日本語字幕付き
DVD
モーツァルト:
歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K.527
アーノンクール指揮
チューリヒ歌劇場
ギルフリー、
ポルガール、
イザベル・レイ、
チェチーリア・バルトリ、ほか
日本語字幕付き。
美品
緻密な時代考証にもとづく斬新でパワフルな舞台!
アーノンクールの『ドン・ジョヴァンニ』全曲
併録されたインタビュー『楽屋裏で』にて、「テンポの演劇的構成は楽曲の建築構造において最も大切」と語るアーノンクールは、『ドン・ジョヴァンニ』には「40のテンポ」が存在し、最高速度は『シャンパンの歌』で、以下、それぞれの設定は正確におこなわれなければならず、しかもそれは歌手の好みのテンポではなく、指揮者がきちんと決めるべきだと熱弁を振るいます。
実際、この演奏でなによりも印象的なのは確信に満ちた様々なテンポ設定(アーノンクールはインタビューでは複数形のテンピ[tempi]という単語を使用)と、克明なアクセント付け、内声への熟慮を含めたパート・バランスの操作であり、これに演奏方針をよく汲んだ歌手たちが加わって、比類のない解像度とインパクトのある劇進行を両立させた精緻きわまりない演奏が繰り広げられているのです。
たとえば次から次へと魅力的な音楽が立ちあらわれる第1幕フィナーレなど、各曲の性格の違いが徹底して描かれていて驚くほかありません。アーノンクールの手法の正しさが立証された最高の場面でもあります。
歌手でまず驚くのはバルトリ演じるドンナ・エルヴィーラのファナティックなまでに迫力ある役づくり。場面によっては何もそこまでと思わせるものの、この作品が非常に演劇的な性質を帯びたものであることを考えれば十分に納得の行く「過激な」アプローチでもあります。憎しみを抱いて登場しながらも、やがて救済へと心を傾けてゆく激情の女性を描くには、そうした極端な表現が不可欠とも思えてくるから不思議。バルトリ&アーノンクールによる考え抜かれたアプローチが大成功を収めた見事な役づくりです。そういえば終演後の拍手もバルトリが最大でした。
主役のドン・ジョヴァンニは、ダンディな外観と声の持ち主、ギルフリーによる、「セックス依存症のわがまま男」としてキャラクタリゼーションされた二枚目風な役づくり。『シャンパンの歌』を、理性の制御が不能になったジョヴァンニが、早口で言葉をまくしたててゆく最高速度のアリアとして描くあたりは特に印象的で、ゼルリーナとの二重唱でのセクシーな表現とのコントラストが際立ちます。彼は人気DVD、ガーディナーの『フィガロの結婚』ではアルマヴィーヴァ伯爵を歌っていました。
ハンガリーのバスで、ブーレーズとの『青ひげ公の城』が名高いラースロー・ポルガールの歌うレポレロは、海千山千の経験の深さと従僕ならではの卑屈さ、狡猾さを絶妙に漂わせながらも飄々とした演技が実に魅力的。
ドンナ・アンナ役のイザベル・レイは、近年ヨーロッパで大人気のスペインのソプラノ。そのヴィブラートを抑えた高域の美しさは素晴らしく、通常、重く激しく歌われるアンナのアリアから、透明で気品ある美を引き出すことに成功しています。インタビューでは、冒頭レイプ・シーンでの心と体のコントロールの難しさを語っていましたが、実際、エルヴィーラとは正反対の位置にあるアンナの配役として、この透明な美声は効果的でした。第1幕フィナーレにおける例の美しい三重唱でも、アンナの無垢な声による確信に満ちた歌が、ほかとのコントラストを際立たせ(揺れるエルヴィーラ、中立的なオッターヴィオ)、深い感銘を与えてくれています。
ドイツ生まれのイタリア人リリック・テノール、ロベルト・サッカによるドン・オッターヴィオも、アーノンクールのアナリーゼが効を奏して、通常の「微温的な」オッターヴィオ像を脱却することに成功しており、第1幕登場の部分なども毅然とした雰囲気が見事。ベスト・セラーとなったDVD、アーノンクールの『コシ・ファン・トゥッテ』ではフェランド役を歌って好評でした。
ゼルリーナ役のリリアーナ・ニキテアヌはルーマニア出身のソプラノ。豊かな声量と美声によって、少々きわどい役柄でもあるゼルリーナをコケティッシュに演じて、性的要素が絡んだときの愚かな男性を手玉に取る女性の狡猾さを示してなかなかのもの。アーノンクールの『コシ・ファン・トゥッテ』DVDでは、ドラベラ役でした。
マゼット役のオリファー・ヴィドマーはスイスのバリトン。愚かな農夫ではなく、階級差を意識しながらも貴族に盲従したりはしないという、きわめて人間的なマゼット像を描き出しています。アーノンクールの『コシ・ファン・トゥッテ』DVDでは、グリエルモ役でした。
騎士長役のマッティ・サルミネンは誰もが知るフィンランドの世界的なバス歌手。その朗々とした個性的な声の迫力は圧倒的で、地獄落ちの場面でも声主導で多大な説得力を生み出しています。(HMV)
モーツァルト:
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』全2幕
ロドニー・ギルフリー(バリトン、ドン・ジョヴァンニ)
ラースロー・ポルガール(バス、レポレロ)
イザベル・レイ(ソプラノ、ドンナ・アンナ)
チェチーリア・バルトリ(メゾ・ソプラノ、ドンナ・エルヴィラ)
ロベルト・サッカ(テノール、ドン・オッターヴィオ)
リリアナ・ニキテアヌ(ソプラノ、ゼルリーナ)
オリファー・ヴィドマー(バリトン、マゼット)
マッティ・サルミネン(バス、騎士長)
チューリヒ歌劇場合唱団
エルンスト・ラッフェルスベルガー(合唱指揮)
チューリヒ歌劇場管弦楽団
ニコラウス・アーノンクール(指揮)
ユルゲン・フリム(演出)
エーリッヒ・ヴォンダー(舞台装置デザイン)
ブライアン・ラージ(映像監督)
クリストファー・レイバーン(オーディオ・プロデューサー)
本編収録時間:187分
歌唱;イタリア語
字幕;日本語、イタリア語、英語、フランス語、スペイン語
コンディション良好。
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