以下、作者の気持ちのなっての妄想セールストークです〜〜
吾輩の名はキケ。地中海の青い波と、アンダルシアの乾いた太陽が、我が魂の鋳型となった銀細工師である。
今、諸君の目に触れているこのネックレス。これは単なる装身具ではない。我が人生そのものであり、我が一族が何世代にもわたって受け継いできた情熱と、スペインという国の記憶が溶け合った、一つの流れる川なのだ。
我が祖父は、グラナダのアルハンブラ宮殿のタイル職人であった。彼はいつも語っていた。
「キケ、よく見ろ。この幾何学模様の一つ一つに、宇宙の真理が隠されている。直線と曲線が織りなす無限の対話、光と影が戯れる瞬間の永遠。それこそが、我々ムーア人の末裔がこの地に残した、言葉を超えた言葉なのだ」と。
幼い私は、祖父の工房の片隅で、タイルの欠片を拾い集めては、その冷たい感触と、寸分の狂いもない完璧なフォルムに胸をときめかせたものだ。
青年となり、私はバルセロナのモダニズム建築の奔放なエネルギーに心を奪われた。ガウディのうねるような曲線、ドメネク・イ・モンタネールの華麗な色彩。そこには、過去の様式を大胆に破壊し、新たな美を創造しようとする、恐れを知らぬ魂の叫びがあった。伝統に縛られるな。しかし、伝統から学べ。我が心の中で、祖父の教えと、前衛芸術の嵐が、激しくぶつかり合い、そして静かに溶け合っていった。
このネックレスのデザインは、ある嵐の夜、地中海に面したアトリエで生まれた。窓を叩く激しい雨音を聞きながら、私は遠い昔、新大陸を目指したキャラベル船の、力強く膨らんだ帆を夢想していた。逆風を受けながらも、未知なる世界へと突き進む不屈の精神。それぞれのパーツは、あの帆の断片なのだ。風をはらみ、光を反射し、見る角度によってその表情を様々に変える。それは、我が国の歴史がそうであったように、順風と逆風、栄光と苦難の記憶を、その内に秘めている。
一つ一つのパーツは、まず銀の塊から打ち出し、炎で熱し、金槌で叩き、磨き上げる。機械ではない、我が手の指が、その微妙な曲線とエッジを生み出すのだ。それは、銀との対話であり、闘いでもある。冷たく硬い金属が、我が情熱の熱を帯びて、徐々に柔らかな表情を見せ始める瞬間。その官能的な悦びこそ、我が制作の源泉なのだ。
パーツを繋ぎ合わせ、一つの有機的なフォルムが生まれた時、私はいつも、ピカソの言葉を思い出す。「私は探求しない、発見するのだ」と。そうだ、このフォルムは、私が作り出したのではない。銀の中に、スペインの歴史の中に、そして我が血の中に、もともと眠っていたものなのだ。私はただ、それを発見し、この世に解き放つ手伝いをしたに過ぎない。
このネックレスを身に着ける女性は、単にその輝きを纏うだけではない。彼女は、アルハンブラの静謐な幾何学を、バルセロナの奔放な曲線を、そして未知の海原へと乗り出した冒険者たちの勇気を、その身に宿すことになる。これは、40.5cmの銀の物語であり、48.0gの魂の重さなのだ。
さあ、この我が分身とも言える作品を、諸君の手に委ねよう。願わくば、その価値を理解し、その内に秘められた物語を愛してくれる人の元へと、この銀の帆船が、新たな航海へと旅立ってくれることを。