
絣のない染織を除き、イカットの良し悪しは、絵になるような絣文様の美しさや括り(イカットの語源)の技術の高さにあると考えています。両方兼ね備えた布は少なく、時代が下るにつれて、括りが甘く文様が雑になってぼやけたり、科学染料が使われたりします。
こちらは、世の中に山ほど出回っている観光客向けの新しい(20世紀末以降の)スンバの布ではありません。特に、この地域で織られた布は数少なく、中でもこれほど絣文様が美しい布にはなかなか出会えないでしょう。ほのぼのとした愛着の湧く文様で、私の好きな一枚でした。
これは、インドネシア スンバ島東部の村、カリウダ地方のイカットです。当時、島では貴重な染料であった茜(赤)を使ったこのような多色の布は,「ヒンギコンブ」と呼ばれ、王侯貴族用の男性の衣装(肩掛け)でした。鶏文様や馬(富の象徴)に乗った戦士が織り込まれているのがカリウダのイカットの特徴であり、中央部分には、インドのパトラの影響を受けた幾何学紋様や織り込まれています。
大きさは、約240×100㎝、天然染料100%、木綿の経絣で、こなれた風合いの1950年頃の古布であることを保証します。茜や藍の天然染料の発色が、最近の布の科学染料の混じった濁った色味とは全然違い、経年による絣の掠れ具合も味わいがあります。
このイカットを選別してコレクションに入れていたのは、以下の理由からでした。
まず、古いスンバの布は、なかなか無いものですが、特にカリウダ村のイカットは数少なく、とても高い技術で織られている布であるからです。各画像からもご確認いただけますが、浮き出るような美しい絣紋様で、卓越した織り手による渾身の一枚です。カリウダのイカットで、これほど、バランス良く、しかも上手な絣紋様が織り込まれ配置されたイカットは、滅多にありません。
試しに、「スンバ島 カリウダ イカット」で、鶏と騎士文様のイカットを検索してみてください。出品の布とは、多様な絣文様の繊細さや淡い天然染料の色味が全く違います。同じ紋様の単調な繰り返しであったり、形が平面的で無理に紋様を詰め込んだりしている布は、美しいと感じません。こちらのイカットは、例えば、鶏紋様にしても、多様な表現で、隣や上下で形や色を微妙に変えて織り込まれています。更に、4段ある赤い部分に織り込まれている馬と騎士は、普通は騎士や馬がすべて同じ紋様の繰り返しです。しかし、この布は、中の段と両端の段の馬紋様を変えて(6枚目に比較画像)いるばかりか、騎士と馬の大きさも微妙に変えて織られています。同じ紋様を繰り返して織り込めば楽なのですが、織り手の表現力の豊かさが伺えます。こうした工夫があるため、びっしりと紋様が織り込まれているにもかかわらず、この布からは、単調さが感じられず、染料の配色も見事です。観光客に売るための布には、これほど手間をかけることはなく、おそらく特別な注文によって織られた布なのでしょう。
目に付く傷みや補修はありませんが、経年の退色やほつれ、汚れ等がありますので、古布であることを了解の上、ご入札をお願いいたします。新しい布をお求めの方はお控えください。
この時代のスンバ島の布は、現在ではなかなか出会えないものです。ましてや、これほど絣紋様の美しい布は、とても希少です。この布を美しいと感じてくださる方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。
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