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78862-16-18【Chelo Sastre】『Le Plerin(巡礼者)』絶品Diamond 18K Brooch SPAIN New 重さ5.9g 幅31.3×32.3mm
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### 序章:金の巡礼者 東京、令和の初夏。西荻窪の古い雑居ビルにあるアトリエの窓から、気だるい午後の光が差し込んでいた。床に散らばったデザイン画、磨きかけの銀のパーツ、そして虚空を見つめる若い女性。河野美咲(こうの みさき)、28歳。ジュエリーデザイナーの卵である彼女は、ここ数ヶ月、深刻なスランプに陥っていた。 コンペの締め切りは来月末。テーマは「永遠」。ありふれているが故に、独創性が問われる難題だった。頭の中に浮かぶのは、どこかで見たような陳腐なデザインばかり。焦燥感だけが、空回りする思考の熱量となって彼女を苛んでいた。 「もうダメかも……」 溜息と共にもれた弱音は、埃の舞う静かな空間に吸い込まれて消えた。才能の枯渇。その恐怖が、鉛のように重くのしかかる。気分転換が必要だった。美咲はスケッチブックを閉じ、ふらりとアトリエを出た。 あてもなく古びた商店街を歩いていると、一軒のアンティークショップが目に留まった。蔦の絡まるレンガ造りの壁、年季の入った木の扉。まるで時が止まったようなその店構えに、引き寄せられるように足を踏み入れた。 店内は、カビと古い木材と、そして微かな香水の匂いが混じり合った、独特の空気に満ちていた。薄暗い照明の中、銀食器や古時計、褪せた絵画などが所狭しと並んでいる。美咲は、過去の誰かの人生の一部だった品々が放つ、静かな物語に耳を澄ませるように、ゆっくりと店内を見て回った。 その、瞬間だった。 ガラスケースの片隅で、他の宝飾品とは明らかに違う、強い存在感を放つ一点に釘付けになった。 それは、黄金のブローチだった。 フードを深くかぶった人物をかたどった、滑らかな曲線で構成されたフォルム。表情は窺い知れないが、その佇まいは静かで、荘厳で、どこか物悲しい。まるで長い旅路の果てに佇む巡礼者のようだ。マントの裾近くには、三角形に配置された小さなダイヤモンドが埋め込まれ、薄暗い光を拾って、まるで涙のように控えめに煌めいていた。 「……きれい」 無意識に声が漏れた。デザインは抽象的でありながら、見る者の想像力を掻き立てる。シンプルさの中に、計り知れないほどの物語が凝縮されているように感じられた。美咲はガラスケースに額をこすりつけるようにして、そのブローチに見入った。金の表面は、長い年月を経てきたとは思えないほど滑らかで、深い輝きを湛えている。背面に回された細いピンが、まるで旅人の杖のようにも見えた。 「お目が高いですね」 いつの間にか隣に立っていた白髪の店主が、穏やかな声で言った。 「それは、スペインの古いものですよ。19世紀の終わり頃、チェロ・サストレという名工が作ったと聞いています。持ち主を転々として、ようやくここに辿り着いたようです」 美咲はゴクリと唾を飲んだ。値段は、今の彼女にとっては決して安くない。だが、もうこのブローチから目を離すことができなかった。これはただの装飾品ではない。何か特別なものが宿っている。そう直感した。 「……これを、ください」 気づけば、彼女はそう口にしていた。スランプの自分への苛立ち、未来への不安、それらすべてを振り払うかのように。これは投資だ、と自分に言い聞かせた。このブローチが、きっと私に何かを教えてくれる。そんな根拠のない確信があった。 ベルベットの小箱に収められたブローチを手に、美咲はアトリエに戻った。窓の外は、すでに夕闇に染まり始めていた。机の上のスタンドライトだけをつけ、彼女はそっと箱を開ける。 黄金の巡礼者は、ライトを浴びてぬくもりを帯びたように輝いた。美咲は、その滑らかな感触を確かめるように、指先でそっと表面を撫でた。 その瞬間。 ―――閃光。 脳裏に、洪水のように映像が流れ込んできた。 石造りの薄暗い工房。