〇このレンズは,超望遠ズームレンズとして使用するとカメラレンズのカテゴリーに属するものですが,月面の観察や撮影などでは口径8㎝の天体望遠鏡として使用することができるため天体望遠鏡のカテゴリーから出品します。「Vixen 42T→31.7ADSX」(現行商品)と接眼レンズを別途入手すると天体望遠鏡として使用できます。三脚台座が付属しているため三脚や赤道儀に取り付けることが可能です。
〇軽量で持ち運びが楽な超小望遠レンズであるため、野鳥などネイチャーフォトの撮影にも活用できます。後述のリンク先内に別個体による天体や野鳥などの実写例を置きましたのでご覧ください。
【出品物】
1 BIG 88DA(フード付属)
2 フロントキャップ(TAMRON)
フードの奥に取り付けるため取付にはコツが必要で、斜めに挿入して片側の爪をひっかけドアを閉めるようにかぶせるとスムーズに取付ができます。
3 M42マウント用リアキャップ(ノーブランド・新品)
このレンズのマウント部はTマウント仕様のため本来は42mm径ピッチ0.75mmのキャップが必要ですが、代用品としてM42マウント(42mm径ピッチ1mm)用のリアキャップを付属させます。ピッチが異なるため最後までねじ込むことはできませんが少しねじ込んだところでしっかり固定できます。
4 Canon EFマウント用Tマウントアダプター(新品)
※BIG 88DA本体はTマウント仕様になっているため、カメラボディーに取り付けるためには。その部分に使用するカメラマウント用のTマウントアダプターを取り付ける必要があります。Tマウントアダプターを交換することで色々なマウントのカメラに取り付けが可能です。Tマウントアダプターは現在も各マウント用のものが市販されています。
※以下のリンク先で,高解像度の商品写真および同一光学系の別個体で撮影した実写例を参照することができます。実写例はα7RⅡによる4240万画素のフルサイズ画像です。
【外観及びレンズの状態】
・カビ本体,くもり,バルサム切れはなく,レンズ全体の透明度は良好です。
・前玉の反射光を見ると斑点状になったカビ跡が多数見られます。これは2群2枚構成になっている前玉の2群目のレンズ裏面に存在するもので、よく観察してみるとコーティング層がカビの活動によって劣化した部分でした。ガラス層への浸食はないようで、レンズを通して背後を見た時にはクリアに見えていて、レンズの透明度にはほとんど影響がないと思います。カビ本体はすでに除去済みですのでこの部分が原因となってカビが繁殖することはありません
・フォーカスリングの回転はスムーズです。このレンズのフォーカス調整は、レンズ前方の鏡筒全体を回転させる回転ヘリコイド方式です。
・外観は使用感が少なめできれな状態です。
【このレンズの特徴等】
・セミアポクロマートの対物レンズと非球面レンズを組み入れた補正レンズを使用していて中心解像力は大変良好だと思います。ただし,アポクロマートのレンズと比較すると光量差のある明暗の境界に発生する色収差に差を感じます。
・このレンズはカメラレンズと使用できる製品に仕上げられていますが、光学特性が天体望遠鏡的な部分があり、中心解像力が高いのに対して周辺部では像の流れが目立ちます。特に短焦点側で使用すると撮影画角が広がった分この流れが目立つようになります。ただし、APS-Cサイズのカメラを使用した場合や長焦点側で使用した場合は撮影画角が狭くなる分あまり気になりません。
・Vixen 42T→31.7ADSX(現行商品)等を別途入手し、接眼レンズを取り付けると天体望遠鏡として使用可能で,月面のクレーター,木星の縞模様,土星のリング等も観察できます。
・月面写真等で接眼レンズを使用したリレーレンズ方式の拡大撮影を行っても分解能が良好な撮影結果を得ることができます。(この場合はVixen 42T→31.7ADSX,接眼レンズ,カメラアダプター等を別途入手する必要があります。また,赤道儀で日周運動を自動追尾する必要があります)
※メインの商品写真に入れている月面写真はこの方法による撮影です。
・このレンズは天体望遠鏡用の対物レンズ(前玉)に非球面レンズを使用した補正レンズ(後玉)を組み合わせてることで,フルサイズカメラの撮影に使用できる超望遠ズームレンズとして設計されたものです。このことは後述のスリービーチ社にかかわる詳細情報中に示した同社の特許内容から読み取ることができます。
【分解清掃の内容】
このレンズの回転ヘリコイド部はレンズを繰り出すとヘリコイドが鏡筒内に露出する構造になっているため、ピントを最短距離側にするとグリスが塗られたヘリコイド面が大きく露出します。そのため、これまで入手した同様の構造をもつBIGシリーズとVARIシリーズの個体では例外なくレンズの内面に油分が付着して薄い曇りが発生していました。
出品中の個体はすべてのレンズを取り出し、すべてのレンズ面を清掃しました。特にカビ跡が残っている面では、念のため殺菌処理を行い、レンズクリーナーで念入りに清掃しました。
【送料】
・「ゆうパックおてがる版」80サイズで発送致します。
☆ここから先は,これまで私が入手して使用してきたスリービーチ社製のVARIシリーズとBIGシリーズの望遠レンズについての追加情報および実写結果に基づく詳細な説明です。ご興味をおもち方はご覧ください。
【天体写真撮影への適性】
