1971年初版 昭和46年当時物 北辺の機関車たち 鉄道写真集 北海道の蒸気機関車写真集 SL写真集
国鉄 C55 宗谷本線 急行利尻 322レ 9600 キマロキ 生田原 留辺蘂 石北本線 D51夜行石北 622レ 函館本線 C62 103レ D52 ほか
大木茂・武田安敏・堀越庸夫 共著
キネマ旬報社
約28x21x1.2cm
約150ページ
モノクロ
ソフトカバー 袖折り装
※絶版
雪と蒸気機関車の国、北海道。
冬の北海道とそこに生きる機関車たちに魅せられた男たちにより
ある時は厳しく、ある時は優しく、またある時は幻想的に捉えられた
鉄道写真集史上不朽の名作『北辺の機関車たち』。
多くの鉄道ファンから熱烈な支持を受け続ける鉄道写真集の傑作の昭和46年初版本。
国鉄蒸機が最終章にあった時代に、早稲田大学の学生だった大木茂、武田安敏、堀越庸夫の3名により撮影され、1971年にキネマ旬報社より刊行された『北辺の機関車たち』には、氷点下20度、30度近くまで下がる北の厳しい大地を疾走する蒸気機関車と雪のコントラストの世界が見事なまでに表現されています。
撮影地ガイドなどまだない時代だからこそ、はるかに自由に撮影ができ、絵になる場所も多く存在していた時代。ひたすら機関車を追いかけ、撮影を続けた若者たちの放つ独特のにおいや息づかいが、この写真集からは漂います。
厳冬の北海道を見事に表現したモノクロ写真集。
刊行当時そのままの、50余年の年月を経た大変貴重な1971年初版本。
鉄道写真愛好家必携の大変貴重な資料本です。
【はじめに より】
雪と蒸気機関車の国、北海道。我々は幾度となくこのさいはての地を訪れ、ここに働く機関車たちを追い続けた。この写真集は、冬の北海道とそこに生きる機関車たちに魅せられた我々3人の共同のアルバムともいうべきものである。
~中略~
厳寒と雪と流氷と、そしてそこを走る機関車、それを守る人々…。場所的にも非常に片寄っており、一般的な意味での北海道の機関車たちを十分とらえたとはいえないが、総花的に撮ることをやめた我々の主義からいえば、それは意味のあることであった。
冬の北海道の素晴らしさ、そしてその中で働く機関車たちの暖かさ、何よりもそれをこの本から感じていただければ幸いである。
【目次】
宗谷路のC55
さいはてに走る
凍てる朝
生田原・留辺蘂(るべしべ)
山間にこだます
峠の印象
雪と氷の浜
重連の行路
函館への道
写真解説(91点)
あとがき
使用機材について
【各章見出しより一部紹介】
宗谷路のC55
厳冬の宗谷路を走るC55。その魅力にとりつかれた我々は何度この機関車を追ったことであろうか。凍りついたロッド。雪で白く輝く1750mmのスポーク動輪。舞い上げる雪で真っ白になった機関車は北海道ならではの印象的な光景を生み出している。
だがこの美しい自然も乗務員にとっては苦労の種であり、ひとたび吹雪かれると列車は、たちまち遅れてしまう。その吹雪がやみ、白く冷たい北の原野に雪晴れの日がやってくると、銀世界が拡がる宗谷路はもう一つの表情を見せてくれる
さいはてに走る
北海道も北の方に来ると“96”の姿が多くなる。道北を旅していると、すれ違う機関車がすべて“96”であったり、夜行列車で降り立った駅の構内でひっそりとたたずんでいる姿に出会ったりする。
大正生まれの年老いたこの機関車はローカル線に手頃な大きさだったのだろう。今もなお元気に働くその姿は、すっかりさいはての風土に溶け込み、内地の“96”たちとは違った良さを感じさせてくれる。
函館への道
ひとくちに北海道と言っても、北と南では気候的にも随分異っている。道北はまだ雪の下に埋もれている3月、道南に来ると春を思わせるような暖かい陽射しに出会ったりする。
函館本線の長万部-函館間には、道内各地と本州を結ぶ優等列車が疾走し、その間を縫って真黒い貨物列車がやって来る。噴火湾沿いや駒ヶ岳山麓のゆったりとした風景の中を行〈長大な編成は、まさに北海道ならではのものだろう。
宗谷路のC55
我々が最初に北海道を訪れた昭和41年頃は、まだ道内各地でC55の姿を見ることができた。朝の札幌駅では、満員の通勤列車を牽いて次々とC55が現れたものである。蘭本線においても多く見られ、不定期急行「石狩」を牽くC55は、函館まで足をのばしていた。そんな中にあって、宗谷本線のC55は、あまり目立った存在ではなかったように思える。C55が牽く列車は、札幌一種内間の夜行急行「利尻」、小樽一種内間の普通列車の2往復しかなく、わざわざ稚内付近まで行く人も少なかった。しかしいつしか我々は、最北の地を行くC55たちが、函館本線や室蘭本線を走る仲間たちとは別の魅力を持っていることに気がついた。それは列車本数の少なさを補って余りあるものだったのである。
サロベツ原野や利尻富士といった、背景の良さにも増して我々を引きつけたのは、C55の個性を最大限に演出してくれる、その厳しい自然であった。真白に雪をかぶったエンドビーム、つららを凍らせ雪をかんだ足回り、一面に雪をたたきつけたようなキャブ。何時間も遅れてようやく駅にたどりついたC55の姿は、自然の美しさ、厳しさ、そしてそこに生きる鉄道の姿を我々に物語ってくれたのである。
ほか