金槌を振るう、皺の深い男の手。窓辺のベッドに横たわる、青白い顔の少女。笑い声が響く、シャンデリアの眩い舞踏会。震える手で胸にブローチを握りしめる、黒髪の貴婦人。屋根裏部屋の床板の隙間から差し込む、一筋の光。涙に濡れた頬で、必死に祈りを捧げる少女。焼野原に佇む、もんぺ姿の女性。その胸で、黄金のブローチが静かに光っている―――。 「……っ!」 美咲は弾かれたように指を離した。心臓が激しく鼓動している。今の、は何? 幻覚?あまりに鮮明で、リアルな感覚だった。まるで、他人の記憶を追体験したかのような。 もう一度、恐る恐るブローチに触れる。 今度は何も起こらなかった。静かな金の塊が、そこにあるだけだ。 気のせいだったのだろうか。疲れているのかもしれない。 しかし、美咲の心には、先ほどの鮮烈なイメージが焼き付いて離れなかった。あの人々は誰?あの場所はどこ?そして、なぜ私は彼らの記憶を見たのだろう? その夜、美咲は眠ることができなかった。机の上で静かに佇む金の巡礼者を見つめながら、彼女は自分が、ただの美しいアンティークを手に入れたのではないことを悟り始めていた。 これは、時を超えて旅をしてきた、魂の記憶そのものなのだと。 そして、その長い旅路の新たな同行者に、自分が選ばれたのだということを。 美咲と、百年以上の時を旅してきたブローチとの、不思議な物語が、静かに幕を開けた。 ### 第一章:創造主の祈り(1888年、スペイン・アンダルシア) 美咲の意識は、乾いた土とオリーブの匂いがする、石畳の村に飛んだ。ぎらぎらと照りつける太陽。白い壁の家々。ここは、日本ではない。彼女の知らない、遠い昔の異国。 私は、見ている。感じている。しかし、自分の体ではない。 彼女の視点は、一人の男のそれに同化していた。 男の名はホアキン。日に焼けた肌に、深い皺が刻まれた金細工師。彼の目は、工房の窓辺に置かれたベッドに横たわる、一人娘のイサベルに向けられていた。15歳になるイサベルは、生まれつき肺が弱く、ここ数ヶ月はほとんどベッドの上で過ごしていた。細い腕、透けるように白い肌、時折苦しげに繰り返される咳。医者はもう、手の施しようがないと首を振った。 ホアキンの心は、絶望という名の分厚い雲に覆われていた。最愛の妻を数年前に亡くし、今また神は、たった一人の光さえも奪おうとしている。彼は毎晩、村の小さな教会で祈りを捧げた。だが、イサベルの容態は日に日に悪化していくばかりだった。 「お父さん……」 か細い声に、ホアキンは我に返って娘のそばへ寄った。 「どうした、イサベル。水が欲しいか?」 イサベルは小さく首を振った。そして、窓の外を指さす。彼女の視線の先には、サンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かう巡礼者たちの列が、埃を上げながら通り過ぎていくのが見えた。彼らは、大きなマントを羽織り、杖を手に、聖地を目指して黙々と歩みを進めている。 「私も、いつか旅がしたいな。あの人たちみたいに、遠い場所へ……。元気になったら、お父さんと一緒に」 その言葉は、ホアキンの胸を鋭い刃物のように突き刺した。叶わぬとわかっている願いほど、残酷なものはない。彼は込み上げる涙をこらえ、無理に笑みを作って娘の髪を撫でた。 「ああ、もちろんだとも。元気になったら、どこへでも行こう。海が見える街にも、雪が降る山にも」 その夜、ホアキンは眠れずに工房へ下りた。彼の手の中で、冷たい金の塊が重みを持っていた。もう神への祈りは届かない。ならば、自分の手で、この手で、娘のための祈りを形にするしかない。 彼は、巡礼者の姿を彫ることに決めた。 娘が焦がれた、自由と希望の象徴。どんな苦難の道も乗り越え、聖地へとたどり着く不屈の魂の象徴。娘の旅路が、たとえこの世のものではなくなったとしても、その魂が安らかに天上の聖地へたどり着けるように。そして、このブローチが、道しるべとなるように。 それから数日間、ホアキンは工房に籠りきりになった。食事も睡眠も忘れ、まるで何かに取り憑かれたかのように槌を振るい、ヤスリをかけた。金の塊が、少しずつ滑らかな曲線を描き始める。