ウイスキーに「テロワール」は存在するのか? ワインにおけるテロワールは、同じく農産物(穀物)を原料とするウイスキーにもあてはまるのか?
著者は冒頭において、テロワールを“農作物(あるいは家畜)の風味や特質が環境によってどのような影響を受けるかを説明するフランス語”、“農場に層を重ねる土壌と、その輪郭を形成して形作る地形、そして農場が立地する地域の気候”と当初の考えを論じ、その環境の影響を受ける“ブドウ、穀物、チーズ、犬、人間”など、その存在全てに備わるDNA(遺伝情報)やテロワールという言語の解釈にまで遡って考察し、ウイスキーにテロワールが存在するのかを究明する科学的かつ実地的な旅へと読者を誘います。
ウイスキーの「テロワール」を捉えるため、原料の産地やテロワールを追求する蒸留所を巡る旅 ウイスキーのテロワールを捉えるため、著者はまずその概念の礎であるワインの考察に着手。
ワインに複雑な風味や香味をもたらす“フレーバー化合物”に着目し、ワインにおけるテロワールの影響を確かめるため、カリフォルニア州のワイン産地へと足を運びます。
次に、著者が手掛けるバーボンウイスキーの原料、イエローデントコーンの産地であるテキサス州の農場へと足を運び、穀物の品種や産地がウイスキーのフレーバーに影響を与えるかについて、実際の試験栽培・試験蒸留及び、精細な分析化学と感覚科学の実験を通し研究・考察します。
そして、バーボンウイスキーにおけるテロワールの化学的ロードマップを描いた著者は、そのロードマップを手掛かりに、ライウイスキー、そしてモルトウイスキーのテロワールを捉えるため、世界各地の農場や蒸留所を巡る旅に出ます。
「テロワール」をテーマに、ウイスキーと蒸留技術、農業や農学に関わる知見を幅広く展開 マスターディスティラー、ウイスキーコンサルタントとしての立場から、本書において著者は、ウイスキーの歴史的背景や各スタイル、蒸留技術、そし業界の現状に関する知見や見解を惜しみなく展開します。
また、植物遺伝学の博士としての立場から、農作物の品種や各種の農法、育種学、栽培学、分析化学、農業経済学といった農学の様々な分野に渡り、科学的な根拠に基づいて公平かつ適切に、知見や自身の見解を述べています。
これらの記述内容に関し、市井のウイスキー愛好家がどこまでどう捉えるか、また専門的な分野(特に化学的記述)に関しどこまで理解を深められるかは未知数ですが、「テロワール」をひとつのテーマに、ウイスキーのフレーバーにまつわる科学/化学を詳らかにしつつ農場や蒸留所を巡る著者の旅に、読者は同行する事ができます。
日本を含めた世界各地では、折からのウイスキーブームの潮流にのった新興蒸留所が次々に起ち上げられ、新たに仕込まれたニューメイクが初期の熟成を終えた数年後、市場がどのように推移しているのかは分かりません。
しかし、「テロワール」は間違いなく、ウイスキーの本質を捉えるためのひとつのキーワードになり得るでしょう。
そのような折に向け、本書を、ウイスキーのテロワールを捉える一助として頂けたら幸いです。
●「ウイスキー・テロワール」日本語版への序文
●訳者まえがき
●イントロダクション
●第1部 フレーバーの成形、テロワールのテイスティング
1章 テキサスの農場
2章 フレーバーの製造と認識
3章 フレーバーの化学的性質
4章 ワイン・テロワールのテイスティング
5章 ワインカントリー
6章 テロワールの進化的役割
7章 商品穀物の台頭
●第2部 テロワールへのロードマップ
8章 テキサスの三目並べ
9章 テロワールの化学
10章 ザ・ロードマップ
11章 マップの重ね合わせ
●第3部 マップをたどる
12章 ニューヨークのウイスキー
13章 農業三部作
14章 マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム
15章 ケンタッキーのトウモロコシ、小麦、ライ麦
16章 池を越え、丘陵を抜けて
17章 T〓IREOIR
18章 〓IRE(エール:アイルランド)の農場におけるフレーバー
19章 ついに、ひと口
20章 スコッチウイスキーの聖堂
結論
●付録1 ウイスキー・テロワールのテイスティングガイド
●付録2 ロードマップへの鍵:10章の出典
●付録3 ロードマップへの鍵:11章の出典
●付録4 ロードマップへの鍵:17章の出典
●注釈
●ウイスキー・テロワール追記
出版社:スタジオタッククリエイティブ
発売日:2024/10/27
単行本:368ページ
ISBN-10:4868000098
ISBN-13:9784868000099
寸法:3 x 15.2 x 22.8 cm
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