
自宅保管の品です。大変美品ですが古いものですので、表紙など若干の経年変化はございます。1ページのみ上部に薄い折り目がございます。ご理解頂ける方にご検討をお願い申し上げます。
夕焼けを見ていた男
『巨人の星』『あしたのジョー』『夕やけ番長』『愛と誠』など、中高年世代が若い頃に心を熱くした名作は、いずれも梶原一騎の原作である。しかし、彼の人生にはダーティーな影が付きまとい、事件・スキャンダルも絶えなかった。スポーツ劇画ブームを巻き起こした天才漫画原作者の実像を深く求め、鋭く迫った名著。
目次
第1章 スポ根伝説~栄光の時代
第2章 生い立ち
第3章 青春
第4章 『あしたのジョー』
第5章 栄光の頂点
第6章 狂気の時代
第7章 大山倍達と梶原一騎
第8章 どいつもこいつも
第9章 逮捕とスキャンダルと『男の星座』
第10章 梶原家の父と子
レビューより
梶原一騎は、現在少なくとも40歳以上の男性の大半に相当な思想的影響を与えていると言えるのではあるまいか?
それが、取り返しのつかないほどの悪しき影響であり、梶原自身も見下げ果てた悪漢と見られる場合もあるかもしれない。しかし、現実には、志高き男が、梶原作品のヒーローを心の支えとしていることも決して少なくはないように思う。
これは、梶原一騎の真実を知るしかないと思い、大きな期待を持って本書を開いたが、想像をはるかに超える強烈さに絶句した。梶原一騎という男が、捻じ曲がり、劣等感を叩き込まれ、その反動で世間に対して黙っていられないという複雑で危険な人間であることは確かだが、一方で、純粋で、本当に憧れる女性にはからっきしで、親分肌でもあり、恩義を忘れない人間性も確実に見える。言っては悪いかもしれないが、こんな面白い人間はそうはいない。そして、彼の本当に志した純文学には適さなかったかもしれないが、天才であることも間違いない。
また、本書で初めて明かされる裏話の面白さは半端ではない。「あしたのジョー」の歴史的ラストは、ちばてつやのスタッフのアイデアだったとか、「タイガーマスク」での感動のシーンの梶原の原作原稿は「適当に書いといて」であったとか、サプライズ満載だ。
現在の日本を知るためにも、あるいは、単に痛快な本を読みたいという目的でも、本書は大いに役に立つことを確信する。
梶原一騎の苦悩を描こうとした力作です。父から救護院に「捨てられた」事。純文学者を夢見ながら、食っていく為に劇画原作者に甘んじなければ
ならなかった事。デビュー当時、劇画原作者としてマンガ家より一段下に扱われた事。『あしたのジョー』の大ヒットはちばてつやによるストーリーの改良あってこそだった。自分の才能だけではなし得なかったというコンプレックスの反動から、以降はマンガ家によるストーリーやセリフの修正を絶対に認めなかった事。多作による才能の枯渇。作品が格闘技+暴力団のワンパターンになっていった事。梶原一騎のカネに群がる人間に祭り上げられ、裸の王様化していった事。親子の確執。弟真樹日佐夫、空手バカ一代大山倍達との確執。梶原一騎の栄光の陰の部分をていねいにたどっています。『あしたのジョー』『巨人の星』『タイガーマスク』『キックの鬼』『紅の挑戦者』etcあれだけの名作は彼の不幸な人生があってこそ、その苦悩やコンプレックスのエネルギーから生まれてきたのだ。そう実感させられました。