フードを深くかぶった、性別も年齢もわからない、普遍的な旅人の姿。表情は見えない。見る者の心が、その無表情に喜びも悲しみも映し出すことができるように。 彼はデザインに一切の無駄を許さなかった。ただひたすらに、純粋な祈りだけを込めて。 そして最後に、マントの裾に、小さなダイヤモンドを嵌め込んだ。そして最後に、マントの裾に、五つの小さなダイヤモンドを嵌め込んだ。それは、亡き妻が大切にしていたイヤリングから外した石だった。彼は、天国にいる妻、病と闘う娘、そして二人を見守る自分、さらに娘の魂の安らかな旅路と、決して消えない家族の絆、その五つの祈りを込めて、星が寄り添うように石を埋め込んでいった。
ブローチが完成した日、ホアキンはそれをそっとイサベラの枕元に置いた。 「イサベル、お前のための、お守りだ。この人が、お前をどこまでも守り、導いてくれる」 イサベルは、弱々しいながらも微笑んで、小さな手でブローチを握りしめた。 「きれい……。お父さん、ありがとう。宝物にするね」 その日から、イサベルはブローチを片時も手放さなかった。眠る時も、苦しい咳に苛まれる時も、金の巡礼者はいつも彼女の手の中にあった。 しかし、奇跡は起こらなかった。 秋風が吹き始める頃、イサベルは、まるで眠るように静かに息を引き取った。15年の短い生涯だった。 ホアキンの世界から、すべての色彩と音が消えた。 葬儀の日、彼は娘の冷たい胸に、あのブローチを飾ってやろうと思った。だが、できなかった。これを手放してしまえば、娘との最後の繋がりさえも断ち切れてしまうような気がしたのだ。 彼は、娘の亡骸の代わりに、ブローチを自分の胸に抱きしめて泣いた。 金の冷たさが、彼の肌に食い込む。それは、創造の喜びに満ちていたはずの金属ではなかった。愛する者を守れなかった無力感と、決して癒えることのない喪失の痛みを宿した、悲しみの塊だった。 ブローチは、最初の記憶を刻み込んだ。 それは、父が娘を想う、どこまでも深く、純粋な愛情。そして、その愛ではどうすることもできなかった、死という名の絶対的な別離の悲しみ。 創造主の祈りと慟哭。それが、この金の巡礼者の旅の始まりだった。 美咲の頬を、一筋の涙が伝った。それはホアキンの涙であり、彼女自身の涙でもあった。デザイナーとして、何かを生み出すことの意味を、その根源にある愛情の深さを、彼女は初めて魂で理解した気がした。自分のスランプなど、この男の絶望に比べれば、なんてちっぽけな悩みだろう。 ブローチは、ただ美しいだけではなかった。それは、一人の人間の、人生そのものだったのだ。 ### 第二章:偽りの輝きと真実の涙(1925年、フランス・パリ) ホアキンの死後、ブローチは親戚の手を経て、国境を越えた。そして狂騒の20年代、芸術と文化の都パリで、新たな主を得ることになる。 美咲の意識は、シャンデリアが煌めき、ジャズの音色がむせ返るような熱気とともに流れる、豪華なサロンへと誘われた。絹のドレス、羽扇子、高価な宝石、そして飛び交うシャンパンの泡。誰もが刹那的な享楽に身を委ねる、レ・ザネ・フォル(狂乱の時代)の真っ只中だった。 ブローチの新しい持ち主は、マドレーヌ・ド・ヴァレンヌ。漆黒の髪を大胆なボブにし、真っ赤なルージュを引いた、社交界の華だった。彼女は銀行家の裕福な夫を持ちながら、多くの芸術家や貴族たちと浮名を流し、その奔放な生き方は常に人々の羨望と嫉妬の的だった。 今宵も、彼女はサロンの中心にいた。胸元には、金の巡礼者のブローチが飾られている。それは、彼女の愛人の一人である、年上の公爵からの贈り物だった。 「マドレーヌ、そのブローチ、実に君に似合っている。どこかミステリアスで、誰も手に入れることのできない高貴さがある」 公爵の甘い言葉に、マドレーヌは蠱惑的な笑みを返す。 「お上手ですこと。でも、わたくしはもう、あなたのものですわ」 その言葉とは裏腹に、彼女の瞳の奥には、誰にも見せない冷たい光が宿っていた。 ブローチは、マドレーヌの胸で、数えきれないほどの偽りの愛の言葉と、虚ろなキスを受け止めた。彼女は愛されることを渇望していたが、彼女に向けられるのは、その美貌と夫の財産に対する欲望だけだった。