○スリービーチ社は,もともと天体望遠鏡のパーツや完成品を扱う老舗の町工場的なメーカーです。ある時期から一眼レフカメラ用のレンズも手がけるようになりました。今回出品したタイプの超望遠ズームレンズは複数のバリエーションが存在しています。
○私自身,口径5cm・6cm・8cm(今回の出品物)・10cmを所有し,すべて実写に使用してきましたが,これらの超望遠ズームレンズは,いずれの口径のものも基本的な構造とともに光学的特性が共通しています。それは,高倍率での使用を前提とした天体望遠鏡と同様に中心解像力が高く,中心から離れるにつれて解像力が低下する傾向が見られるということです。ただし,これらのレンズを天体望遠鏡と比較すると良像範囲が広くなっています。短焦点側では外周部の像の流れが見られますが,その点を気にしなければフルサイズのカメラでも使用できます。
〇BIG 88DAが発売された当時はフィルムカメラが主流だったため35mmサイズ(現在のデジタル一眼ではフルサイズ)で使用できるイメージサークルを確保していますが,フルサイズで使用すると特に800mm側で使用したときに画面周辺で像が流れ気味になり解像力の低下を感じます。しかし,現在のデジタル一眼で多くの方が所有しているAPS-CサイズやDXフォーマットのセンサーをもつカメラで使用すると,像の流れが目立つ外周部は画角外となるため解像力が高い中心付近の像だけを利用することになり,画面周辺までシャープな描写ができます。
○フルサイズのカメラで使用しても,月面写真や惑星写真などでは外周部が真っ暗な空の部分になるため良好な撮影結果が得られます。また,野鳥の写真などでは,中央の被写体にピントを合わせると,像が流れ気味になる外周部は被写界深度外となっていることが多く,像の流れがあまり気になりません。
○このレンズは本来カメラレンズとして設計されたものですが,VixenのM42T-31.7 ADSXを使用して接眼レンズを取り付けると高倍率でもシャープに見える天体望遠鏡として使用できました。また,M42T-31.7 ADSXにはVixen製のカメラアダブターを接続することができ,接眼レンズを使用した,高倍率撮影も可能でした。
【株式会社スリービーチの特許により誕生した光学系】
スリービーチ社の情報をネット検索していた時に同社の超望遠ズームレンズに使用されている特許についての記述を発見しました。特許のタイトルは「望遠鏡用・双眼鏡用対物レンズをカメラレンズに転用する補正レンズ」となっていました。以下のリンク先でその内容を確認できます。
私には内容を完全に理解することはできませんが,簡単にまとめると以下のようになると思います。・望遠鏡用、双眼鏡用対物レンズをそのままカメラレンズとして使用すると,フィルム面にできる像の実用可能な面積が狭く,周辺減光が大きくなる。また焦点距離を変化させることができない。これらの,不具合を解消するために使用する補正レンズについての特許。
・この補正レンズは2群1枚構成の貼り合わせレンズになっている。カメラのマウント側で空気に接している面は放物面(非球面)の凹面になっている。
・この補正レンズを使用すると対物レンズ単体時の分解能をわずかに上回る。
・この補正レンズとフィルム面の間隔を変化させることで焦点距離を変化させることができる。
・口径50mm,焦点距離220mmの対物レンズにこの補正レンズを組み合わせると焦点距離420~750mmのズームレンズになる。
・口径80mm,焦点距離410mmの対物レンズにこの補正レンズを組み合わせると焦点距離800mm~1,400mmのズームレンズになる。
【スリービーチ社について】
天体望遠鏡が欲しかった私は1970年代にスリービーチ社から接眼レンズ等の部品を通信販売で入手し,小さな天体望遠鏡を組み立てて天体を見ていました。同社はこの当時,毎月天文雑誌に天体望遠鏡の広告を出していたため,当時の天文マニアにはよく知られた天体望遠鏡メーカーでした。ある時期からは自社開発のスリコールという名を冠したカメラ用レンズも広告に加わりました。しかし,いつの間にか天文雑誌からは姿を消し,ある日の新聞か雑誌の広告で超望遠ズームレンズのメーカーとして安価でお買い得な製品を製造していることを知りました。ネット上の情報によるとこのメーカーは職人による自社生産を行う町工場のようなところのようです。しかし,同社はすでに営業を終了してしまい現在は社屋も取り壊されたという情報が見つかりました。出品物のBIG 88DAなど,同社の超望遠ズームレンズは他のメーカが発想しないようなスペックの製品で,フルサイズのカメラで使用した場合,周辺部の画質劣化はありますが超望遠撮影がローコストで実現できる製品だと感じます。
あまりにも安価なため,安かろう悪かろうという印象を与えてしまうところもあったと思います。しかし,私自身しばらく前に同社のVARI 7000と8000Sを試しに中古で入手し,月面写真を撮影したところ,予想外にシャープな写りに驚きました。ついでに,土星や木星も撮影してみましたが土星については,撮影画像を拡大してみると輪が確認できるだけでなく,気流の状態が良好なときには,輪の中にあるカッシーニの空隙までなんとか判別可能な画像が得られました。その後,同社のVARIおよびBIGシリーズの別機種を見つけるたびに入手しては実写結果の比較を行うことに興味をもち,現在に至っています。