表紙の鯉
7部(70cm)昭和三色筆者所有この近代昭和は、紅白としてもすばらしいし、大正三色としてもすばらしいし、もちろん昭和三色としてもすばらしく、さらに、墨が完全に浮き上がっていないところに夢があって、21世紀を目指す華麗な名魚といえよう。
第1回錦鯉全国品評会
全体総合優勝
「小林昭和」を檜舞台に載せ、昭和三色のブームを巻き起こした第1号の昭和三色。白地も墨も緋質も抜群で、それぞれの広さのバランスもよくとれており、何も彼も揃った理想的な昭和三色で、いまだにこの男性的な華麗さをこえる昭和三色は現われない。オスゆえに、体形はすらりとしているが、当時はこのスタイルのものが上位に選ばれた。錦鯉に総理大臣賞が下付されるようになった第1号でもある。
5部紅白
第2回錦鯉全国品評会
全体総合優勝
定型的な靴べらタイプのハチの緋に始まり、稲妻型に流れるような絆が走り、均整のよくとれた華麗な紋様を描き出している。白地は抜群で、緋質も最高である。緋盤は均質性で、キワが良く、仕上げも十分で、体形も美しい。やや細身であるが、当時はこのようなスタイルのものが賞揚された。
「稲妻」という名称ができた最初の紅白である。
6部大正三色
第4回錦鯉全国品評会
全体総合優勝
すばらしい白地の上に、浮いたように典型的な靴べらタイプのハチの緋が入り、肩部に八の字に開いたがっちりとした2つの墨が堂々と載り理想的な見せ場を形成し、それだけで総合優勝の座を確保している。さらに胸鰭の理想的な2本の縞模様が品位を上げている。
靴べらタイプが珍重され、見せ場が重要視されるようになった走りの逸品。
6部大正三色
第5回錦鯉全国品評会
全体総合優勝
パターンよりも、質の良さとボリュームで圧勝した見事な大正三色。すばらしい白地の上に、ねっとりといかにも層が厚そうな緋盤が載り、大きく四群に分かれ、良質の墨がツボに決まったすばらしい三色で、愛好家の心をしっかりととらえて離さない。耕盤の色の濃さはそれほどでもないが、いかにも層が厚そうで、緋ムラはまったく見られない。審査において、質が取り沙汰されるようになった走りの逸品。
6部紅白
第6回錦鯉全国品評会
全体総合優勝
二段紅白であるが、第1斑が体の中央で大きく変化して見せ場を作り、第2斑がバランスのいい位置で尾止めを形成して、全体の模様をまとめている。白地も緋質もすばらしく、当時流行していた靴べらタイプの緋の入りである。体形が素直で、美しい胸鰭が品位を上げている。さらに鼻先の切れと尾止めと尾付けの間の純白の白地が紅白としての品位を高めている。
この鯉以来、模様の力強さが要求され始めた。
6部大正三色
ふくよかな体形で、充実感があって見事な仕上げである。胸鰭はやや先がとがっているが、たいして気になるほどではない。胸鰭の紋様は左は理想的であるが、右はやや縞が大きすぎる。ハチの入りはやや浅いが、体の紋様が良いのでカバーされている。白地は純白で最高の質をしている。
質の良さとボリュームで2回目の日本グランド・チャンピオンを獲得するという初めての偉業を成し遂げた。
第9回錦鯉全国品評会
全体総合優勝
6部紅白
第10回錦鯉全国品評会
全体総合優勝勝
質の良さ、柄の豪華さ、仕上げのうまさ、ジャンボの迫力、すべてを兼ね揃えた過去十年間のグランドチャンピオンである。靴べらタイプに入ったハチの緋がとがりながら巻きの大きな背の緋盤に接するあたりが菱形模様になってここらあたりになんとも言えない見せ場を形成している。ふくよかな体形とまろやかな胸鰭が品位を大いに上げている。
これほど美しい紅白が二度と現われるであろうか!!
【『錦鯉入門』の刊行を祝して】より
最近における錦鯉は我々日本人の日常生活の中にとけこみ、更には世界の人々にまで愛好されるほどに発展を続けておりますが、昭和三十年前後の頃を思い出しますと、今昔の感に堪えないほどの急速な普及振りであります。当時の錦鯉界は原産地越後の人達が長い歳月をかけて、勘と経験をよりどころにして、優秀品を作り出すために営々と努力を積み重ね、立派なものが相当多く作り出されておりました。しかしながら、その販売先は特定の一部愛好家に限られ、一般大衆の眼に届くことも少なく、まして、その中にとけこむことのない極めて狭い範囲に限定されていました。作る立場にある者も、流通に携わるものも、それで仕方のないものとしていたようなところがありました。自分達が精魂を傾けて作り出したものを、どのようにして新しい販路を切り開くか、どのようにして需要を刺激したらよいか、その手段を知らなかったとも言えるようでした。このような時、黒木健夫先生が我が国で初めて錦鯉についての生理生態から飼育管理、鑑賞に至るまでを、豊富な知識と鋭い観察眼とを駆使されて、錦鯉に関する書籍を発刊され全国内に大きな反響を及ぼされたことは、まだ記憶に新しいところであります。
更に角度を変えて、初心者から練達者用まで次々と著書を刊行され、燎原の火の如く錦鯉愛好者が増大していったことは、鯉を知り鯉を愛好する人々の誰もがよく知っているところであり、そのことが今日の錦鯉の隆盛をもたらし、更には全日本愛鱗会の巨大な組織を生み出すこととなったわけであります。我々全国の生産者、流通関係者は中すに及ばず、すべての愛好家にとって著者は偉大な指導者であると同時に、錦鯉界の今日をあらしめた大きな功績に対し、心から敬意と感謝を捧げるものであります。
このたび新書「錦鯉入門」を刊行されることとなり、新界の権威者が蘊蓄を傾けてのご執筆は必ずや、初心者を初めすべての人々を大きく啓蒙してくれるものと確信しており、著者のたゆまぬご努力に敬意を表しますと共に、本著が皆様の良き座右の友として広く愛読されますよう心からおねがい申し上げます。
全日本錦鯉振興会副会長 都屋商店代表取締役 宮日出雄