マドレーヌ自身も、それを理解していた。だからこそ、彼女は誰にも心を開かず、享楽的な仮面をかぶり続けることで、傷つきやすい自分を守っていたのだ。 ブローチは、彼女の孤独を知っていた。パーティーが終わり、一人きりで豪奢な寝室に戻った時、マドレーヌは仮面を剥がし、まるで抜け殻のようにベッドに倒れ込む。その時だけ、彼女の胸で揺れるブローチは、彼女の本当の姿を映し出す鏡となった。涙を流すことさえ忘れてしまった、愛に飢えた一人の女性の姿を。 そんな日々の中、マドレーヌは一人の若い画家と出会う。名はジュリアン。彼は貧しかったが、その瞳は純粋な情熱に燃えていた。彼はマドレーヌの美しさだけでなく、その奥にある悲しみや孤独を見抜き、それをカンヴァスに描き出した。 「マドレーヌ、君はまるで傷ついた鳥のようだ。豪華な籠の中で、必死に羽ばたき方を忘れまいとしている」 ジュリアンのアトリエで、彼の言葉を聞いたマドレーヌは、初めて人前で涙を流した。それは、彼女がずっと心の奥底に閉じ込めていた、本当の感情だった。 二人は、燃えるような恋に落ちた。人目を忍んで会うアトリエでの時間は、マドレーヌにとって唯一、自分らしくいられる安らぎの場所だった。彼女はジュリアンに、あの金のブローチを贈った。 「これは、私のお守りなの。でも、あなたに持っていてほしい。これが、私の本当の心の在り処だから」 しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。二人の関係は、すぐに夫の知るところとなった。激怒した夫は、ジュリアンをパリから追い出し、マドレーヌを邸宅に軟禁した。 マドレーヌは必死に抵抗したが、彼女には何の力もなかった。彼女が持っていたすべてのものは、夫から与えられたものでしかなかったのだ。 数週間後、マドレーヌの元に、ジュリアンから一通の手紙と、小さな包みが届いた。手紙には、別れの言葉が綴られていた。彼は、彼女の未来を思い、身を引く決意をしたのだった。 『君を不幸にはできない。どうか、幸せになってくれ。君の魂の輝きは、誰にも奪わせるな』 そして、包みの中には、あの金のブローチが入っていた。 マドレーヌは、ブローチを握りしめ、声を殺して泣いた。偽りの輝きに満ちた世界で、ようやく見つけた真実の愛。しかし、それはあまりにも儚く、彼女の手からこぼれ落ちてしまった。 ブローチは、彼女の熱い涙を再びその身に受けた。それは、ホアキンの喪失の涙とは違う、愛を知り、そしてそれを失った者の、切ない痛みを伴う涙だった。 数年後、夫が事業に失敗し、ヴァレンヌ家は没落した。すべてを失ったマドレーヌは、パリの片隅で、静かに暮らし始めた。かつての華やかさは見る影もなかったが、彼女の表情は、社交界の華だった頃よりも、ずっと穏やかだった。 彼女は、金のブローチを売らなかった。それは、彼女の人生で唯一、真実だったものの証だから。 ブローチは、マドレーヌの人生を通して学んだ。華やかさの裏に潜む孤独。偽りの愛の空虚さ。そして、たとえ結ばれなくとも、人の心を永遠に温め続ける、真実の愛の存在を。 美咲は、デザイン画の上に置いた自分の手を見つめた。自分は今まで、見た目の美しさ、斬新さばかりを追い求めていたのではないか。マドレーヌのように、虚飾に満ちたデザインで、自分の不安を隠そうとしていたのではないか。 本当に人の心を打つのは、飾り立てた美しさではない。その奥にある、真実の感情なのだ。ブローチは、静かにそう語りかけているようだった。 ### 第三章:闇の中の小さな光(1943年、ポーランド・ワルシャワ) 時代はさらに下り、世界は第二次世界大戦という巨大な狂気の渦に飲み込まれていく。 マドレーヌの死後、形見分けとして遠縁に渡ったブローチは、いくつかの偶然を経て、ポーランド・ワルシャワに住む、あるユダヤ人家族の元にあった。 美咲の視界は、息が詰まるほど狭く、暗い空間に閉ざされていた。木の床の匂い、カビの匂い、そして恐怖の匂い。そこは、ある一家がナチスの目を逃れて隠れ住む、屋根裏部屋だった。 ブローチの持ち主は、ハンナという名の12歳の少女。豊かな黒髪と、不安げに揺れる大きな瞳が印象的だった。