに,軍隊での経験も持つ政治思想史家丸山真男,敵性国人としてアメリカで留学生活を送った心理学者の南博,海軍予備学生でのち三信汽船社長の豊崎昌二らが討議に加わり,人間を濫用する機構としての日本軍の特質,そしてつまるところ日本社会の特質をさまざまな角度から明らかにしていく.それが第二部の「概括的な素描」へとつながってゆく.
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飯塚が本書の試みを始めた当時,日本軍の歴史は敗戦と憲法第九条により一応完結したはずであった.しかし,本が刊行されるころにはすでに現在の自衛隊の前身である警察予備隊が創設,そして平成15年の現在,自衛隊は戦闘の続くイラクへ復興支援という名のもと,派兵されようとしている.抽出された戦前の日本社会の特性,果たして今,思いあたる節がないかどうか……
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はしがき
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プロローグ 日本文化研究の手がかり
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第一部 討議の形式による共同研究の記録
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1 暴力と恩情
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2 日本軍隊の崩壊
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3 日本の思想における軍隊の役割
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4 人間性の抹殺
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5 人間の濫用
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第二部 概括的な素描
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1 インフェルトの「生地獄」
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2 「シベリア俘虜記」の一節
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3 戦時中の一初年兵の日記
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4 菅季治の「日常的善行」
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5 抑圧を加重する近代的要因
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6 インテリの場合
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7 コリンズ米参謀総長のいう「優れた盲従兵隊」
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8 班長も教官も心得たもの
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9 「別世界視されるの堪えず」
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10 いっそう厳しい軍人の立場からの反撥
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11 軍司令官の三十一文字
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12 残された軍人たち
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13 日本軍隊における技術と精神
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14 戦争の進化がミリタリズムを否定する?
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エピローグ 戦争と平和の問題
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あとがき:本書成立の事情
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付録:軍隊の思想
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解説:小松茂夫
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飯塚浩二(いいづか こうじ)
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1906-70年.人文地理学専攻.1930年,東京大学経済学部卒業.立教大学教授,東大東洋文化研究所教授,札幌大学教授などを歴任.比較文化論からする文明批評の筆をふるった.著書に『日本の精神的風土』『東洋史と西洋史とのあいだ』『ヨーロッパ・対・非ヨーロッパ』『飯塚浩二著作集』(全10巻)など.
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アマゾンの書評より
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5つ星のうち4.0 色々なエピソードが面白い
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本書の内容は、大きく二つの部分に分かれている。第一部は将校出身の学生たちとの雑談に近い討論で、かなり退屈です。具体的な軍隊生活を開陳しているのだが、新鮮な話もないので、これは、トンでも本か?と疑いました。だが、第二部に入ると、がぜん、著者の本領が発揮されます。軍隊での具体的事例を基に、一般化を試み始め、さらに、その裏側に潜んでいる本質に迫ろうとします。社会学的なアプローチで、軍事学のようなそれでないので、ちょっと残念ですが、新たなエピソードも面白くて、非常に参考になりました。
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5つ星のうち4.0 私的制裁と恩情の社会
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日本の旧軍隊の精神的風土を根絶することを希望していたでろう著者の意図には反するが、この精神的風土を受け継ぐのは誰か、という疑問が評者の念頭を離れなかった。受け継ぐというのは、このような精神的風土を利用して社会や政治を操縦する運動が現れ、多くの人々がそれを受忍する、というということである。
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著者による旧軍隊の精神的風土に対する批判は、次の2点に要約できると思う。
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1. 日本の軍隊は、上級者から下級者に対する私的制裁と恩情により統制されていた。私的制裁と恩情は、上級者にとっては、兵隊を強くするのに欠くべからざる手段であるとともに、自己の出世と利得を図るための道具でもあった。下級者は、私的制裁を受忍し、恩情を有り難く思うことが一般的だった。
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2. このような私的制裁と恩情は、天皇の権威又は「お国のため」に正当化され、人間の自然な感情と、事実と論理に基づく議論を抑圧した。これは、19世紀の野戦に勝つためには効果的であったかも知れないが、1940年代の総力戦では戦略・戦術を誤らせ、又兵士を消耗させることで、日本の敗因となった。
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評者は、この2点の批判に賛成した上で、21世紀の日本人は、このような私的制裁と恩情と関わり続けることになるであろう、と予想する。日本にはその素地と動機がある。
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小泉政権が米国のイラク攻撃を支持して以降、多くの日本人が私的制裁と恩情を容認し始めた。その後、様々な社会的な論議で私的制裁と恩情が問題となったが、大多数の日本人はそれに抵抗していない。ここに私的制裁と恩情が復活する素地がある。私的制裁と恩情が社会の統制に有効だと分かれば、社会や政治で影響力を発揮したい人々は、ますますそれに頼るようになるであろう。ここに私的制裁と恩情が復活する動機がある。
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日本全体の規模でそのような私的制裁と恩情が広がるとすれば、そのきっかけは、天皇の権威や「お国のため」に代わる正当化の論理の発明であろう。著者は、旧軍隊の私的制裁と恩情の論理が、国家と「親子関係のアナロジー」を持ち込み「近代的な民主主義に対立して一分の隙もみせぬ、水ももらさぬ布石である」と指摘するが、正当化の論理は必ずしもそのような精緻なものである必要はない。ここでも、小泉政権のワン・フレーズ・ポリティクスが恰好の手本を提供してくれる。恐らく、経済的、民族的な利害に関わる正当化の論理が、人々を煽って、私的制裁と恩情の体制を実現してゆくことになるだろう。
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本書は、そのような社会を作りたい人、そのような社会に備えたい人に参考となる事例を提供してくれる。
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