このブローチは、かつて宝石商だった父が、母レベッカに贈ったものだった。しかし、父はゲットー(ユダヤ人強制居住区)への移送中に連れ去られ、今は行方がわからない。 ハンナと母は、ポーランド人の心ある協力者の家の屋根裏に、息を潜めて隠れていた。 外の世界からは、軍靴の音、怒声、そして時折、銃声が聞こえてくる。光は、床板の小さな節穴から差し込む一筋だけ。それが、彼女たちの世界のすべてだった。 ハンナは、日に日に弱っていく母の姿を見るのが辛かった。食べ物は乏しく、希望はさらに乏しかった。 ある夜、激しい咳に苦しむ母が、ハンナをそばに呼んだ。 「ハンナ……これを、あなたに」 そう言って母がハンナの手に握らせたのは、あの金のブローチだった。 「これはね、お父さんが母さんにくれた、希望のお守りなの。この巡礼者のように、私たちはどんなに暗く、長い道でも歩き続けなければならない。必ず、光のある場所へたどり着けるから」 母の言葉は弱々しかったが、その瞳には強い意志の光が宿っていた。 「いい、ハンナ。何があっても、生きることを諦めてはダメ。あなたが生きてさえいれば、私たちの家族の歴史は、記憶は、未来へと繋がっていく。わかったわね?」 ハンナは、涙をこらえて力強く頷いた。 その数日後、母レベッカは、娘の腕の中で静かに息を引き取った。 屋根裏部屋に、ハンナは一人取り残された。悲しみに泣き叫ぶことも、絶望に身を任せることも許されない。物音一つ立てられない、孤独な闇の中で、ハンナは母の亡骸のそばで、ただブローチを握りしめることしかできなかった。 金の巡礼者は、少女の冷たい手のひらの中で、彼女の恐怖と悲しみ、そして母から託された「生きろ」という強い願いを、静かに受け止めていた。それは、もはや単なる金属ではなかった。三代にわたる家族の愛と、絶望の淵で見出した希望の結晶そのものだった。 長い、長い時間が過ぎた。 ハンナは、協力者が密かに差し入れてくれる、わずかな食料で生き延びた。昼も夜もわからぬ闇の中で、彼女の唯一の慰めは、ブローチを握りしめ、そこに込められた両親の温もりを感じることだった。彼女はブローチに話しかけた。父のこと、母のこと、そしていつか自由になったらやりたいこと。パンをお腹いっぱい食べたい。太陽の下を歩きたい。学校へ行きたい。 そして、1945年の冬。 ついに、その日はやってきた。 遠くから聞こえていた砲声が止み、代わりに歓声のような響きが聞こえ始めた。協力者の男性が、震える声で屋根裏の扉を開けた。 「お嬢さん……終わったよ。戦争は、終わったんだ」 数年ぶりに浴びる外の光は、あまりにも眩しく、ハンナは目を細めた。廃墟と化したワルシャワの街。しかし、その瓦礫の中から、人々が顔を出し、抱き合い、泣き、笑っていた。 ハンナは、自由になったのだ。 戦後、孤児となったハンナは、赤十字の保護施設で暮らした。彼女の手元に残ったのは、着の身着のままの服と、あの金のブローチだけだった。 ある日、施設の掲示板に張り出された生存者リストの中に、彼女は信じられない名前を見つけた。 父、ダヴィドの名前だった。 彼は奇跡的に強制収容所から生還し、娘を探していたのだ。 再会の瞬間、父と娘は言葉もなく抱き合った。ハンナの胸には、あのブローチが光っていた。父は、涙に濡れた目でそれを見つめた。 「レベッカが……守ってくれたんだな」 ブローチは、絶望の闇の中で、家族の絆という小さな光を灯し続け、そしてついに、奇跡の再会へと導いたのだ。 ブローチは、ハンナの人生を通して、最も過酷な記憶をその身に刻んだ。戦争という理不尽な暴力、死の恐怖、そして極限状態の中でさえ失われることのない、人間の尊厳と希望の強さを。 美咲は、アトリエの椅子の上で、身動き一つできずにいた。全身が震えていた。彼女が今まで生きてきた平和な世界とは、あまりにもかけ離れた現実。しかし、それは紛れもなく、このブローチが通り抜けてきた歴史の一部だった。 「生きる」ということ。その言葉の持つ、圧倒的な重み。 デザインができない、などという悩みは、あまりにも贅沢で、傲慢なものに思えた。美咲は、胸に飾られてもいないブローチの重みを、ずっしりと感じていた。 ### 第四章:静かなる愛の輝き(1965年、日本・東京) 奇跡の再会を果たしたハンナと父は、戦後、新天地を求めてアメリカへと渡った。ハンナは強く生き、結婚し、子供にも恵まれた。金のブローチは、彼女の幸福な人生を静かに見守り続けた。 そして、ハンナが老婆となった頃、ブローチは彼女の孫娘によって、遠い異国の地、日本へともたらされることになる。交換留学生として来日した孫娘が、生活費のために、やむなく東京の質屋に預けたのだ。 時代は、高度経済成長期の日本。 焼け野原から奇跡の復興を遂げた東京は、活気に満ち溢れていた。 美咲の意識は、下町の小さな木造アパートの一室にいた。ちゃぶ台、黒電話、そして窓の外からは、都電の走る音が聞こえてくる。質流れ品として売られていたブローチを、一人の女性が大切そうに眺めていた。 女性の名は、斎藤静子。戦争で夫を亡くし、女手一つで息子の良太を育てている、芯の強い女性だった。彼女は、近所の工場で働きながら、必死に家計を支えていた。 このブローチは、亡き夫・正一が戦地へ赴く前に、なけなしの金で買ってくれた婚約指輪を売って、代わりに手に入れたものだった。 「いつか、こんな綺麗なものを、お前に気兼ねなく買ってやれるようになりたい。それまで、これを俺だと思って、持っていてくれ」 そう言って、はにかみながらブローチを渡してくれた夫の顔を、静子は昨日のことのように思い出せた。 しかし、正一は帰ってこなかった。届いたのは、一枚の戦死公報だけ。 静子の世界は一度、闇に閉ざされた。しかし、お腹の中に新しい命が宿っていることを知った時、彼女は生きることを決意した。この子を、夫の命の続きを、立派に育て上げること。それが、自分の使命だと。 ブローチは、静子にとって、単なる装飾品ではなかった。それは、亡き夫の魂そのものであり、苦しい時に彼女を励ましてくれる、お守りだった。 工場の給料日、少しだけ贅沢をして買ったコロッケを、息子の良太と分け合って食べる時。良太が熱を出し、一晩中そばで看病する時。運動会で、一番になってゴールする息子の姿に、涙ぐむ時。 どんな時も、静子の胸の奥、古いハンカチに包まれたブローチは、彼女と共にあった。それは、マドレーヌが飾ったような華やかな胸元ではなく、ハンナが握りしめたような極限の状況でもない。しかし、日々の暮らしの中に確かに存在する、ささやかで、しかし何よりも尊い愛の物語だった。 ブローチは、静子の人生を通して、新しい形の愛を知った。 それは、情熱的な恋でも、悲劇的な家族愛でもない。 日々の営みの中に根ざした、穏やかで、静かで、しかし何よりも強い、母性という名の愛。そして、亡き人への変わらぬ想いを胸に、未来を担う子供を育てるという、生命の継承の物語だった。 良太が成人し、家庭を持った日、静子は彼を呼び寄せ、一つの小箱を渡した。 「良太。これは、お父さんの形見なの。お父さんが、母さんにくれた、宝物。今度は、あなたが、あなたの大切な人を守る番よ。これを持っていてちょうだい」 良太は、母の皺の増えた手から、ずっしりと重いブローチを受け取った。彼は、このブローチが、どれほど母の心の支えになっていたかを知っていた。 「ありがとう、母さん。大切にするよ」 ブローチは、こうして静かな愛の記憶をその身に加え、斎藤家に受け継がれていった。 美咲は、目の前のブローチから、温かいぬくもりのようなものを感じていた。ホアキンの創造の祈り、マドレーヌの真実の愛への渇望、ハンナの生きる希望、そして静子の静かなる母性愛。 様々な時代の、様々な人々の、あまりにも濃密な人生。 愛、悲しみ、希望、絶望、そして再生。 それらすべての感情が、この小さな金の巡礼者の中に渦巻いている。 「私に、何が作れるっていうの……」 美咲は、圧倒されていた。自分が向き合っているのは、単なる金属ではなく、百年の時を超えた人間の魂の集合体なのだ。その重さに、押しつぶされそうだった。 彼女は、恋人の健太に電話をかけた。 「もしもし、健太?……今、ちょっと、会えないかな」 声が震えていた。健太との関係も、最近はぎくしゃくしていた。デザインに没頭するあまり、彼をないがしろにしている自覚はあった。健太の優しさに甘え、自分の悩みばかりを優先していた。静子の、夫を想い、子を想う無償の愛の記憶が、美咲の胸をちくりと刺した。 ### 第五章:巡礼の果てに 健太は、美咲のただならぬ様子に、すぐにアトリエへ駆けつけてくれた。 「どうしたんだ、美咲。顔色が悪いぞ」 心配そうに覗き込む健太の顔を見て、美咲の堰を切ったように感情が溢れ出した。彼女は、ブローチを手にしてから体験した、不思議な出来事のすべてを、途切れ途切れに語り始めた。スペインの金細工師、パリの孤独な貴婦人、ワルシャワのユダヤ人の少女、そして戦後の日本の母親。 健太は、荒唐無稽とも思える彼女の話を、黙って、真剣な眼差しで聞いていた。彼は、美咲が嘘をついたり、精神的に錯乱したりしているとは思わなかった。彼女が今、何かとてつもなく大きなものと向き合い、苦しんでいることだけは、痛いほど伝わってきた。 すべてを話し終えた美咲は、泣きじゃくりながら言った。 「私、もうわからないの。このブローチが、何を私に伝えたいのか。あまりにもたくさんの人の人生が、感情が、流れ込んできて……。自分のデザインが、すごく薄っぺらで、無意味なものに思える。健太とのことだって、ちゃんと向き合えてなかった……。私、どうしたらいいの……」 健太は、震える美咲の肩を、そっと抱きしめた。 「そっか……。大変だったな。一人で、そんなすごいものを抱えてたんだな」 彼の声は、温かくて、優しかった。 「でもさ、それは呪いなんかじゃないと思うよ。だって、そのブローチは、どの時代でも、持ち主にとって大切な『お守り』だったんだろ?希望だったり、愛の証だったり。きっと、君にとっても、そうなるはずだよ」 健太は続けた。 「それに、薄っぺらなんかじゃない。美咲のデザインは、美咲にしか作れない。君が感じたこと、見たこと、その全部が、これからの君の力になるんじゃないかな」 そして、彼は一つの提案をした。 「このブローチが作られた場所、行ってみないか?スペインの、そのホアキンっていう人がいた村に。何か、わかるかもしれない」 美咲は、驚いて顔を上げた。 「でも、そんな……」 「行こう。俺も一緒に行く。これはもう、美咲一人の問題じゃない。俺も、君の旅の仲間になりたい」 健太の真摯な瞳に、美咲は涙が止まらなかった。自分は一人ではなかった。孤独に悩んでいたのは、自分の心が生み出した幻だったのだ。 一週間後、二人はスペイン、アンダルシア地方の、太陽が照りつける小さな白い村に立っていた。ホアキンの記憶にあった、あの村だ。 村は、百年の時を経ても、ほとんどその姿を変えていなかった。二人は、村の資料館や古い教会を訪ね歩き、ついにホアキン・サストレという金細工師と、その娘イサベルの記録を見つけ出した。 そして、村の外れにある、古い墓地。 苔むした墓石の中に、イサベルの名が刻まれたものがあった。その墓石の上部には、一つのレリーフが彫られていた。 それは、フードを深くかぶった巡礼者の姿。美咲が持つ、あのブローチと寸分違わぬ姿だった。 墓石の傍らに添えられたプレートには、こう記されていた。 『Buen Camino. (良き旅路を)』 その言葉を見た瞬間、美咲の中で、すべてのピースが繋がった。 ああ、そうか。 このブローチは、悲しみの記憶装置などではなかった。 これは、祈りそのものだったのだ。 ホアキンが、娘の魂の旅路が安らかであるようにと願った、愛の祈り。 その祈りが、時代を超え、人々の手を渡り歩く中で、それぞれの持ち主の「良き旅路」を願うお守りとなっていったのだ。 マドレーヌには、偽りの愛の中から真実を見出す旅路を。 ハンナには、絶望の闇から光へと至る旅路を。 静子には、愛する人を失った悲しみを乗り越え、子供を育て上げるという未来への旅路を。 この巡礼者は、ただ見守るだけではない。持ち主の悲しみに寄り添い、その魂が次の目的地へ向かうための力を与え、その旅路が「良きもの」となるようにと、静かに、しかし力強く、祈り続けてくれていたのだ。 その夜、ホテルの部屋で、美咲はブローチを両手で包み込むように握りしめた。 すると、これまでで最も温かく、優しい光と共に、最後のヴィジョンが流れ込んできた。 それは、過去の持ち主たちの、幸せの記憶だった。 父のブローチを胸に、穏やかに微笑む老婆となったイサベルの魂。 ジュリアンの描いた肖像画の前で、静かに涙する晩年のマドレーヌ。 結婚式で、父と腕を組み、満面の笑みを浮かべるハンナ。 孫たちに囲まれ、幸せそうに目を細める静子。 そして、令和の東京で、自分を心配してくれる健太の優しい顔。 悲しみや苦しみは、彼女たちの人生の一部ではあったが、すべてではなかった。彼女たちは皆、それぞれの形で困難を乗り越え、愛を見つけ、幸せを掴み取っていたのだ。 ブローチは、美咲に語りかけているようだった。 『あなたの旅路もまた、良きものであれ』と。 涙が、後から後から溢れてきた。それはもう、悲しみや混乱の涙ではなかった。感謝と、愛しさと、そして未来への希望に満ちた、温かい涙だった。 「ありがとう……」 美咲は、ブローチに、そして健太に、心からそう告げた。 「私、わかった。私が作るべきものが」 ### 終章:令和の巡礼者 日本に帰国した美咲は、別人になったように創作に没頭した。 もう、迷いはなかった。 彼女が生み出すべきは、単に美しいだけのジュエリーではない。人の人生に寄り添い、その旅路を祝福する、お守りのようなジュエリーだ。 数ヶ月後、コンペの会場に、美咲の作品が展示された。 コレクションのタイトルは、『Le Plerin(巡礼者)』。 中央に置かれたのは、ネックレスだった。 あの金のブローチからインスピレーションを得た、フードをかぶった巡礼者のモチーフ。しかし、その素材はプラチナで、より現代的で洗練されたフォルムにアレンジされていた。そして、マントの裾にあしらわれているのは、ダイヤモンドではなく、持ち主が選んだ誕生石を留めることができる作りになっていた。それは、過去の物語を受け継ぎつつも、これから始まる新しい持ち主自身の物語を刻むための、未来への余白だった。 ネックレスの横には、説明文が添えられていた。 『人は皆、人生という名の道を歩む巡礼者です。 喜びの時も、悲しみの時も、あなたの旅路が、光と希望に満ちた良きものでありますように。 百年の時を超えて旅を続けた、一つのブローチに祈りを込めて』 彼女の作品は、審査員たちの心を強く揺さぶった。技術やデザイン性はもちろんのこと、その奥に流れる深く、温かい物語性が、他のどの作品をも凌駕していた。 結果は、グランプリ受賞。 美咲は、ジュエリーデザイナーとしての輝かしい第一歩を、力強く踏み出した。 授賞式の帰り道、健太と二人、夜の公園のベンチに座った。 「おめでとう、美咲」 「ありがとう、健太。あなたがいなければ、私はここにいなかった」 美咲は、自分のコートの襟に、あの金のブローチを留めていた。それは、まるで彼女の新しい門出を、誇らしげに見守っているかのようだった。 「ねえ、この子、なんて言ってると思う?」 美咲がブローチにそっと触れながら尋ねると、健太は少し考えてから、優しく微笑んだ。 「『ここからが、君の本当の旅の始まりだよ』って。そんな感じかな」 その言葉は、まるでブローチ自身の声のように、美咲の心に響いた。 そうだ、旅はまだ始まったばかり。 これから、嬉しいことも、もしかしたら辛いこともあるだろう。でも、もう恐れることはない。私には、時を超えて受け継がれてきた、たくさんの愛と希望が、そして隣には、かけがえのないパートナーがいてくれるのだから。 美咲は、健太の肩にそっと頭をもたせかけた。 見上げた夜空には、数えきれないほどの星が輝いていた。一つ一つの星が、まるで誰かの人生の物語のように、瞬いている。 金の巡礼者は、令和の東京の夜景の中で、静かに、そして確かな輝きを放っていた。 ホアキンの祈りから始まったその長い旅路は、今、新しい時代の、新しい愛の物語を見つけ、ここに安らぎの場所を得たのだ。 そして、これからも、美咲と共に、彼女の「良き旅路」を見守り、歩み続けていくのだろう。 ダイヤモンドの小さな涙は、数多の魂の記憶を抱きしめながら、未来を照らす希望の光のように、どこまでも優しく煌めいていた。
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